コルト AR15(US M16) / Colt AR15(US M16) 【突撃銃】 †
全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 連射速度 | 発射形式 | 製造国 |
990mm | 2.86kg | 5.56mm×45 | 20/30 | 800発/分 | S/F | アメリカ |
1957年にアメリカの航空機メーカー・フェアチャイルド社アーマライト事業部にてユージン・ストーナーらによって開発された突撃銃。同社製AR10の5.56mm×45弾モデルである。
ストックなどの部品には当時主流の木製部品を一切使用せず、鉄とアルミ合金*1、プラスチックで構成された。ほぼ黒一色となった外観から「ブラックライフル」、兵士達にはその発射音から「ロックン・ロール」と呼ばれることもあった。
1962年以降、長きにわたってアメリカ軍の制式小銃に選ばれており、制式名『M16』の名もよく知られている。1983年に特許が切れた後は民生銃としても一大市場を築いており、最早アメリカの「国民銃」とも評せるまでになっている。
なお、単に「AR-15」と呼ばれる場合はクローン製品も含めた民生用の、制式名「M16」で呼ばれる時は軍用関連の話題を指すことが多い。
沿革 †
先代のAR10がアメリカ軍の制式小銃のトライアルに落選した後、1959年にアーマライト社は経営難から、小口径モデルとして開発された「AR-15」モデルを含めた製造権をコルト社に売却した。
1960年にこの銃のデモンストレーションを受けたアメリカ空軍大将カーティス・ルメイはその性能を評価し、導入を計画。1961年に空軍参謀長に昇進した彼は80,000挺のAR-15の調達を要求したが、陸軍が現存の7.62mm×51弾との補給の混乱は現時点では問題となると大統領に進言したため却下された。しかしこの銃と新設計の5.56mm弾の高い性能を同じく評価していたDARPAは、同年本銃を現地のアメリカ軍アドバイザーに送付。彼らの支援する南ベトナム軍特殊部隊ARVNと共に試験が開始された。その軽量さと5.56mm弾の威力を実感した現地のオペレーターはこれを極めて高く評価したため、アメリカ軍全体においても採用の動きが取られた。
陸軍は先述した弾薬供給への懸念や、進行中のSALVO計画を重視してAR-15の採用を拒否したため、まず1962年に空軍に採用する形でテストが行われた。最初に納入されたモデルは精度を向上するために1:14のライフリングに変更されたものの、かえって弾頭の安定性が減り威力を減少させたため、1:12に戻されている。空軍のテストにより性能が認められた後も、陸軍はなおも難色を示したため、当時の国防省長官ロバート・マクナマラの指令によりM14、AR-15、AK47の性能テストが実施された。この結果を受けて、マクナマラ長官はM14の調達停止と、AR-15を「M16」として全軍で採用することを決定した。
なお、採用決定後も陸軍はM16に対して多くの要求を追加している。特にメーカーや開発者も反対したボルトフォワードアシストの追加を強く要求した*2ため、陸軍と海兵隊ではこれを追加した「XM16E1」、その他の軍には「M16」として採用され、1965年から陸軍と海兵隊に配備が開始された。
しかし非常に大規模かつ急速な配備であったため、クリーニングキットとマニュアルが十分数配備されず、新銃に慣れない兵士たちの整備不良を招いた。また、用意された5.56mm弾にも装薬が規格外の物で製造されたものが多く、燃焼塵が多く発生したために装填・排莢不良を頻発させた。この時期の悪評から、21世紀に至るまで「AR-15は信頼性に劣る」という説が長らく支持されることとなった。
この問題を解決するため、陸軍では改めてクリーニングキット(ストックに収納可能)と平易な漫画式マニュアル*3を用意して各人に整備を徹底。銃自体も、火薬の改善指導や高温多湿なジャングルを考慮したバレル内のクロームメッキ処理、先の割れた三叉型から小枝などに引っ掛からない鳥籠型フラッシュハイダーへの変更など改修を行った『M16A1』を1967年から配備開始。これにより報告されていた問題はほとんどが解決し、現地の兵士からも高い評価を得る。1969年にはM16A1の完全配備と全M14の置換が完了し、これをもってアメリカ全軍の制式小銃となった。
海兵隊の要望を元に全面改修を行ったM16A2への更新以降、M16およびM16A1はアメリカ軍の現役を退いているが、A1の方はイスラエル、フィリピンで今も制式小銃として使用されている。
