アルティメット / Banlieue 13 †
アルティメット (原題:Banlieue 13) †
2004年、フランス映画
監督:ピエール・モレル
・ストーリー
2010年のフランス・パリ市内。治安悪化によりコンクリート壁で隔離された地区「13街区(バンリュー13)」。そこには法律も安全も存在しない。学校も消え、警察も当てにはならない。しかも犯罪王タハ(ビビ・ナセリ)が、軍隊並みの武装集団を率いて全てを支配している有様だ。
この地区で生まれ育ったレイト(ダヴィッド・ベル)は、荒んだ街からドラッグを一掃しようと危険を承知で一人戦っていた。ドラッグの密売を幾度となくレイトに邪魔されてきたタハの手下K2(トニー・ダマリオ)は、悩みの種であるレイトを始末するため、彼の妹のローラ(ダニー・ヴェリッシモ)を誘拐する。だが一歩先を行くレイトによりタハが人質にとられ、挙句の果てに警察に突き出されてしまう。これで街に蔓延る悪を浄化することが出来たと考えていたレイトだったが、既に13街区から撤収する手はずを整えていた警察は、面倒を避けるためタハを解放し、レイトを拘束する。そしてローラは再び奪われ、レイトは刑務所送りにされてしまうのだった―――。
それから6ヶ月後。パリ市内の警察本部では緊急事態が発生していた。 政府が開発した新型中性子爆弾が輸送中にタハ一味によって盗まれ、13街区に持ち込まれたことが判明したのだ。まだ開発途中のこの爆弾が爆破すれば、半径8キロ以内の人間約200万人の命が奪われてしまう。最悪なことに時限装置が誤作動し、爆破までに残された時間はわずか24時間しかない。
パリ市警はこの緊急事態に際し、武術のエキスパートであるエリート潜入捜査官ダミアン(シリル・ラファエリ)に爆弾解除の任務を命じる。しかし、通常何週間もリサーチを重ねた上で任務に挑むダミアンにとって、13街区は未踏の地であり、下調べをするにしても時間が足りない。難色を示すダミアンを説得するため、上官は13街区の現地アドバイザーとして、半年前に投獄されたレイトとコンビを組むように提案する。最初は反発する二人だったが、ダミアンは国を守るため、レイトは妹を救うため、無政府状態となっている13街区に潜入。
刻一刻と迫る時間のなか、二人の男の決死の戦いが今、始まった―――。
・作品解説
VFXアクションに対するアンチテーゼとして制作された、CG、ワイヤーアクション、スタントを用いない本作。なかでも、アパートで繰り広げられるレイトとタハ一味のチェイスや、違法カジノで数十人の敵相手に戦いを挑むダミアンなど、今までになかった斬新なアクションが特徴だ。
ダミアン役のシリル・ラファエリは、サーカス学校からスタントの道に進み、数々の映画のアクションコーディネーターや俳優として活躍。レイト役のダヴィッド・ベルは「パルクール」の創始者の一人。ギャングを従えるタハ役のビビ・ナセリ*1は、映画『TAXi』シリーズでスゴ腕タクシードライバー ダニエル役を演じているサミー・ナセリの兄である(ちなみにリュック・ベッソンとともに、本作の脚本も担当している)。
なお、原題の「バンリュー(Banlieue)」とはフランス語で「郊外」の意味。狭義には、特に移民などの低所得層が多く、犯罪が多発するなど、いわゆる「スラム化」が進む公営住宅地を指す。
ただし、いくら治安が悪いと言っても、現実のバンリューには本作のように隔離された地域はさすがに存在しない。隔離された無法地帯という設定には映画『ニューヨーク1997』の影響もうかがえる。
2009年には続編が製作され、「アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ」という邦題で日本公開された。
アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ(原題:Banlieue 13 - Ultimatum) †
2009年、フランス映画
監督:パトリック・アレサンドラン
・作品解説
2016年のパリが舞台。13街区再開発計画を巡る巨大な陰謀に巻き込まれたダミアンとレイトがそれを阻止すべく再びコンビを組む。