突撃銃 / Assault rifle †
小型の小銃弾を使用する、フルオート射撃が可能な軍用自動小銃。威力や射程を必要十分な殺傷力と交戦距離に最適化させる形でダウンサイジングし、連射能力をもったライフルを歩兵の標準的な武装とするべく企図されたものである。
20世紀の半ばまで、各国軍の主力歩兵銃はクリップ装填式のボルトアクションライフルが主であったが、個人で扱えるフルオートマチック射撃が可能な軍用銃の研究は第一次世界大戦以前から行われていた。現代の突撃銃に近いコンセプトを実現した最初のライフルは、20世紀初頭(1900年頃)のイタリア製のチェイリゴッティと言われている。
戦間期にいち早くセミオートマチックの自動小銃「M1ガーランド」を主力化したアメリカにおいても、20世紀初頭から突撃銃に近似したコンセプトを持つ銃が幾つか作られている。ルイス機関銃の設計者アイザック・ルイスによって、BARの競作として1918年頃に「アサルトフェイズ・ライフル」と名付けた自動小銃が設計・試作されている。また、ウィンチェスター社のトーマス・クロスレイ・ジョンソンによるウィンチェスターM1907自動小銃は、カービンサイズで.351WSL*1という独自の「中間弾」と呼ばれる、従来のライフル弾よりもエネルギーが小さく低反動だが、拳銃弾よりも強力という弾薬が用いられていた。当初、フランス陸軍がこの銃を航空偵察員用の武装として購入していたが、機関銃が航空機に装備されるようになって不要となっていた*2。しかし第一次世界大戦中、威力と軽便さから接近戦向きの銃として見出され、1917年にはフルオート仕様のM1907/17が作られた。この銃は標準の5、10連を拡張した15、20連マガジンと専用銃剣と共にフランスに輸出され、多数投入された。
第一次大戦が終了すると、フランスでは.351WSLをベースにした8mm×35R弾を使用するリベロリスM1918、アメリカでは同じく.351WSLをベースにした.345WMR*3を使用するウィンチェスター-バートン・マシンライフルが作られた。1920年代にはスイス、1930年代にはデンマークとドイツも減装弾を使用した連射の容易なライフルの研究を開始したが、いずれも軍への採用には至らなかった。
第一次大戦後、唯一実戦で使用されたのは、帝政ロシア時代に開発され、ソビエト連邦軍に採用されたフェデロフM1916自動小銃である。この銃は独自開発弾を用いていた他国の試作銃と異なり、既存の小口径低反動弾である6.5mm×50SR弾を採用していた。これは日露戦争時に鹵獲された日本の三十年式歩兵銃の三十年式実包であった。
第一次世界大戦以降は、それまでの主力歩兵銃では小銃弾の長射程(最大射程1000m)を存分に使う機会が少なく、大抵の場合その半分以下の距離で交戦が行われるという事実が明らかとなったものの、第二次世界大戦の開始される頃には、各国では軍の方針から結局、フルサイズ・通常装薬の弾薬を用いる銃が制式となっていった。
しかし、突撃銃の嚆矢となる自動小銃の研究は各国で進められていた。ロシアではその後、シモノフM1936などが開発されたがこれも信頼性などを理由に広く普及することは無かった。
一方ドイツでは1940年代、遂に性能の高い専用の短小ライフル弾を開発し、アドルフ・ヒトラー自身によって「SturmGewehr(突撃銃)」と名付けられたStG 44が戦場に投入された*4。この銃の威力・射程・軽便性を兼ね備えた運用は他国に大きな衝撃を与え、戦後世界各国はこれに類似した小火器の開発を急速に推進する事となった。
第二次世界大戦後に開発されたフルオート可能な自動小銃では、スイスのStgw.57(SIG510)とオーストリアのStgw.58(FN FAL)が最初に「Sturmgewehr」の名称を引き継いで採用された。ロシアのAK-47、チェコのVz.58などは従来の短機関銃同様に単に「Avtomat/Samopal」(自動火器)と呼ばれたのみで、まだ「突撃銃(アサルトライフル)」という名称は世界的に普及していなかった。
「アサルトライフル」という名称は、ベトナム戦争(1955-1975)を通して大きく普及した。当時北ベトナム軍が用いたAK47は小型軽量かつ連射性に優れており、大型で重く、反動が強いアメリカ軍のM14に対して、弾幕と機動力で大きな被害を与えた。アメリカ軍はAK47を強襲に適した「アサルトライフル」と呼び、これに対抗する為の自国の「アサルトライフル」を必要とした。そして1960年代、M16が採用され、実戦に投入された。M16は当初、現場から多くの不評を招いたものの改修を重ねながら確かな戦果を挙げ、以後NATO各国もM16のような「アサルトライフル」の開発と採用に注力して行く。2000年代以降も、これらの流れを汲んだアサルトライフルや弾薬が戦場で主流である。日本語における「突撃銃」の呼称は、「アサルトライフル」に対して防衛省が用いた訳語に由来する。
1970年代にはブルパップ型(FAMAS等)のような従来と異なるレイアウトのライフルも実用化されている。1990年代以降は、兵士間情報共有機器や射撃統制装置といった先進機器を組み込んだ「次世代小銃」の研究も各国で行われている。代表的なものには、機器との併用を想定したFAMAS FélinやARX160、銃本体に機能が統合されたXM29(OICW)等がある。しかし、21世紀以降もこれらの機器や機能は未だ実用的な段階には至っておらず、コンセプトモデルの域を出ないか、計画そのものが中止されている状態である。
発射する弾薬も試行錯誤が重ねられ、過去には、採用には至らなかったが、薬莢の要らないケースレス弾(G11)や、『矢』のような形で高速化されたフレシェット弾(ACR)などが開発されている。湾岸戦争以降は、遠距離戦の増加から突撃銃にも長射程が求められ、既存の弾薬を改良したマッチ仕様弾薬や、NATO標準の5.56mmx45と7.62mmx51の中間である「中口径弾薬」の開発が進められている。
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