弾帯 / Bandolier & Ammunition belt & Driving band

 日本語としての呼称は弾帯であるが、実際にはまったく性質の異なる3つの物品を意味している。
 英語では以下のようにそれぞれ区別して呼称されているので、区別して呼称する必要がある場合はこちらを用いた方が判別し易い。

1.弾薬を携行するための帯状の装具。バンダリア(Bandolier)。

2.機関銃などの自動火器へ弾薬を続けざまに供給するために、弾薬を帯状に纏めたもの。アムニッションベルト(Ammunition belt)。

3.弾頭の側面に巻き付けられた、ライフリングに噛み合わせる帯状の部品。ドライビングバンド(Driving band)。

1.バンダリア(Bandolier)について

 弾薬やマガジンを差すスロットやポケットを設けたベルト。それを腰に巻いたり襷掛け、あるいはサスペンダーと併せて前掛けのように着装することで弾薬を携行する。
 かつてはベルトのスロットに1発ずつ弾薬を格納したものを弾帯(Bandolier)としていたが、弾薬をマガジンに装填して携行するようになると、マガジンを格納するスロットやポケット、ポーチを備えたものも含めるようになった。
 腰巻タイプではホルスターや鞘をベルトに設けて拳銃やナイフなど多様に携行する場合もあり、こちらは「ピストルベルト」「ガンベルト」「ウェポンベルト」などと呼ばれることがある。

 材料としては皮革や綿の帆布が主流であったが、湿気によるカビや型崩れ、収縮といった問題があった。近年ではこういった心配の少ないナイロンなど合成繊維で作られたものが広く用いられている。

 歴史は古く、マスケット銃時代には革製ベルトに一発分の火薬と弾を収めた筒を吊り下げ、襷掛けして運ぶものが存在していた。
 弾薬の発明直後の単発ないし固定マガジンが主流の時代には一発ごとの弾を素早く取り出せ、かつ大量に持ち運ぶ手段として弾帯が使われるようになる。クリップを収めるためにポーチ状の弾帯も存在していた。
 珍しい例としては、プトー砲として知られている1916年式37mm歩兵砲では、弾薬箱の底に末端が固定された布製ベルトに37mm砲弾が連なって収納されていた。
 現代では脱着マガジンの銃を使う場合、原義的な弾を1発ずつ格納するような弾帯を使うことはほどんどないが、単発式・固定マガジン式が多いショットガンや手動式ライフルグレネードランチャーを用いる際には共に使われている事がある。

2.アムニッションベルト(Ammunition belt)について

 ベルトリンク(Belt link)など、あるいは単にベルト(Belt)リンク(Link)とも呼ばれる。
 機関銃や機関砲、自動擲弾発射器などの自動火器へ弾薬を続けざまに供給するために、弾薬を帯状に纏めたもの。あるいは、その為に弾薬を帯状に纏める為の部材そのものを指す。

 マガジン式に比べ、数百発の弾薬をリロードなしに発射し続けられることから、機関銃のようなフルオートマチック火器で一般的な給弾装置となっている。ベルトの長さも容積や重量などを許容出来る範囲に限りいくらでも増やす事ができる。一方で、銃と弾薬箱の間で弾薬が露出していることから、ジャムの原因となる塵芥によって汚損しやすい。また、ベルトリンクのリロードは、基本的にクイックデタッチの着脱マガジン式と比べ、作業に時間を要する。
 第二次大戦以前は重機関銃の基本的な給弾機構だったが、ドイツのMG34の成功により、第二次大戦以降は汎用機関銃をはじめとする軽機関銃でもベルトリンクが採用されている。

 ベルトリンクには、帆布などの布製と金属製の2種類が主だが、バンダリアと同様に帆布は湿気の影響を受けやすく、また銃の内部へと帯が繰り出されて弾薬を供給する為に、湿気で収縮したり、カビや虫食いなどで欠損すると動作不良の原因なるため、現代では金属製が主流となっている。
 また、金属製に比べて布製の方が製造が容易と思われがちだが、実際には布製でも頑丈な生地を精密に縫製する必要があり、機関銃の製造は出来たのに布製ベルトリンクの製造が出来ずに輸入に頼った事例もある*1
 近年は樹脂製のベルトリンクも登場している。ウクライナのRAROG社がPK軽機関銃用に2017年に開発したもので、重量は金属製リンクに比べ3分の1と軽量であり、製造コストも安価となっている。一方で耐久性に関してはメーカーが使い捨てでの使用を推奨しているほか、2022年のロシアによるウクライナ侵攻で実戦に供された際には移動時の振動に耐えられず割れるなどのトラブルが報告されており、強度は樹脂であるがゆえに金属よりも劣るようだ。また錆による劣化は無いものの、加水分解や紫外線による経年劣化のリスクは他の樹脂製部品と同様に懸念される。

