ライフリング / Rifling †

　ランド/Lands(山)と呼ばれる凸型の部分とグルーブ/Grooves(谷)と呼ばれる凹型の部分で構成される銃身に施された斜線状の溝で、発射される弾丸に回転を与えることでジャイロ効果を発生させ、直進性を向上させることにより命中率を高める効果を持つ。日本語では旋条(処理)と呼ばれる。

　18世紀中盤頃に登場しイギリス軍のベイカーライフルなどに導入され、19世紀頃に一般に普及した。現在では散弾銃を除く大半の銃に施されている。回転方向は右回りの物が一般的である。
　ライフリングの強さは「ツイストレート(捩り比)」と呼ばれる数値で表され、これはアメリカなど以外のメートル法圏でもインチ基準で1:X''(Xインチで1回転)、ないし単にXと表記されることが多い。表記の通り、Xが小さいほどツイスト(回転)が強くなる意味となる。
　概して軽い弾頭ほどツイストは弱く、重い弾頭ほどツイストは強い。ただし遠心力が精度にもたらす影響は弾頭重量以外にも初速・弾頭形状など様々な要素が関わるため、ほとんどの銃火器のツイストレートは8〜16程度に収まり、バレルもその数だけ用意されている。
　弾頭の回転数はその初速にツイストレートを掛けたものとなるため、例えば初速毎秒3000フィート(36000インチ,914m)の弾丸を1:12''レートの銃身から発射すれば、その回転数は36000×1/12＝毎秒3000回転(18万RPM)もの凄まじい回転となる。この強烈な回転が数百m、時には数kmもの高精度飛行を弾丸に可能とさせるのである。
　
　旋条処理を行うには専用の機械が必要で、発射された弾にはライフリング・マーク(施条痕)という跡がつく。
　これは指紋の様に銃によって一つ一つ異なるという特徴があり、犯罪に使用された場合には犯行現場に残された弾丸を調べ発射された銃を特定することが可能である。
　その為に犯罪者の中には証拠隠滅のために、わざとライフリングを削り落とした銃を使用することもある。　
　上記のようなギミックは小説・ドラマ・映画などでは頻繁に利用されている。
　
　また、前述のようにライフリングは手間が掛かるため、より工数の少ないライフリングとして「ポリゴナル・ライフリング」という手法も開発されている。
　これは円断面のバレル内に綿密な溝を彫るのではなく、バレルに六角形や八角形の断面の穴を開けてしまう手法である。
　19世紀にイギリスで大砲量産のために考案され、その後第二次世界大戦でドイツの伝説的汎用機関銃、MG42の生産性向上のために採用された。その後もドイツ圏では近代的な火器にも広く使用されており、ワルサー社やH&K社、グロック社などの製品に採用されている事で有名である。この手法は高い生産性を持つが、弾頭は基本的に円形であるため、「角」から多少のガス漏れが起きる。
　また、「溝だけ」捩って彫る従来的ライフリングと異なり、銃身自体を捩りながら彫る手法のため、従来的ライフリングに比べて高精度の仕上げは難しいとされており、21世紀現在でも大半のライフルは未だに従来的ライフリングを採用している*1。
　ポルゴナルライフリングにはライフリングマークが分かりにくいという特性もある。法執行機関・民間護身用ともに大きなシェアを持ち犯罪現場での使用率もおのずと高くなるグロックシリーズは、初期型以来のポリゴナル式をGen.5で通常の溝堀り式へ改めている。ライフリングマークの明瞭化が採用理由の一部とされている。
　
　ライフリングによる弾頭の回転は、機械化された弾頭においては様々な機能的用途にも使用される。
　例えばXM25のエアバースト榴弾は設定された距離を飛行した後に爆発するスマート弾頭を有するが、この弾頭は自身の回転数によってその飛行距離を判断し、設定された距離で爆発する。

　上記の様にショットガンは基本的に滑腔銃身であるが、スラッグ弾に回転を与えるためにライフリングを持つ銃身も一般的である。ただし、この銃身は散弾を発射した場合は回転により大幅に拡散が広がるため、専らスラッグ弾専用となる。銃身はそのままに後付けできるライフリングが刻まれたチョークや、日本の法規制から、「ライフル」とはみなされない銃身の半分までライフリングを減らした「ハーフライフル銃身」なども存在する。