ポリマーフレーム / Polymer frame

 主に石油を原料とした合成樹脂(要するにプラスチック)で製造されたフレーム。『ポリマー』とは、化学的には『重合体』あるいは『高分子化合物』の事だが、この場合は強化プラスチックやナイロン素材などをさす。
 1862年に最初のプラスチックであるパーシケンが発明され、その後1907年に工業用ポリマーであるベークライトが登場した。強度面などの問題で当時はバレルなど銃火器の主要部品には使用されなかったが、耐水・耐腐蝕性や複雑な成型の早さといった利点から、銃火器においても第一次世界大戦の時点で既にハンドガード、グリップ、ストックといった末端のパーツにポリマー素材は使用されていた。

 1959年に発売されたレミントン社のナイロン66ライフルは、ストックをすべてポリマー素材で構成した最初期の実用ライフルの一つである。安価で高品質な大衆用ライフルの設計を模索していたレミントン社は、大手化学メーカーのデュポン社と提携。当時研究開発されていた同社の新素材、ナイロンを用いてストックやレシーバーを一新するという賭けに出た。この新素材は見事にレミントンの要求を満たし、ナイロン66は総計100万挺を超える大きなセールスを生んだ。
 このヒットを受け、レミントン社は様々なポリマーフレーム製品を製造した。その中でも特筆すべき成功を収めたのは1963年に発売された、ライフルカートリッジ・ターゲットピストルの元祖とも言えるXP-100ピストルであろう。ポリマー素材による複雑成型によって可能となった『ブルパップボルトアクション』という特異な設計のこのピストルは、優れたバランスと精度からたちまちピストル競技界の新たな目玉商品となった。
 こうした民間銃器でのポリマー使用の成功が世界的に知られると、軍用製品においてもポリマー素材を活用しようという動きが見られ始めた。

 1970年には、最初期のポリマーフレーム拳銃として知られるH&K社のVP70ピストルが登場した。しかし商業的には成功しなかった。その後1978年にはオーストリアのステアー社からAUGアサルトライフルが登場。軍用ライフルとして初めて総ポリマー製レシーバーを採用しており、マガジンにも樹脂の利点を活かした半透明のものが用意された。ブルパップ設計などとも相まってこの斬新な設計の銃は、広く世界中で調達・採用された。
 1982年には、同じオーストリアのグロック社製自動拳銃であるグロック 17が登場した。VP70と異なり、現場の声を生かして開発されたグロック17は、斬新ながらも合理的な設計の銃であった。グロックの優れた資質は、ポリマー素材に懐疑的だったユーザーにも次第に受け入れられていき、それと同時にポリマーフレームも広く認知されることとなった。
 こうした初期の製品の成功を通して、様々な銃器メーカーにおいてポリマー素材を用いた製品が現れるようになった。

 素材加工や生産設備にある程度の技術力・工業力・資金力を要するものの、金属加工にくらべ大きなエネルギーを必要とせず、複雑な形状の部品を短時間にかつ大量に成型可能なので、生産性は非常に高い。耐候性・整備性もよく、金属と異なり熱伝導性が低いため、射手に火傷や凍傷を負わせる恐れもない、とメリットは数多い。また樹脂自体に着色して様々なカラーバリエーション(例えば砂漠迷彩のデザートイエローや訓練用の青色など)を作ることも可能という利点もある(塗装と違って使い込むうちに色がはげるといったこともない)。
 受け入れられるまでは時間を要したが、これらのメリットが認知されるに従って、各国各社から次々とポリマーフレームの銃が開発・生産されるようになっている。最近では素材の向上に伴って、H&K G36などのように、ハンマーや機関部など、従来は避けられていた部品にもポリマー素材が用いられるようになってきている。
 一方で、長い年月が経つことで急激に劣化する(グロック17の旧世代型)、熱や紫外線に弱い(G36)という可能性も指摘されているが、未だ決定的な結論は出ていない。そもそもポリマーと言っても実際には様々な材料が使われており、全てが画一的な性質を持つ訳ではない点は留意すべきであろう(例えば、G36などはカーボン繊維で強化されたポリマー素材を使用している)。
 しかし、全体として金属フレームに比べ材質の耐熱性や硬度で劣る*1点は変わりなく、強度の確保のためにポリマーフレームは従来のそれと比べ肉厚化(=重量化)しがちである。グリップパネルなどを一体成形することで強度はある程度補えるが、今度はパネルを分割することが出来なくなり、ユーザーの手のサイズに合わせた配慮が難しかった。
 この点はワルサー P99が、グリップのバックストラップを手のサイズに合わせて交換するという解決策を打ち出した。さらに近年では、グリップパネルの分割・交換が可能な製品も現れ始めている。P250ではインナーシャーシを取り外し、ポリマーフレームを丸ごと交換することでグリップサイズを変更する方法を採用するなど、様々な改良が各社から提案され、ポリマーフレームは今も進化を続けている。

