遊戯銃 / Toy gun

 遊戯銃とは、銃器の形をした玩具の総称である。種類によって、「エアガン」、「モデルガン」、「トイガン」とも言われる。なお、「遊戯銃」に対して本物の銃器は「真性銃」や「実銃」と言う。
 日本国内では、銃砲刀剣類所持等取締法によって所持・販売が制限されている「模擬銃器」「模造けん銃」の中で、特に例外とされるものである。

 アメリカ合衆国など民間での銃器所持が比較的容易で普及率の高い国では、遊戯銃を実銃と誤認しないように銃口周辺が蛍光色等に塗装されているなど、外観に対して制限が設けられている場合がある。
 安価に入手可能であるため、映画やTVドラマでプロップガンとして使用される例も多い。
 また、アニメや漫画でも、同様の理由で作画の参考モデルとして使われているケースも多い。しかし忠実にその細部を作画した結果、ガス注入口や遊戯銃特有の刻印など、実銃と明らかに異なるディテールまで描かれてしまっているケースも少なくない。ゲームにおいてもボルトやコッキングハンドルなどの可動部の動作が少ない遊戯銃ベースのモーションなっていることがしばしばある。
 軍隊及び法執行機関でも遊戯銃を使って訓練を行う例もある。特にCQBレベルの距離であればエアガンの射程でも十分であり、安全性も高いことからCQB訓練で利用される。

 遊戯銃は以下のように大別される。

エアソフトガン

 プラスチック製のBB(ボールブレッド)弾を発射できる何らかの機構を銃内部に備えたもの。主にサバイバルゲームに使用される。所持に対する免許などは必要ないが、業界団体の自主規制や自治体の条例・規則により、年齢制限が設けられている。
 BB弾の発射機構は主に以下のものがある。

名称説明
エアコッキングガンバネ力で前進するピストンで空気を圧縮し、その圧力でBB弾を発射する方式。
ここでのコッキングとは、ピストンを手動で後退させ、バネを圧縮する操作をさす。
その機構上通常は1発づつしか発射できないが、パワーソースが無料かつ季節に左右されないのが大きい*1
構造がシンプルで安価なため、低威力としたものが低年齢向けに販売されている。
散弾銃狙撃銃といった大型のモデルは、金属パーツの多用で高精度な造りとされ、高価格なものも多い。
ガスガン低圧のフロンガス等を充填し、ガスの圧力でBB弾を発射する方式。
ある程度高圧が掛かるぶん強い構造をもち、また比較的高価であるため、自然と高い年齢層を対象とした商品となるのがほとんどである。
エアコッキング式と比べ連射性能が高く、かつてはエアタンクと繋いだガスガンがサバイバルゲームの主流となっていたが、エアタンクやガスガンとの接続に使用するホースが嵩張るなどの欠点があり後述の電動ガンの出現により激減、2000年代にはエアタンク式はほぼ市場から消え失せた。
現在は「ガスブローバック*2」という、実銃のように発砲時にスライドやボルトが高速で後退する機構を再現したモデルが主流である。
また、構造上エアコッキングでは十分な性能が発揮できないリボルバーのパワーソースも、ガスが主流となっている。
対象年齢の高さもあり、実銃の形状をより忠実に摸したものとなっている。
稼動部品の多くは金属製であるが、必要以上の強度を持たせないために亜鉛合金や真鍮などの安価で低硬度の素材が使われている。
パワーソースとなるガスはかつてはフロンガスだったがオゾン層破壊問題で代替フロンであるHFC134aが主流となった。しかしHFC134aは温暖化係数が高いという問題がある。類似したHFC152aも温暖化係数は低いものの可燃性やシリコンゴムの腐食という問題を抱えている。
近年では海外製品を中心に、フロンガスや代替フロンよりも環境負荷の小さい二酸化炭素を充填した小型CO2ガスボンベの使用が増えており、日本でも国内法規基準までパワーを落として輸入した製品が販売されるようになっている。このCO2ガスボンベは家庭用炭酸水マシンにも利用される使い捨てボンベで、大きさはダブルカラムマガジンサイズに収まるものとなっている。
電動ガン仕組みとしてはエアコッキングガンの一種であり、ギアやカムを介して電気モーターの力でピストンを駆動し、連続的に空気を圧縮してBB弾を発射する方式。
上記ガス方式でも連続発射は可能だが、気温でガスの圧力が大きく変化する代替フロンガス式に比べ、連射に適した方式である。
拳銃サイズのものもあるが、大きなスペースをとって機構を収めたほうが性能は高いため、主に短機関銃突撃銃といった大型モデルが主流である。
ガスガンとほぼ同様に「電動ブローバック」という機構も存在する。
低年齢向けのモデルは、入手の容易な乾電池をパワーソースとし、ランニングコストに優れる充電式バッテリーを使用するものは対象年齢が高い傾向にある。
構造が複雑で高価なぶん、高い年齢層を対象とした商品となるのはガスガンと同様である。

