スライドストップ / Slide stop †
自動拳銃で、弾を撃ち尽くした際にスライドを後退した状態でロックする装置。
新しい弾倉を装填した際、スライドリリースレバーを解除すれば、自動的にスライドが前進すると共に初弾が薬室に装填されるので、弾倉交換のたびに手動でスライドを引いてコッキングする必要が無いという仕組み。
スライドストップがかかった状態は「ホールドオープン」と呼ばれ、弾切れになったことを射手に知らせる、副次的な機能も持つ。
構造的には、撃ち尽くして空になり、押しあがってきたマガジン・フォロワーが、銃内部のスライドストップのリリースレバーと連動した部分を動かし、リリースレバーがスライドの切り欠き溝に噛み合うことによってロックする。弾倉を再装填した後はリリースレバーを直接操作するか、スライドを改めて引き直して噛み合いを外すことでロックを解除する。リリースレバーを多用しすぎると部品が摩耗するため、ユーザーや採用組織によってはスライドを引いて解除するよう訓練している場合もある。
ベレッタ M1934など、一部の古い設計の自動拳銃は、マガジン・フォロワーが直接スライドに引っかかってロックする仕組みになっている。これらの場合は、空マガジンを引き抜くと勝手にスライドが元の位置に戻るため、改めてコッキングする必要がある。
拳銃に限らず、自動小銃、突撃銃などの各種自動火器にも同様の機構を持つ物が多い。この場合は「ボルトストップ」または「ボルトキャッチ」と呼ぶ。
自動ホールドオープンはM1ガーランドやSKS等、内蔵固定マガジン式の自動小銃には必須の機構として組み込まれた。これらはボルトが開かなければマガジンにアクセス出来ないため、ホールドオープン機構なしに弾薬を装填できないためだ。アメリカの軍用自動小銃は、M1ガーランド以来、現代のAR15系ライフルに至るまで操作性を継承して伝統的に組み込まれている。AR15系はユーザーが多いことから、操作の共通化を図ったものも見受けられる(例:SCAR、MPX、UMPなど)。
リロードの際、リコイルスプリングに抗しながらのコッキング操作が省ける一方、わずかながらも部品点数が増え、構造が複雑化するほか、再装填しないままだと薬室が開放されたままになり、侵入した塵芥などがジャム(作動不良)の原因になるなどの難点もある。
AK47系やFNCのように、ボルトストップを備えていない自動小銃も存在する。ただし、これらは先述の難点に対する懸念以上に、開発国やそれらの採用国で以前に使用されていた主力小火器の操作系を踏襲したものだ。ボルトアクションライフルならもちろんとして、突撃銃の主力化以前に各国で装備していた自動火器である短機関銃は、いずれもマガジンのリロードに前後してコッキング操作を要するものだった。
後退したボルト/スライドをリリースする機構は「軽いコッキング操作を要するもの」と「レバー/ボタン操作によって可能なもの」、その両方が可能なものがある。前者にはワルサー PPやシグザウエル P230といった(レバー等を備える余地が無い)比較的小型の自動拳銃、89式小銃やSVD。後者はM1911を始めとする多くの自動拳銃のほか、M16/AR15シリーズやMP7などが挙げられる。AR18やSA80などは、双方が可能である。