グロック 17 / Glock 17 【自動拳銃】 †
モデル | 全長 | 銃身長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 製造国 |
グロック 17 | 204mm | 114mm | 625g | 9mm×19 | 17/19/24/31/33+1 | オーストリア |
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グロック 17L | 242mm | 153mm | 675g |
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グロック 20 | 205mm | 117mm | 775g | 10mm AUTO | 15+1 |
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グロック 21 | 205mm | 117mm | 740g | .45 ACP | 13+1 |
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グロック 22 | 204mm | 114mm | 645g | .40 S&W | 15/16/22+1 |
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グロック 24 | 243mm | 153mm | 760g |
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グロック 31 | 204mm | 114mm | 660g | .357 SIG | 15/16+1 |
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グロック 37 | 204mm | 114mm | 740g | .45 GAP | 10+1 |
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グロック 40 | 241mm | 153mm | 915g | 10mm AUTO | 15+1 |
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1980年にオーストリアのグロック社が開発したストライカー式ポリマーフレーム自動拳銃。グロック社製銃の第一号で、グロックシリーズの中核を成すフルサイズモデルである。
80年代後半から世界的ベストセラーピストルとなり、民間のみならず軍隊や警察といった公的機関でも幅広く使用されている。
以前から軍用プラスチック製品会社としてオーストリア軍とも繋がりが深く、現場の声を聞く機会が多かったグロック社はその経験を活かし、当時珍しかったポリマーフレーム*1を使用した本銃を開発し、オーストリア軍の制式拳銃トライアルで「Pi80」の名前で次期制式拳銃として採用された。
「グロック17」とは、Pi80のコマーシャルモデルとして1982年にヨーロッパで発売されて以来の名称である。記念すべき第一号なのに何故モデル番号が「17」なのかは今でも謎に包まれており、当時としては多い装弾数17発からだとか、この銃で獲得したパテントが17件だからなど、様々な憶測が飛び交っている。
従来のマニュアルセイフティやハンマーが無く、発砲にあたって操作するのは、スライドを引く以外にはトリガーだけとなっている。強いて挙げれば、トリガーシューから僅かに覗いているトリガーセイフティのレバーがあるが、トリガーに指を掛けるだけでセイフティが外れるため、意識して操作する従来の安全装置とは異なる。
このトリガーセイフティを含む3つの安全装置――指をかけて引く以外のトリガー動作を防止する「トリガーセイフティ」、ストライカーの前進をロックする「ドロップセイフティ」、そしてストライカーが雷管を叩くのを阻む「ファイアリングピンセイフティ」――と、スライドを引く操作でストライカーを60%ほどあらかじめコックするという変則ダブルアクションオンリーのトリガーからなる「セイフアクション」と呼ばれる機構により、極めてシンプルな操作性と安全性を両立している。
内部的には部品数が少なく抑えられ、ストライカー式を採用したことからハンマー式ピストルと比べボアアクシスが低く、マズルジャンプを抑えやすいものとなっている。
発売当初はその玩具的なデザインで敬遠されたり、メディアによる「プラスチック製なので空港検査で引っ掛からない」などといったデマが飛び交ったこともあったが「安価、単純、安全、撃ちやすい」という銃そのものの優秀さが認知されるようになると、各国の公的機関の制式拳銃をグロックが席巻した。メディアのデマもかえって知名度向上に貢献した感がある。現在ではアメリカ国内だけでも警察関係を中心に約4,000機関が採用し、約50カ国の軍で制式採用されている。日本でも海上保安庁のSSTがサイドアームとして使用しているという。
拳銃のトレンドもグロックシリーズの成功によって一変し、90年代以降は他社も一斉にポリマーフレームを製造したり、変則ダブルアクション機構やトリガーセイフティを取り入れるようになった。スペック的にはグロックシリーズを超える拳銃も登場してはいるが、30年以上の実績を誇るグロックの牙城は、当面崩れそうもない。
2007年には米国内で発効されたグロックのパテントが失効したことから、「スタームルガー SR9」のようなグロックの設計をそのまま流用した他社製自動拳銃も登場している。
余りに普及していることから、2010年代後半から流行したPCC(拳銃弾仕様カービン)」には、グロックシリーズのマガジンをそのまま流用できるモデルも多い。四角く単純なデザインから外付けオプションパーツも設計しやすく、グロックシリーズを組み込んでカービン化するコンバージョンキットや後付けストックも多く制作されている。
本銃に限らないことだが「ポリマーフレーム」ピストルといえども、スライドやバレルを始めとした主要部品が金属製である以上、金属探知機にはしっかり引っかかる。ただし金属探知機は別として「X線検査で写りにくい(銃のシルエットがわかりにくい)」ということはあったようで、後にグロック社はマイナスイメージ払拭も意図して、ポリマーフレームに金属粉(造影剤)を混入し、これを世間に強くアピールしている。
また、80年代後半に、グロックを支給されたニューヨーク市警(NYPD)の警察官が、うっかりトリガーに指をかけて暴発事故を起こしている。トリガープルがそれまでの10ポンド(約5kg)から5ポンド(2.27kg)に軽くなったためだということから、グロック社はトリガープルのオプションに、5ポンドよりさらに軽い競技用の3.5ポンド(約1.6kg)と、より重い8ポンド(3.6kg)を用意した。この8ポンドトリガーは、ニューヨーク市警が一部で採用したことから「ニューヨーク・トリガー」などと呼ばれた。
通常、マニュアルセイフティを持たないグロックシリーズだが、これを有するモデルもある。代表的なものが、米陸軍のM9ピストルの後継を選定するMHSコンペティションに提出されたグロック19/23 MHSで、アンビタイプのサムセイフティを備えていた*2。またタイ警察向けのグロック17/19はサムセイフティを、台湾警察向けのグロック19はクロスボルトセイフティを備えている。
