重機関銃 / Heavy machine gun

 主に陣地や車両に設置し、複数人による運用を要する機関銃の総称。もともと「機関銃」といえばこのクラスのことを言った。第一次大戦に前後して各国で兵士1人でも携行可能なほど軽量な軽機関銃が登場すると、従来のそれが重機関銃と呼ばれるようになった。

 1862年に最初の機関銃であるガトリングガンが登場し、その後普仏戦争で使用されたフランスのミトライユーズや1881年に考案されたアメリカのガードナー銃など様々な物が開発され、1885年にアメリカの発明家であるハイラム・S・マキシムが発明した水冷式のマキシム機関銃が登場しこれが現在の機関銃の基礎となった。
 当時のマキシム系機関銃で50〜60kgとかなりの重量があったために、移動時には神輿のように複数人で担ぐか分解する必要があるなど小回りが利かないが*1ベルト式給弾による高い持続射撃能力により、無類の威力を発揮した。当初の活躍の場は植民地戦争で、せいぜいがマスケット銃の貧弱な装備の現地軍に対し、無数の屍を築きあげた。20世紀初頭の日露戦争においては双方の機関銃が互いの従来的な突撃戦術に対して猛威を振るい、近代化された軍隊同士の戦闘でもその有効性を証明すると共に、軽機関銃のような、個人でも携行でき歩兵に随伴しての突撃支援など軽快な機動運用が可能なフルオートマチック火器の登場を促した。第一次世界大戦ではその制圧力により重機関銃が互いに正面からの突破をほぼ完全に阻んだことから、連合軍と同盟軍の両陣営は迂回戦術を許さぬ欧州を縦断するほどの塹壕陣地を築き、塹壕戦という膠着状態に陥ることとなった。飛行機や自動車が発達し戦場でも使われるようになると、これらにも据え付けられるようになった。

 元々既存の小銃弾を使用するものだったが、航空機やトラック、戦車といった戦力の機械化、装甲化が進むと、これらを撃破可能なより大口径・大威力の弾薬と機関銃が開発された。これらが重機関銃として扱われ始めると、前者は中量級機関銃(Medium machingun)とも呼ばれるようになった。
 第二次大戦後、汎用機関銃が登場すると中量級機関銃はこれらに取って替わられてゆき、重機関銃は大口径のものが主となった。その出自ゆえに対物火器としても扱われる。 

 小口径のものはマキシム機関銃を始めとして、ブローニングM1917やイギリスのヴィッカース重機関銃、大口径のものはブローニングM2DShKがその代表格。
 また大口径の重機関銃は西側諸国が1930年代に完成したM2を改良こそすれどほぼそのまま今日まで使い続けているのに対し、東側諸国ではNSV重機関銃やQJZ89式重機槍など新型を開発して更新しているという対照的な点が見られる他とは異色な銃器カテゴリでもある。


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  • 周回遅れというか、今更なことですみませんがどうしてもお伺いしたいのでよろしいでしょうか。
    KPV重機関銃はどこのメディアにも登場していないのでしょうか?
    もし登場してたらページ作成を要望いたします。 -- 2016-10-08 (土) 11:35:13
  • ttps://www.youtube.com/watch?v=wAWrXTn5Www
    65年『ドクトル・ジバゴ』の予告編ですが、この重機はマキシムでしょうか、それともロシア製のコピーの方でしょうか? -- 大納言? 2017-08-19 (土) 21:43:33
  • ロシア製のM1910/30かと思われますが、冷戦期に西側で撮影された映画なので、同銃を模した別の銃の可能性もあります。
    本物なら、フィンランドかドイツ辺りが鹵獲したのをアメリカが得た個体ですかね。 -- 2017-08-20 (日) 02:54:07
  • 単純な仕様で言うとリブ付きジャケットなのでM1910かヴィッカース機関銃のどちらかでオリジナルの「マキシム機関銃」の可能性は0です。
    映画本編の該当シーンを見てもらえれば分かりますがマズルやマウントなどの細部が映らないのでどちらか判別は不可能です。
    まぁ射撃位置が低いので普通にロシア製だと思いますけどね・・・映画は冷戦時代の作品でも銃自体は第一次世界大戦時代から存在する旧型のものですから入手もさほど困難とは思われません。 -- 2017-08-20 (日) 07:38:00
  • 早速のご教示ありがとうございます。M1910だとジャケット上部に給水キャップ(?)みたいなものが見えるので、どうかと思っておりました。 -- 大納言? 2017-08-20 (日) 12:13:45
  • あのキャップはシールドと同様、付属されていないものもかなりあるので、それ自体はM1910かどうかの判断基準にはならない感じですね。
    懸念点があるとすればロシアモデルだとして当時撮影用の空砲は用意できたのかという点ですが、1960年代には既にモシンナガン小銃は幾つかの国から輸出がされているので弾薬の面でも問題ないでしょう(確かに当時としてはこの銃の登場は珍しいですが、西側文化圏でこの作品だけという事もありませんから)。 -- 2017-08-20 (日) 12:50:37
  • 現代の戦場では重機関銃による対空射撃の効果は見込めないでしょうか? (ジェット)戦闘機に対しては無力だというのは分かりますがヘリコプターやUAVに対してはどうでしょうか。 -- 2018-10-01 (月) 03:05:47
  • ヘリコプターは……効きはするでしょうが進入時はあらかた掃除してからでしょうから何とも言いがたいところがあります。UAV(ドローン)については「いちいちAAMやSAM打つのはもったいない」という話が出てたはずなので、選択肢としてはリーズナブルですし使いたいところですが、UAVもヘルファイア積む時代でしてね……。 -- 2018-10-02 (火) 00:29:49
  • ヘリやUAV相手だと重機関銃に射撃管制を付けても射程負けするんだよなあ。まあ、重機の射程外は対空ミサイルの仕事だし、対空ミサイルの最低射程内が重機の仕事なのだから、無力かというとそうでもない。 -- 2018-10-02 (火) 07:24:22
  • 何者かによってブローニング M2?の項目が削除され閲覧できない状態になっています。 -- 2023-12-22 (金) 08:51:42
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*1 そのため移動しやすいように二輪台車に搭載されていたものもあった。

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Last-modified: 2024-03-27 (水) 03:09:25 (31d)