マガジン / Magazine †
弾薬を格納し、銃本体へと押し出す機構を内蔵する部品。連発機構の発達とともに備わるようになった。
日本語で「弾倉」といった場合、回転式拳銃のシリンダー(回転式弾倉)も包含するが、「マガジン」という語では、これを含まない。シリンダーは薬室を束ねたもので構造も異なり、マガジンとは区別されるためだ。
現代では「マガジン」といえば雑誌か、本項目で扱うような銃器の弾薬保持部品を指すが、本来「マガジン」とはアラビア語の「Makhazin(倉庫)」から派生し、18世紀頃からヨーロッパ圏で使用されていた「軍事用の倉庫」、特に「弾薬庫」を指す単語であった。
通常、フォロワーを介してバネの力で弾薬を押し、マガジンリップによって飛び出さないよう抑えられる。民生のライフルや散弾銃で一般的な固定式のものと、自動拳銃や軍用自動小銃で一般的な着脱式のものがある。
固定式は、組み込まれたパーツというより、銃本体に設けられた弾薬を収めるスペースに弾薬を押し上げるフォロワーとバネを組み込んだものである。ボルト等によって固定され着脱可能なものでも、分解整備等以外に外すことが無く即時着脱が出来ないものは固定式に分類される。弾薬装填はクリップを利用するか、一発ずつ手ずから行う必要があるため、数十発の弾薬を素早く装填するには向かないが、構造的にシンプルで、マガジン全体もしくは大部分が銃本体に内包されているため、銃本体が破損するほどのダメージを負わない限り、外力で破損する心配がない。
着脱式マガジンは、一般に即時着脱が可能なものを差す。あらかじめ弾を込めたマガジンを複数個用意しておけば、撃ち尽くしたり、数発分を消費してつぎ足すにも、一度の交換で素早く全弾の再装填が行える。また、本体から全ての弾を一度でマガジンごと抜くことができるため、保管の際の抜弾作業が楽な利点がある*1。反面、着脱式マガジンの多くは銃から突出したパーツとなり易いため、銃本体に比べ変形など破損しやすく、動作不良を引き起こす可能性がある。着脱機構にもシンプルかつ確実なものが求められ、精度の良くない部品や黎明期の自動火器では、作動不良の原因となっている。
着脱式マガジンの容器は銃本体と同じく鉄製が多かったが、1950年代以降になると着脱式マガジンではM16のアルミ製、AKMのガラス繊維強化ベークライト樹脂製、マグプルのナイロン樹脂製などのように軽量な素材も用いられている。
また、一目で残弾数が分かるよう半透明の樹脂で作られていたり、一定数ごとに穴を空けたり確認窓が取り付けられているマガジンも存在する。ただし確認窓は構造によっては脱落するリスクが、確認穴はマガジン強度を低下させるので変形しやすくなったり、異物が詰まったりして動作不良の原因となる可能性もある。また、薬莢の真鍮が光を反射して目立つことがあるため、これを嫌ってダクトテープやペイントで塞いで運用するケースも見られる。
マガジンの種類 †
・チューブラーマガジン
管状のマガジン。基本的には固定式で一部の例外*2を除き銃身の下に配置される。
レバーアクションライフルやショットガンでよくみられる。
弾薬が縦列で配置されることから、12ゲージ2.75インチ弾と12ゲージ3インチ弾、.357マグナムと.38スペシャルのような同じ口径の薬莢長の違う弾薬にも対応できる。
一方で、薬莢底部の中央に雷管を持つセンターファイア弾薬は、弾頭が前に並んだ弾薬の雷管を刺激して暴発する危険があるため、先端の尖った弾道特性の良いスピッツァー(尖頭)とすることが出来ず、ラウンドノーズ(丸頭)またはフラットノーズ(平頭)とすることが必要である。
・ドラムマガジン
円筒形のマガジン。詳細はリンク先を参照
・パンマガジン
円盤型のマガジン。詳細はリンク先を参照
・ヘリカルマガジン
