対物火器 / Anti-material weapon †
主に建築物や設備、車両などを攻撃することを目的とした火器。
第一次大戦で歩兵が持つ小火器(小銃、突撃銃)を受け付けない戦車が発明されて以来、これに対抗する強力な火器が時代と共に開発されていった。第一次大戦末期には大口径の小銃弾で戦車の装甲を貫くタンクゲベール、いわゆる対戦車小銃が登場したが、弾頭の運動エネルギーに貫通性能を依存する対戦車小銃では第二次世界大戦までに発展を遂げた戦車の装甲を貫通するのに限界が生じた。そこで、第二次大戦前後のロケットや弾頭技術の発達により、M9バズーカやパンツァーファウスト、パンツァーシュレックといった数人、もしくは個人でも扱える成型炸薬弾式の対装甲火器へと移行していった。
第二次大戦後は従来のロケット兵器に発展を加えた、無誘導だが比較的安価なRPG7やM2カールグスタフと、高価な誘導装置を搭載した9M111ファゴットやM47ドラゴンなどのミサイル兵器の2系統の対物火器が進化発展を続けている。
一方、戦車をはじめとする装甲車両の発展により第二次世界大戦以降は廃れた対戦車小銃だが、冷戦時代に大口径の重機関銃を用いた長距離狙撃が評価され、また対戦車小銃が担っていた機銃陣地などの野戦築城に対する狙撃が再評価されるようになると、対物小銃(アンチマテリアルライフル)または大口径狙撃銃(ラージキャリバー・スナイパーライフル)として同様のライフルが再び登場した。
特異な例でもあるが、第二次世界大戦後に初めて登場した大口径狙撃銃の一つであるキューバのMAMBIは、調達が困難だった携帯地対空ミサイルの代替として開発され、キューバ陸軍に配備されている。
その高い威力と射程から、遠距離より爆発物や固定機関銃、非装甲車両のみならず軽装甲車両のエンジンブロックなどを破壊するのに用いられる。また通常の小銃弾に比べ遥かに重く大きなエネルギーを持つ弾体のおかげで、風や空気の影響をあまり受けずに遠くまで弾丸が届くので、長距離狙撃銃としても使用される。
また大きなメリットとして、弾薬1発が他の対物火器よりも遥かに安く、大きさや重量も小さいという点がある。この為、弾薬の調達コストが低く、携行弾数を多くする、あるいは同じ携行弾数では身軽に出来るため、他の対物火器に対して運用の容易さと柔軟性に大きな優位がある。
これとまったく逆となってしまった事例としてフォークランド戦争では、アルゼンチン軍の陣地に据えられたM2重機関銃からの射撃に対し、イギリス軍はこういった野戦築城に対する弾薬の安価な対抗火器であったボーイズ対戦車ライフルをとうの昔に退役させていたため、これらの陣地一つ一つを潰す為に高価で重いミラン対戦車ミサイルを使う事を強いられていた。
これらの点から、中東やアフリカの紛争地域では重機関銃や機関砲の銃身を転用した大口径狙撃銃がしばしば製作、運用されており、テクニカルや自爆車両、建築物の破壊や長距離狙撃に用いられている。
なお、RPG7やパンツァーファウストIIIなどは俗に「ロケット砲」ないし「ロケットランチャー」と呼ばれることも多いが、仕組みとしては、発射に際しては無反動砲の原理を利用しており、一定距離を慣性で飛行した後に弾体の推進用ロケットモーターに点火するようになっている。この方式ではロケットの噴射を射手が浴びる危険性が無く、ロケット推進によって射程や弾頭のペイロードに余裕が持てることから、1970年代以降はロケット火器の代表的な方式の一つとなっている。
また一方で、べトナム戦争以降の西側ロケット火器として一般的となったM72 LAWのように、弾体にロケットモーターを持つものの、発射にのみ利用し発射筒内で燃焼が終了するという、ほとんど無反動砲に近いものも存在する。
これらの主に地上目標を破壊するための火器とは別に、航空機を破壊する為の火器も存在する。
