ホルスター / Holster

 拳銃を入れるケースやポーチの事。銃が携帯しやすく、脱落したりせず、また咄嗟に取り出しやすい専用の入れ物として発達してきた。
 元々騎兵が銃を運ぶために馬の鞍に装着する物だったが、その後拳銃が発達すると人間が装着する物が登場した。

 防弾ベストなどと異なり、あくまで携帯器具であるため他の装身具同様、革や化学繊維の類で作られている事が多い。
 近年ではポリマーを利用した成型ホルスターも多い。耐水性で劣化も少なく、銃の形に成型可能であるためよりしっかりとした固定が可能となる。特にカイデックス樹脂は薄く強く成型できる点から、従来より軽くコンパクトなホルスターを成型するのに適しており、ホルスター用樹脂材料としては広く普及している。この材料は簡単な器具さえあれば加工可能なため、ホルスターの自作にもよく使用される。
 また近年の樹脂製のホルスターにおいては、銃を差すだけでロックが掛かるようになっているものもある。これは主にボタン・レバーを押しながらでないと引き抜けず、不意に脱落しにくい一方、手袋などを装着した状態でも引き抜きやすいよう工夫されている。
 上記のようなボタン式の利点や枠としての強固さを活かすため、フレームのみ樹脂製で収納部分は化学繊維という複合タイプの製品も多く見受けられる。
 また、ホルスター本体とベルトループ(ベルトと繋ぐ器具)は別の部品となっている製品もあり、ベルトループ部を取り替えることで、レッグホルスターからヒップホルスター、そしてプレートキャリア装着などを、1つのホルスターで兼用できるものもある。

 固定位置に応じて下記のような種類がある。


・ヒップホルスター
 ベルトなどを介して腰の周囲に装着する物。素早く確実に銃を使用する実戦的要素を重視しており、軍人や警察官など、公的機関のオフィサーに最も多く使用されている。またフィクションでは西部劇の代名詞にもなっている。
 収納した拳銃のグリップの位置によって、ベルトより上のものは『ハイライド』、下のものは『ローライド』と呼ばれる。
 多くの場合、上着を着ても裾からはみ出したり、膨らみが目立ったりと、銃を身に付けていることが傍目に判ってしまうが、
 銃が前傾して背中のラインに沿うような設計の物や、後述のIWBホルスターなど、隠匿性を重視したホルスターも存在する。

・ショルダーホルスター
 ハーネスを用いて肩から脇の下に銃を吊るす物。通常は利き手と逆側の腋に装着する。
 上着を羽織れば銃を隠せるので、私服姿で活動する刑事や捜査官などが好んで使用するが、体格と拳銃と上着の兼ね合い次第では膨らみが目立ってしまうため注意が必要。また素早い抜き撃ちには不向きである。
 横向き(銃口が水平後ろ向き)と縦向き(銃口が垂直真下向き)とがあり、前者の方が素早く抜きやすいが、長く大きな銃には膨らみが目立ちやすくなったり上着に収まりきらなかったりする。縦向きの場合は抜きにくいが、多少長くて大きい銃器でも目立ちにくくすることが出来る。銃と体格次第ではサブマシンガンでも隠匿可能である。
 アメリカ南北戦争の頃から使われている。

・レッグホルスター、サイホルスター
 腰のベルトから吊って、バンドで太腿(サイ)側面に固定する物。
 ちょうど手を下げた位置にホルスターを配するため、ヒップホルスターよりも咄嗟に銃が抜きやすい。また、ライフルを腰だめで構えても邪魔にならない。
 特殊部隊でかなり普及したが、徒歩でも車輛でも移動の際にはかなり煩わしく座った状態では抜きづらいため、近年は利用者がやや減少気味である。対応した物としてか、ヒップホルスター寄りの位置に固定するタイプも登場している。

・チェストホルスター
 胸から鳩尾の辺りに装着する物。かつては襷掛けする形で胸の前に拳銃を固定するものが多かったが、現在ではボディアーマーやプレートキャリアに直接取り付ける形が主流である。
 車輌移動が多い場合など下半身回りに装備を付けたくない場合や、プレートキャリア等に装備をまとめてしまいたい場合などに用いられる。

・SOBホルスター (SOB = Small of Back)
 バックサイドホルスターとも。ベルトなどを介してお尻の上から腰あたりに装着する物。抜きやすさや携帯性よりも『見えない』ことを重視している。
 銃口が地面と水平となるものは、腰のくびれ部分に収まるので特に隠匿性が高く、主に潜入捜査官などが使用する。