M16の直系は今現在でも進化を続けており、M16A2の発展型フルオートモデルのM16A3、フラットトップレシーバーを採用したM16A4、2000年代以降に主力歩兵銃となったM4/M4A1カービンがある。また、A1のショートモデルバリエーションにはXM177や9mmパラベラム弾仕様(要は短機関銃化)のM635などが存在する。本銃を向けられたベトナム人民軍でもベトナム戦争後大量に残されたM16をリビルドしたカービン銃、M18を特殊部隊を中心に運用している。
構造 †
先述した黎明期の悪評と、基本システムであるDI方式のガスオペレーションにより、AK47との対比で「命中精度が良いが信頼性の低い繊細なライフル」と評されることが多いが、意外にも砂や泥には強い。AK系はダストカバーを兼ねたセレクターレバーが発射位置にあると、コッキングハンドルのスリットが無防備となり、異物が侵入しやすくなる。これに対してAR15は、ダストカバーが安全装置に関係なく開閉可能で、カバーが開放状態でも(ホールドオープンしていなければ)排莢孔を前進位置のボルトキャリアがぴったりと塞ぐ。更にガスシステムの余剰ガス排出孔が排莢孔に露出したボルトに備えられていることもあって、少々の異物が排莢孔及びボルトに付着しても吹き飛ばすことができるのである。
右手でグリップを握ったまま操作できるセレクターレバーとマガジンキャッチを備え、素早いリロード操作を可能にするボルトキャッチ機構とボルトリリースボタンを持つなど、各種操作系の完成度も高い。
生産性も高いが、主材質であるアルミニウムを充分な強度に加工するにはある程度の設備・技術力を必要とするため、何処の国でも製造できる訳ではない。それゆえ、幸か不幸かAK47の様に第三世界で野放図に大量生産される事は無かった。
開発当初は底が斜めになったストレートの20発入りマガジンが標準だったが、ベトナム戦争以降は湾曲した30連マガジン(上掲画像)に代わっている。これは1988年に行われたミハイル・カラシニコフとストーナー氏の対談において、ストーナー氏自身が「べトコンが使うAK47のマガジンに触発されて急遽開発した」と語っている。これらはいずれも、同じ弾数を装填した7.62mm弾のマガジンに比べ軽量であるため、兵士一人当たりの弾薬携行量に優れる。
民生AR-15 †
先述の通り、1983年にコルト社の特許が切れた後は、AR-15(M4)系列がアメリカの民間銃器業界で一大市場を築いている。
老舗メーカーから個人ガレージまで多数のサードパーティによってクローンやアフターパーツが製造・販売され、その種類たるやアフターパーツだけで一挺組み立てられるほど豊富で、ユーザーが自分好みの銃を容易に仕上げることができる。マグプル社のPMAGのような軍に大量採用されている高性能なものから、ボルトアクション化、前装式化、クロスボウ化、果ては空き缶発射型アッパーレシーバーなどのゲテモノ製品も存在する。*4。アメリカ軍が発展型M4カービン計画用に既成の民生AR-15パーツを用いる予定があった(結局キャンセルされたが)ほど成熟した市場である。
その普及率故に犯罪に使用されることも多く、銃規制がらみの話題に上りやすい銃でもある。民生型はフルオート機構が廃されてはいるものの、疑似的なフルオート連射を実現するアフターパーツなども存在している。
2019年9月、コルト社は国内の民生型AR-15が過剰供給状態にあるとして民生型の製造中止を発表している。言及は避けているものの、度重なる乱射事件を受けて自動小銃の販売を自粛する小売店が増加していることも理由のひとつのようだ。
余談 †
日本では漫画『ゴルゴ13』の影響から狙撃銃と勘違いされやすい銃でもある。とはいえ前述の通り比較的高精度かつカスタムパーツも豊富であるため、狙撃用カスタムモデルや、AR-15をベースとした狙撃銃も多数実在する。
なおゴルゴ13の銃も、第一話から通常の口径5.56mm弾ではなく「ロング・マグナム特殊弾丸を用いるアーマライトM16変形銃」と明言されてはいる。
各種バリエーション †
モデル名 | 特徴 | 発射形式 |
AR10 | M16シリーズの大元。口径は7.62mm×51。別項参照 | S/F |
---|
AR15 | 大口径のAR10を.223口径に改修したもの |
---|
M16 | 米空軍採用のAR15 |
---|
XM16E1 | 陸軍の要求により、ボルトフォワードアシストノブを加えた、A1への布石とも言うべきモデル |
---|
M16A1 | 上記モデルを元に更に改良を加えたモデル。枝などに引っ掛かり易い三叉フラッシュハイダーをクローズドな鳥篭形ハイダーへ変更した |
---|
M16A2 | 別項参照 | S/3 |
---|
※この他の主なバリエーションモデルに関しては『コルト AR15 バリエーション』を参照※
転載に関しては、転載元の転載規約に従って行ってください。