スズメバチ / NID DE GUEPES (THE NEST) †
2002年,フランス映画
監督 フローラン・エミリオ・シリ
7月14日、パリ祭当日、午後6時にすべては始まった。フランス特殊部隊のラボリ中尉達はアルバニア・マフィアのボス、アベディン・ネクセップの護送任務に就いていた。しかしネクセップの奪還を目論むマフィアの襲撃を受け、護衛は壊滅。からくも窮地を脱して逃げ込んだ先は、ストラスブール郊外の工業地帯にあるコンテナヤード。ところが、そこには既にナセール、サンティノ達窃盗団が入り込んでいた。通信手段は窃盗団によって切られた後。孤立無援の状態で、ラボリ達は再びマフィアの包囲・襲撃を受ける。
ただ偶然そこに居合わせた他にはなんの接点もない特殊部隊、窃盗団、そしてヤードの警備員ルイ。彼らは生き延びるため武器を取り、共に戦うこととなる。しかし繰り返される襲撃の中、仲間達は一人また一人と倒れ、次第次第に追いつめられていく。
多勢に無勢、救援は望めず、弾薬も次第に尽きていく。絶体絶命の死地『スズメバチの巣』から、果たして彼らは脱出することができるのか――。
近年元気の良いフランスアクション映画の中でも、激烈な銃撃戦で図抜けた傑作。中盤・終盤の銃弾の嵐は、公開時のキャッチコピー「12000発喰らえ。」も決して大げさとは言えない凄まじさである。
内容的には、建物内に閉じ込められての攻防戦や、複数のキャラクターのドラマが一カ所に収斂していく演出などに、ジョン・カーペンター監督の『要塞警察』の影響が垣間見える。本家『要塞警察』も近年『アサルト13 要塞警察』のタイトルでリメイクされたが、異形の暗視ゴーグルで顔を隠した姿無き敵(セリフさえほとんど無い)の不気味さなどは、むしろこちらの方がオリジナルに近い。
そして、アクション面ではオリジナルをはるかに凌駕。各人の装備がバラバラだったりと妙なところもあるものの、中盤の攻防戦で見せる特殊部隊の動きや(声を出さない)ジェスチャーによるコミュニケーションは、かなりの本格派である。
サイドアームにリボルバーや散弾銃を装備している所なども、ちょっとフランス的かも。
なお、邦題の『スズメバチ』とは映画冒頭でも紹介される狩人バチのこと。このハチに捕らえられたクモは巣に閉じ込められ、生きながら幼虫のエサにされてしまう。
コンテナヤードに閉じ込められ、徐々にむさぼり食われる主人公達に、その姿を重ね合わせたタイトルなのだ。