・IWBホルスター (IWB = Inside Waist Band)
 インサイドベルトホルスターとも。ベルトの内側にホルスター本体を持つ物。SOBホルスター同様隠匿性を重視した形状である。
 特に体の前にホルスターを置くスタイルはアペンディックスキャリーと呼ばれる。隠匿性と素早い抜き撃ちを兼ね備えるが、急所が近いため暴発時のリスクが大きい。

・ポーチホルスター
 ウェストポーチやヒップバックに入れてホルスターとした物。袋の中で銃が動かないように固定する。
 プレートキャリアに装着するマガジンポーチやラジオポーチをホルスターに転用することもある。

・アンクルホルスター
 足首に装着するもの。バックサイドタイプと同様、隠匿携帯を目的としている。塵埃の害を被りやすいため、主に小型のリボルバーに限られる。
 映画『フレンチ・コネクション』で主人公のジミー・ドイルが使用していたのが有名。 

・ストックホルスター
 銃と着脱可能なストックとして機能するホルスター。最初期の実用自動拳銃であるボーチャードピストルのころから使われており*1、当時から冷戦期までに見られる。
 ストックとして機能するよう強固で大型のものとなるため、ホルスターとしての携行性は劣悪である。砲兵や特殊部隊、パイロットなど、主に拳銃しか携行できない要員の戦闘力を補う目的で使用されていた。
 主な採用拳銃は第二次大戦以前はP08C96ハイパワー、戦後はVP70スチェッキン拳銃など。
 VP70に関しては特にストックを装着することで3点バーストで発射する機関拳銃にも変換可能となる意欲的な設計であった。

・ブラホルスター
 女性のブラジャーに装着するもの。ブラジャーのフロント中心部から吊り下げるようにして、胸の下に銃を収める。
 隠匿性を考えると胸が豊かな人しか使えない。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ブラホルスター欲しいな。 男だけど -- 2016-03-20 (日) 15:32:35
  • ブラホルスターって映画でも見たことない。出てくる作品をご存知の方、教えてくださいな(決して、豊満な胸の女優を見たいわけではない) -- ただのガンヲタ? 2016-03-23 (水) 08:19:37
  • WW1〜WW2までのホルスターには銃本体だけでなく、予備マガジンやクリーニングキットを収容できるものがあったそうですが現代のホルスターにその様なものはあるのでしょうか? -- 2016-03-25 (金) 18:40:09
  • 予備マガジンホルダーが付いているものは現代でも多いですね。モジュラー式になっていてホルスターに任意の数だけ追加できるタイプのものも多いです。クリーニングキットまで収納するタイプは流石に現代では希少ですが、キット自体も小型化が進んでいますので、マガジンホルダーに収納して持ち歩くのも不可能ではないですね。 -- 2016-03-25 (金) 19:12:26
  • ブラホルスターを自作の小説で使おうかと思っているのですが、どのくらいの銃まで収納できるのでしょうか? メーカーのデモ動画では小型の自動式とリボルバー(チーフス?)を使っていましたが、グロック36が収まるなら、「四十五口径を胸に仕込んだ美人捜査官」を演出するのに使ってみようかと。 -- 2016-05-13 (金) 21:02:32
  • スタイルと服装次第でしょうね。色気のある服装だと難しそうですけど -- 2016-05-13 (金) 22:02:11
  • 胸の下に銃を仕込む都合上、胴回りがダボついた服でないと隠せないですからね。抜き撃ちに使うならシャツの裾を出した格好になるわけで。太腿のホルスターみたいに、一見お色気ギミックに使えそうながら、なかなか難しいものですね。 -- 2016-05-14 (土) 01:03:08
  • LARグリズリーのような、バレルがスライドより長い銃はホルスターに入るのだろうか…? -- 2018-01-28 (日) 22:11:59
  • それはホルスターによる。リボルバーはそういう形状のものの方が多いし、
    サプレッサーが装着された状態で収納可能なよう設計されたホルスターもある。 -- 2018-01-28 (日) 23:28:22
  • 某漫画の影響でバックサイドホルスターを試してみたら、意外とサイドのヒップホルスターよりも抜きやすくしかも抜いた後銃口が安定しやすいのでびっくりした。なかなか良いかも。 -- 2020-09-27 (日) 11:59:43
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*1 ただし、ボーチャードのそれは、ストックにベルトで革製ホルスターを付随させたもので、ホルスター付きストックと呼ぶべきもの。

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Last-modified: 2023-08-27 (日) 02:08:49 (470d)