スポーターモデル / Sporter Model †
直訳すれば『スポーツ用』、あるいは『競技用モデル』となる。銃器は狩猟や護身用などの実用品としての側面も持つため、より広義な『コマーシャルモデル』という言葉が使われるケースも多いが、一般にメーカーが民生品として改造・仕様変更した軍用銃を民間で販売する際に用いる名称である。
例えばアメリカ民間市場向けのモデルでは、セミオートオンリーにすることが大前提で、さらにSMGの場合はバレルを延長(16インチ以上)してカービンタイプにする、あるいは小型の物であればショルダーストックを廃してピストルタイプに仕立て直す、といった具合である。もちろん、容易にフルオート改造できないように、トリガーパックなどにも手を加えている。
『スポーター』というのはあくまで便宜的な呼称で、警察・治安機関の需要をのぞけば、軍用銃好きのマニア向けの性格が強く、銃所持がある程度認められているアメリカ以外ではこの種の銃の需要はさほど多いものではない。銃規制の強い国(日本も含めて)ではミリタリータイプの製品の輸入・販売自体を禁止・制限している国も多く、例えばオーストラリアはポートアーサー事件以降、この種のスポーターモデルの販売を禁止している。
しかし、中古兵器の氾濫などで本来の軍用銃市場が飽和状態となる中では、これらスポーターモデルも重要な稼ぎ頭となっている模様である。例えばFN社のファイブセブンやP90などは、弾薬の特殊性(ボディアーマーを貫通してしまう)から従来、顧客を特殊部隊などに厳しく限定していたが、結局利益が上がらず、AWB(連邦攻撃武器規制)失効後に、わざわざ民間向けの貫通力の低い新弾薬まで用意してアメリカ市場に投入している。
ところで、スポーターモデルをフルオート改造することは違法だが、実はこれには抜け穴がある。
一例がフルオート機構である。アメリカの場合、フルオートタイプへのコンバージョンを禁止した規制法『FOPA86』の施行以前(1986年以前)に改造されたもの、あるいは規制外の『未婚レジスタードシア』(それ自体が一つのマシンガンとして登録されているトリガーパック)を組み込んでフルオート化された物は合法(脱法?)とされているのだ。これら改造型は、当然オリジナルのフルオートタイプよりは精度などで劣っているものの、フルオートタイプを新規で入手できる機会が減っている今では、希少価値もあって高値で取引されることもあるようだ(何でも投資・投機の対象になってしまうお国柄もあって、価格が暴騰する傾向もあるらしい)。スライドファイアストック機構も法律上セミオートの銃を疑似的にフルオート化する機構である。(詳細は項目参照)
ストックレスかつ16インチ以下の銃身を持ち法律上「ピストル」として分類されるカービンについても、ストック風の「片手保持補助具(アームブレース)」を装備することで実質ストックを装備する手法が登場している。*1
なおこれとは別に、過去にはSMGのスポータータイプの一部に容易にフルオート改造できるものがあり、問題となった(こちらは完全に違法)。MAC M11やKG9などがこれに当たり、これらのスポーターモデルは販売中止に追い込まれている。