回転式(輪胴式)拳銃 / Revolver †
弾薬を装填する複数の薬室を円柱状に束ねた回転式シリンダー(回転式弾倉)によって、弾を連続発射する機構をもつ拳銃。
回転式拳銃の原型は、アメリカ人のイーサン・アレンが考案したペッパーボックス(Pepper boxes)ピストルと呼ばれる多銃身拳銃である。一つの撃発装置で、薬室とセットの銃身の束を回転させることで連続射撃を行う仕組みだったが、これをさらに銃身を一つにし、薬室の束だけを回転すればよいという発想の元に、回転式拳銃は生まれた。
連発可能とはいえ、大きく重かったペッパーボックス式に比べ断然効率が良く、実用的な製品としては最初のリボルバーであるコルトのパターソンの登場を皮切りに、19世紀から20世紀初頭に駆けて主流になった。
パターソンを始めとして初期のリボルバーは「パーカッション式」の撃発方式だったが、さらに時代が経つと、金属式薬莢の弾薬を使用するS&W社製のモデル1が登場し、これが近代的な拳銃の元祖となる*1。
パーカッション式の時代はシリンダーを外して装填を行っていたが、金属薬莢の登場で中折れ式(ブレイクオープン)(S&W モデル3など)やソリッドフレーム(コルト SAAなど)に移行した。前者は装填しやすいが構造的に弱く、後者は構造的に強いものの、装填しにくいと特性が一長一短であったが、19世紀末にはシリンダーを側面にふり出すスイングアウト式が登場した。装填のしやすさと強度の両方を兼ね備えたスイングアウト式の登場によって中折れ式リボルバーは淘汰されていった。一方、ソリッドフレーム式リボルバーは強度を生かし、マグナム弾などの強力な弾薬を使用するフレームとしてスタームルガー ブラックホークなど一部現在でも生き残っている。
かつては軍・法執行機関の定番サイドアームであったが、現代では自動拳銃が大きく普及しており、そのシェアは減少している。しかし構造・動作共にシンプルなため信頼性が高く、特殊部隊やSWATなどの隊員が個人的に導入しているケースもあり、変わったところでは、フランスのGIGNのようにマグナム弾仕様のリボルバーが制式化されている例もある。
自動拳銃と比べ、比較的安価で操作方法も覚えやすいことから、民間も含め護身用・入門用としては現在でも大きなシェアがある。連発機構を弾薬の発射エネルギーに頼らないため作動が安定しており、構造的にも強固なため、マグナム弾などの強力な弾丸の使用に適しており、プリンキングなど趣味のシューティングやハンティングにおいても人気がある。
シリンダーの回転方向には右回りと左回りがある*2。また稀ながら、フォスベリーやマテバ 6ウニカのような自動コッキング機能を有するものもある。
シリンダーは5〜6発入りというのが普通だが、中にはナガン M1895の様に7発入りの物もあり、近年は7〜8発入りの製品(S&W M686 PlusやS&W M&P R8など)も一部で登場し始めている。
リボルバーの特徴として、薬室のサイズさえ適合すれば、標準より短い(低威力)の弾薬を装填し発射することが可能な点がある。例えば.357マグナム弾を使用するリボルバーでも全長が短く威力の低い.38スペシャルを使用可能である。同口径の自動拳銃弾を使用することも可能だが、抜け落ちる、不発になる、排莢が困難など、不都合が多い。このためリボルバーで自動拳銃弾を使用する際は、ムーンクリップが使用される。
また通常、射手が意図して操作する安全装置を持たない。現代ではハンマーブロックやトランスファーバーなど、トリガーやハンマーの操作に連動して働く安全装置を備えているのが一般的となっているが、これら装置の登場以前は、装填状態で持ち歩く場合、ハンマー位置の弾を一発抜いておくという対策が取られていた。
メディア上ではしばしば回転式拳銃に減音器を装着する例があるが、実際には銃身基部と薬室の間にあるシリンダーギャップからのガス漏れも大きな音源となるため、自動拳銃よりも減音効果は大きく劣る。しかし、ベトナム戦争でアメリカ軍が運用したトンネルラット*3へは、トンネル内という閉所での発砲が聴力へ著しい障害を与えるために、S&W M10などの回転式拳銃に減音器を備えたものが配備されていた。
さらに一部の銃ではシリンダーギャップをガスシール機構などで閉塞する事で減音器の効果を高めているものも存在する。
3インチ以下の銃身長に切り詰められたリボルバーには「スナブノーズ」という愛称がある。