ゴリラ / Raw Deal †
1986年、アメリカ映画
監督:ジョン・アーヴィン
・ストーリー
FBI捜査官時代のトラブルで、田舎の保安官事務所に左遷されたマーク(アーノルド・シュワルツネッガー)。ある日、元上司のハリーからFBI復帰を条件に、シカゴマフィアに潜入捜査をしてほしいと頼まれる。
依頼を承諾したマークは、偽装事故で自らの存在を抹消。ジョセフ・P・ブレナーという別の人物になりすまして、暗黒社会に身を投じるのだった―――
・解説
『ターミネーター』でブレイクを果たしたとはいえ、シュワルツネッガーがまだ、シルベスター・スタローンの後塵を拝していた頃の一作。原題の“Raw Deal”とは、日本語では「やくざ者」に相当する隠語だが、邦題はおそらく、同時期に公開された『コブラ』を意識したものと思われる。
ただし、本作はいわゆる「潜入捜査官」を扱っており、作風は大きく異なる。まだ駆け出しで演技はぎこちないものの、オールバックにして暗黒街に潜入したシュワルツネッガーのダーティな振る舞いも、他ではなかなか目にかかれない。銃撃戦だけではなく、『ゴリラ』の邦題にふさわしい派手な格闘シーンも見どころのひとつである。
なお、シカゴマフィアのドン、パトロヴィータを演じるサム・ワナメイカーは、奇しくも(?)シカゴの出身だが、1950年代、映画界にも吹き荒れた“赤狩り”の嵐に追われて英国に脱出。アメリカ出身でありながら、キャリアの大部分を英国で過ごしたという逸話を持つ。
1980年代に入って、TVムービーを主に徐々にアメリカ映画にも復帰し始めていたが、本作はワナメイカー晩年の代表作の一つとなった。(1993年、英国・ロンドンで死去)