開発世代 †
ユーザーの声を反映して、度々フレームの仕様変更が行われている。世代別のフレームの特徴は以下の通り。
世代 | 発表年 | 特徴 |
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第一世代 | 1980年 | グリップは全面梨地加工・チェッカー無 |
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第二世代 | 1988年 | グリップは側面梨地加工・前後面にチェッカー加工 |
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第三世代(Gen3) | 1998年 | グリップは側面梨地加工・後面はチェッカー、前面はフィンガーグルーブ付き スライドストップ下にフィンガーレストあり アンダーマウントレールを搭載 |
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第四世代(Gen4) | 2010年 | グリップ全面が細かな四角いドット型のテクスチャ マガジンキャッチを大型化・左右入れ替え可能に グリップのバックストラップにパネルを追加可能 純正の追加パネルはサイズ2種、ビーバーテイルの有無で2種の合計4種で、取り付け無しも含め3サイズ5種から選択可 リコイルスプリングをデュアル式に変更 |
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第五世代(Gen5) | 2017年 | Gen3以来のフィンガーグルーブを廃止 サブコンパクトモデルのグロック26同様スライド前面角が面取り加工されている スライドリリースレバーがアンビ化 新型バレル「グロック・マークスマンバレル」を採用。ポリゴナルライフリングから溝堀り式ライフリングへ変更し、高精度化と線条痕の明瞭化を図っている Gen5初期はフロントセレーションが無いが、現在販売されているものはフロントセレーションが標準で彫られている |
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Gen4以降はスライド形状やリコイルユニットが変更され、Gen3以前のモデルとの互換がなくなり、一部カスタムパーツも使用不可となった。特にマガジンキャッチを右側に入れ替えると旧来のマガジンも使用できなくなる。そのため識別用にスライドに「Gen〇」の刻印が施されている。
発売当初のGen4は動作不良が多発しており、後に改良されたものの、信頼性を完全に回復したとは言えなかったようだ。Gen4の登場によりGen3は製造中止になるはずだったが、カリフォルニア州ではGen4以降が落下試験などの法規に適合出来ず、互換性や信頼性などの理由でGen3を求めるユーザーもいることから、製造数は減らされたが並行して販売された。
Gen5の登場後、Gen3と違い法的縛りがないことから、2020年にはGen5に対応した9mmと.40S&WモデルGen4の米国向け製造が中止されている。なお出荷済みのGen4のサポートと、9mmと.40S&W以外のGen5未移行モデルのGen4販売は継続されている。
2000年代後半には、Gen3のマイナーチェンジモデルがいくつか登場している。登場時にはユーザー間で「これがGen4になるのか」と噂されたが、結局正式なGen4は別に発表されることになった。
2007年に発表された「SF(Slim Frame)」仕様は、Gen3の大口径モデルをベースとしている。フルサイズのG20SF(10mm)とG21SF(.45ACP)、サブコンパクトモデルのG29SF(10mm)とG30SF(.45ACP)がラインナップされた。
2009年には「RTF(Rough Texture Frame)」が登場。グリップテクスチャは後のGen4のドット型テクスチャを更に細かくしたようなものとなっており、鰓のようなセレーションに改められた新奇なデザインのスライド*3など、その外観は賛否両論であった。9mmPara仕様のG17RTFと、.40S&W仕様のG22RTFが発売されていたが、現在はカタログ落ちしている。
各種バリエーション †
本項目冒頭のモデルリストを見てもわかる通り、グロックシリーズは基本的に数字のみが違い、さらに数字の割り振りに法則性もないため、かなりややこしいことになっている。
下記リストの4モデル(17、18、19、26)が、バリエーションの基本となる。その他の数字はこの4モデルの使用弾薬やスライドのサイズを変更したものと考えて(おおむね)間違いない。
モデル名 | 特徴 |
グロック17 | フルサイズモデル |
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グロック18 | マシンピストルモデル。項目参照 |
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グロック19 | コンパクトモデル。項目参照 |
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グロック26 | サブコンパクトモデル。項目参照 |
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グロック34 | 競技用ロングスライドモデル。項目参照 |
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各機種に共通して、ナンバーの数字の後ろに『C』が付いているのはコンペンセイター付きモデルである。
更に、コンペンセイターに加えて延長型スライドリリースレバー、延長型マガジンリリースボタン、アジャスタブル(可動式)サイト、ターゲットトリガーをつけた『CC』モデルもある。
2016年にはダットサイトマウントを備えた『MOS(モジュラーオプティックシステム)』モデルがラインナップされている。スライド後部上面が削られており、そこに専用のプレートを介すことで各社のマイクロダットサイトが装着可能になっている。
グロック17のバリエーションは冒頭リストのとおりである。中でも特徴的なものを列記する。
- グロック17L・24・40:コンペティションモデルに分類される、6インチバレルの競技用ロングスライド搭載型。しかしIDPAの競技規定(8.75×6×1.625インチ)に対応していなかっため、規定対応版の新たなグロック34シリーズが登場した。なお、G17LもGen3のみがグロック社のカタログに残っている。
- グロック37:2003年に登場。グロック開発の新型弾「.45GAP」仕様。
- グロック17M:2016年にグロック19Mと共に登場。線条痕が分かりづらいポリゴナルライフリングから溝掘り式ライフリングに変更された法執行機関向けモデルで、FBIや一部州警察に採用された。一年後に発表されたGen5とほぼ同じ仕様であり、ある種のプロトタイプとも言える。
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