古くは第一次世界大戦以前より観測気球や偵察機に対し、歩兵の持つ通常の小銃による対空射撃が行われ、これは標的を戦闘機、対地攻撃機、ヘリコプター、あるいは無人航空機などへと標的が変わりながらも現代まで行われているが、通常の小銃では射程、命中率、威力が不足する事が多く、これを補える専用の対空火器が開発されていった。
第二次世界大戦の頃までは機関銃や機関砲、大砲に高い仰角を持たせて航空機への射撃を可能とした火器が主流であり、この中でも大口径火器にはレーダー装置や時限信管、近接信管などを組み合わせて命中率を大きく向上させたものも多い。
しかし、これらは大掛かりな兵器が殆どで、機関銃でさえ銃本体は兵士1人でも携行でも、対空銃架や弾薬を携行する為により多くの兵員を要し、機関砲や火砲を用いた場合には1門を運用するのに数十名もの兵員を要する極めて大掛かりな兵器システムで運用に困難が伴いがちだった。
この問題を解決するため、兵士1人でも携行と運用が可能な対空火器が求められており、その端緒となったのが第二次世界大戦末期に制空権を失い、対空砲部隊の運用すら困難となったドイツにより開発されたフリーガーファウストという個人携行の9連装無誘導地対空ロケット発射器である。これは無誘導ロケットの欠点である命中率の悪さを、多連装化して斉射する事で補う事を意図していたが、それでもロケットの飛翔速度の遅さなどから補い切れず、有効な兵器とは言えなかった。
しかし戦後、航空機のエンジンから放射される赤外線などを利用した誘導装置をロケットに組み合わせたミサイルを携行発射機で撃ち出す兵器が開発された事で、携行対空火器が実用化される事となる。これらは誘導装置の分だけ非常に高コストではあるが、旧来の大掛かりな対空火器よりも遥かに有効であり、より長射程な車載ないし艦載の対空ミサイルの最短射程を埋める防空システムの一翼を担っている。
対物/対戦車ライフル †
AI AW50
AI AS50
EDMアームズ ウィンドランナー
LAR グリズリー・ビッグボア
MOM ゲパード
PGM ヘカートII
RSAF ボーイズ対戦車ライフル
USSR PTRD1941
USSR PTRS1941
ZID KSVK
ZVI ファルコン
小倉陸軍造兵廠 九七式自動砲
グストロフ・ベルケ パンツァービュクセ(PzB)
ステアー HS.50
ステアー IWS2000
ゾロターン S-18/100
ダネル NTW
バレット M82
バレット M90
パウザ P50
マウザー M1918
マクミラン TAC-50
ラティ m/39
レイ M500
FFV AT4 / M136
FFV カールグスタフ M2(HEAT弾はロケットアシスト式)
対戦車擲弾発射器(弾頭を無反動砲式で射出する発射筒) †
HAS パンツァーファウスト
USSR RPG2
対戦車擲弾発射器(ロケット推進式の弾頭を無反動砲式で射出する発射筒) †
DNAG パンツァーファウストIII
USSR RPG7
その他の対戦車擲弾発射器 †
UK PIAT
対戦車ロケット発射器 †
HAS パンツァーシュレック(RPzB)
MD SMAW
TDS M72 LAW
US M1・M9バズーカ
US M20 スーパーバズーカ
US M202 FLASH(焼夷ロケット発射器)
USSR RPG18・RPG22
USSR RPG29
対戦車ミサイル †
MD M47 ドラゴン
アエロスパシアル エリクス
川崎重工 01式軽対戦車誘導弾
ヒューズ TOW / BGM-71
ロッキードマーチン ジャベリン / FGM-148
ロッキードマーチン プレデター / FGM-172 SRAW
地対空ロケット発射器 †
HAS フリーガーファウスト
地対空ミサイル †
GD FIM-92 スティンガー
USSR 9K32 ストレラ-2 / SA-7 グレイル
タレス ブローパイプ
東芝 91式携帯地対空誘導弾
GE GAU-8 アヴェンジャー
GE M61 バルカン
航空機関砲 †
マウザー MG151
ラインメタル MG131