円柱状の細長いマガジン内にらせん状に弾が配置される。詳細はリンク先を参照
・ボックスマガジン(箱型弾倉)
最も一般的な形状のマガジン。マガジン底部のバネを介して押し上げるように弾が送られる。
多弾数化の為に長いマガジンにする際、先細り(テーパー)が強い弾薬であると湾曲した形状を取ることになる。
テーパーに合わせて湾曲したマガジンは「バナナマガジン」とも呼ばれる。
- ・シングルカラムとダブルカラム
箱型弾倉内に収める弾薬の配列のこと。
- 上記はそれぞれ「シングルスタック」「ダブルスタック」の名称でも呼ばれる(主に自動拳銃において)。また、四列に並べた「クアッドスタック(複々列式)」も存在する。
・[番外編]アモボックス(弾薬箱)
本来は弾薬を格納しておく箱であるが、ベルト給弾式の機関銃ではマガジン代わりに弾帯を収めておく箱として直接銃に取り付けるアモボックスもある。弾薬手なしの一人で機関銃を運用したり、弾帯への異物の付着やねじれの防止等の目的で使われる。あくまで弾帯を格納するだけの箱でありバネなどの給弾機構はない。
マガジンに関連する用語 †
・STANAGマガジン
NATO加盟国やその同盟国で用いられている、M16互換の5.56mm×45弾用着脱式マガジン。詳細はリンク先を参照
・クリップ(挿弾子)
マガジンに複数弾を一度に装填するのに使われる器具。リンク先を参照
・マガジンカットオフ
マガジンからの給弾をカットし、連発銃をシングルショットで使用するための機構。19世紀後半、連発式の歩兵銃が開発され始めたころ、弾の過剰消費を懸念した各国当局が追加させた。
想定では常時カットオフは機能させておき、部隊指揮官の判断と号令一下でマガジンからの給弾を許可しカットオフをリリースする、といった運用を行う筈だった。が、会敵した際にカットオフをそのままにしておくのは連発銃の優位を捨てるに等しく、結局カットオフは大抵、最初にリリースされたきりだったのが実情であった。第一次大戦後の戦間期には、カットオフを備えていた銃は次々とその機能が廃されていった。
ただ、小銃擲弾を使用する際に空包を装填するには有用な機能だったため、その後の第二次世界大戦の頃までは残していた国も多い。だがのちに実包で発射可能な小銃擲弾が登場した事などもあって、この用途でも廃れていった。
・マガジンキャッチ
脱着式マガジンを銃に固定/リリースを行う部品。詳細はリンク先を参照
・マガジンクランプ*3
マガジンの交換を容易にするために、マガジン同士を固定するための器具。マガジンカプラー(Magazine Coupler)とも。
マガジン同士を連結するといわゆるジャングルスタイルとなり、ポーチからマガジンを取り出す手順が省け、素早いリロードが可能となる。
MP5/40、G36やSG550シリーズ、FAMAE SAFなど、マガジンの容器そのものにブラケットを成型して、クランプ無しで直接連結を可能としているものもある。連結時はマガジンハウジングに干渉しないよう、隙間を空ける、角度をオフセットするなどの工夫がなされている。
AR15/M16互換マガジンにも、連結可能なよう設計されたETS社のマガジンなどがある。
・マガジンハウジング/マガジンウェル
着脱式マガジンを備えた銃器のコンポーネントで、マガジンの収まる空間、またはマガジン挿入孔のこと。短くマグウェルとも。
・マガジンポーチ
予備のマガジンを入れておく容器。専用のベルトリグやボディアーマー、タクティカルベストに装着される。
・マガジンローダー
マガジンへの装填を補助する器具。素手で装填するより素早く行える他、指の力だけでは装填が困難な際に重宝する。
てこの原理を利用したレバーで一発一発マガジンに押し込むタイプや、器具にマガジンを差し込み、レールに弾を並べてスライダーで押し込む「ベンチローダー」など様々なものが存在する。