 共通事項として、実銃の再現性には各エアソフトガンメーカーともこだわりがあり、高価なモデルでは、セフティレバーやスライドストップマガジンキャッチなども実銃同様の機能が(あるいは操作のみが)再現されているのが普通となっている。さらに、実銃メーカーからロゴマークの使用許可等を得て、実際の刻印を再現しているものも多い。近年では実銃メーカー側から自社実銃のエアソフト版を販売したり*3、自社の実銃ラインナップには無い他社製実銃のエアソフト版を製造販売する例もみられる*4
 また、アクセサリーレールは銃の致傷能力には関係しないため実物と同等のものを販売することが可能となっており、実物と同じダットサイトレーザーサイトフォアグリップなどを装着することで実物さながらのカスタムが可能な商品も存在する。一方でこれらのアクセサリーは軍や警察の要員が使用する分には殆どの場合で調達コストを国が負担するが、そうではない民間人が遊戯銃へ使用するために購入するには販売ルートが限られていたり、民間人にも販売ルートが開かれていても高価である事が多い。このため、一部のメーカーでは軍や警察向けの高性能モデルとは別に、性能を抑えてより安価なモデルを民間市場へ供給したり、民間市場へと的を絞って安価なモデルのみを展開するメーカーも存在する。それでも軍や警察向けの高性能モデルを求める需要は多く、横流し品や無許可コピーされたレプリカといった問題のある製品が流通する原因となっている。
 銃器の発展、特に低強度でエアソフトガンに多用されたプラスチックが実銃のフレームに使えるレベルに達した結果、合法な実物グリップと同じつもりで銃刀法に抵触する実銃フレーム(グリップ)を輸入・所持しまい逮捕されるケース*5が起きている。
 製品名やそのラインナップにも特徴があり、エアソフトガン等として製品化されたことでその存在が広く知られることになった銃(S&W 3566など)や、エアソフトガンの製品名が有名になった銃(ベレッタ M12など)、ステージガンをエアガン化した銃(オート9)、エアガンオリジナルの銃(マルコシのスーパー9、東京マルイのVSR-10、マルゼンのAPS-2など)も存在する。

 エアソフトガン業界にも流行や定番は存在し、ベレッタ M92M1911系列AR15/M4系列などは常に人気のあるモデルである。
 シャイタック M200FN ミニミなど比較的大きな銃器、M134の携行型やRPG-7のエアソフトガンといったものも存在する。

 余談だが、陸上自衛隊では東京マルイ製の電動ガン「89式小銃」を調達してCQB訓練を行っている。

銀玉鉄砲

 装填した銀玉と呼ばれる弾を、ばねの力で前進するストライカーによって叩き、発射する機構をもつもの。「ストライカーガン(方式)」とも呼ばれる。銀玉は土を素材にアルミ粉で銀色に塗装したものである。当時流行の西部劇「ローン・レンジャー」の主人公が銀の弾を使っていたことにちなんでいるという。
 子供(小学校低〜中学年)向けで威力は弱く、至近距離でも新聞紙一枚射抜けなかったほどである。1960年に連発式マジックコルト*6が登場し、1980年代頃までは児童らが盛んにお互いを撃ち合ったりして遊ぶのに用いられていた。中には銀玉の代わりにエンバンダマと呼ばれる小型の円盤を発射する物もあった。

 主に自動拳銃が本体のモデルになっており、M1911ワルサー P38などがあった。ただし子供向けの物であるため、サイズは実物より縮小化されていた。現在では安価なエアコッキングガンなどの出現により見かけることは少なくなった。
 なお、東京マルイがこの銀玉鉄砲をモチーフにした低威力エアソフトガン「ニュー銀ダンエアガン」を販売している。(トリガーを引くことでエアコッキング→発射をワンアクションで行うもので、実際にはエアコッキングガンにあたる。)

モデルガン

 主に観賞用など、弾の発射能力を持たないものを指す。概ね銃口はインサート等で潰されているものの、実銃に近い構造をもつ物や、火薬を発火させ、排莢口からダミーカートを排莢することができるものもある。
 過去に実弾を発射できるように改造されて犯罪に使われた事例もあるために、金属製のものは特に法規制の対象となっており銀色の部分を金色に変更しなければならないなどの規制がある。


 その他実銃を模した水鉄砲や、100円ショップ等で販売されている「8連発銃」などの純粋に子供向けの物も遊戯銃の範囲に含まれる。

外部リンク

日本遊戯銃共同組合
全日本トイガン安全協会
東京マルイ − エアソフトガン製造
KSC − エアソフトガン及びモデルガン製造
ウエスタンアームズ − エアソフトガン製造
マルシン工業 − エアソフトガン及びモデルガン製造
CRAFT APPLE WORKS − エアソフトガン及びモデルガン製造


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 各社がモデルアップしている専用ページがあっても面白そうですね。TOPページにコスプレなどにと記述がありますし。 -- 8.9? 2012-03-31 (土) 23:03:22
  • あっても良いかも。「〜でプロップとして使用された」みたいなことも書けるし。 -- 2016-01-20 (水) 09:16:41
  • MINIMIってアサヒやTOPが出したのはだいぶ前だし、近年ってのは微妙な気がするけど -- 2017-08-23 (水) 00:22:36
  • 10年近く前からある項目だからその辺は適宜修正していくものかと。 -- 2017-08-23 (水) 00:52:31
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*1 代替フロンは寒さに弱く、電動ガンも僅差ではあるが冬場はバッテリーの持ちが悪くなる
*2 実銃のブローバックとは少々意味合いが異なる。
*3 マグプルPDRシグザウエルP320など。前者は開発中止となったモデルであるが、後者は実際の製品のエアソフト化である。またマグプル社は同社の実銃用アクセサリー類のエアガン向けをマグプルPTS(PTS by Magpul)の名で販売していた。東京マルイ電動ガン向けのPMAGなどがそれにあたる。(現在ではPTSは独立)
*4 建設工業集団有限責任公司がE&L airsoftブランドとして製造販売しているAKMM4A1など。
*5 グロックの実銃用カスタムフレームやP320の実銃用グリップモジュールの輸入・所持で逮捕者が出ている。
*6 前年の1959年には単発式のマジックコルトが販売されていたが、当時としては高価なプラスチック玉を使用し、発射の度に棒状の撃鉄を引く必要があった。

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Last-modified: 2023-06-10 (土) 16:38:16 (486d)