 なお、グロック拳銃などの都市伝説として『ポリマーフレーム製品は金属探知器に検知されない』というものがあるが、ポリマー化されているのは『フレーム』(自動拳銃で言うところの下半分)のみであり、スライドやバレル、ボルトなどの高圧力・高磨耗に晒されるパーツは最初期から21世紀現在に至るまですべて金属で作られており、銃として機能する状態を保ったまま金属探知器をすり抜ける事は実際には不可能である*2
 しかしながら、こうしたアイデアはメディア作品においてはギミックとして活用され、ハリウッド映画でも『ダイ・ハード2』などでそうした展開を見る事が出来る。
 また2010年代に入って、3Dプリンターで製造可能な拳銃の設計図がインターネット上で配布され社会問題になっている。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • そういえば3Dプリンターで銃身から機関部まで全てフルポリマー拳銃を作られたらしいですね。 -- 2013-05-18 (土) 22:45:42
  • 機関部までポリマーって大丈夫なんだろうか。 -- 2013-05-18 (土) 23:51:04
  • なんだったか忘れたけど機関部の一部にポリマーを使ったライフルが既にあったと思う、パーツ次第では実用レベルでも耐えられるってことだと思うよ
    ポリマーと一言に言ってもいろいろあるから強度なんかも一概には言えないし、特殊拳銃としては十分な強度を確保できるのかも -- 2013-05-19 (日) 00:01:14
  • と言うか本文に書いてあったね、G36だ
    失礼 -- 2013-05-19 (日) 00:03:38
  • 実銃の構造はよく知らないけど、強度を確保するなら価格は上がってしまうだろうがカーボンをフレームなどの素材として使うとか、メインフレーム部分の金属と樹脂のパーツを組み合わせて強度とコスパ性能を確保するとか、というのはどうだろう? -- 車とラジコン勢のガンオタにわか? 2013-11-02 (土) 17:49:39
  • ↑エアガンですね。分かります(´ω`) -- TPQ? 2013-11-02 (土) 18:18:28
  • カーボンなんか発砲時の衝撃ですぐ割れてしまう。金属や樹脂にはある程度の柔らかさがあるから衝撃に耐えられるけどさ。「メインフレーム部分の金属と樹脂のパーツを組み合わせて強度とコスパ性能を確保する」これは戦後の銃器開発のトレンドとも言えるね。脱木材・軽量化・コストカット。 -- 2013-11-04 (月) 09:11:27
  • 銃身までポリマーだと、燃焼ガスの熱と圧力に耐えられない。単発射撃が限界。ttp://www.youtube.com/watch?v=A8EDr3ZDtL0 というか簡単に手に入らないのは、銃でも火薬でもなく「雷管」。銃なんて適当な鉄パイプの尻にスプリングと針を付ければ、撃てるものになるんだから。 -- 2013-11-06 (水) 19:57:21
  • ポリマーが普及したのは本文の理由に加え、「発射音や作動音を吸収するため射手に優しい」からと聞いたことがあります。小火器に使用されるポリマーにそのような事実はあるのでしょうか? -- 2015-09-26 (土) 18:26:45
  • 3Dプリンター製の拳銃などについて追記しました。 -- 2018-08-29 (水) 11:55:50
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*1 一般的に誤解されているが、柔軟性があるため耐圧性などはむしろ下手な金属素材より高い傾向にある。
*2 そもそもハイジャックに限って言えば、銃自体がパス可能でも弾丸がパスしようがないのだが…

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Last-modified: 2018-10-17 (水) 17:36:11 (333d)