 ベルトリンクから弾を分離する仕組みにも違いがあり、引き抜き式(Pull out – Push through)押し込み式(Push through)の2種類がある。
 引き抜き式はベルトリンクから弾薬を後方へ引き抜いてから薬室のある前方へと押し込む方式。近代機関銃の始祖的な存在であるマキシム機関銃をはじめ、現役のブローニングM2重機関銃でも見られる方式である。
 後退するボルトによってリンクから引き抜かれた弾薬は、カムなどの働きでボルトフェイスへスライドしたのち前進するボルトによって薬室に装填される。発砲するとそのエネルギーによってボルトは再び後退を始め、上部のリンクから新しい弾薬と下部の薬室から空薬莢を同時に引き抜く。つまりボルトには上下二つの薬莢を同時に掴むサイズが必要となるため、機関部は複雑で大きく重量もかさむこととなる。ベルトリンク給弾がMG34以前には重機関銃でしか見られなかった所以である。
 押し込み式は基本的にリムレス弾薬を前提とし*2、ベルトリンクの弾薬を前進するボルトがリンクから薬室へ直接押し込んで給弾する方式。MG34ではGurt33という非分離式のΩ型金属リンクを用いることで実現した。ボルトとそれによって押し出される弾薬がΩ形リンクの空隙を広げることによって、弾薬をリンクから分離する仕組みだ。ボルトに弾薬をスライドさせる機構や薬莢を2つ保持させるサイズが必要無く、機関部をより小さく軽量にまとめやすい構造であることから、『ベルトリンク給弾の軽機関銃』が可能となった*3
 ベルトリンクは絡まったり捻じれたりすると給弾不良を起こすため、機関銃の装填手が捻じれないよう補佐することもある。またベルトリンクを収めるための箱やキャンバスバッグのような容器を設えることでこういったトラブルを防ぐ事ができる。これらはあくまでベルトリンクを収めておくだけのもので、基本的にマガジンのような弾を送り出すためのバネやゼンマイといった動力は無い*4。また対空射撃や市街戦、山岳戦など、高所に対して高い仰角をとって射撃をする事があるため、このさいベルトリンクが捻じれてしまわないよう、容器は直接固定するか銃架のマウントを介すなどして銃本体の動きに追従する設計が一般的である。また軽機関銃では単純に携行性を向上させるため、銃へベルトリンクの容器を固定する事が求められるが、FN MAGのように容器の固定が困難な場合もある。そのため、機関銃手がバンダリアのようにベルトリンクを体に巻き付けて運んでいる例がしばしば見られる。

 ベルトリンクを組み上げる方法としては道具を使わず手作業によっても可能だが、基本的に数百発もの量を組む必要があるため「リンカー(Linker)」と呼ばれる器具を用いる事が多い。リンカーには大型だが連続的に組み込みが出来る回転ハンドルタイプと一定弾数ずつしか装填が出来ない代わりに小型なスライドタイプが存在している。

 ベルトリンクの構造によっても非分離式半分離式全分離式といった3つの分類があり、以下にそれぞれの特徴を挙げる。

非分離式

 非分離式は初弾から最終弾までのベルトリンクが一つながりで途切れないようになっている。ベルトリンク発明時からある形式。
 ベルトリンクの全ての弾を撃ち切るまで、銃から空のベルトリンクがぶら下がって取り回しを悪くしてしまう欠点があるが、ベルトの再利用が容易に出来、また逆にベルトリンクから弾を抜いてもベルトリンクが切れる事がない。
 布製ベルトリンクや初期の金属製ベルトリンクに見られた構造である。

半分離式

 半分離式は非分離式のベルトを数発分ずつ分離するようにして、数発分だけ射撃するごとにベルトが外れていくようになっている。非分離式の1種として扱われる事が多い。
 この為、非分離式のメリットをほぼそのまま残しつつ、射撃後のベルトがぶら下がって取り回しが悪いという欠点をある程度改善している。また後述の全分離式にある欠点もある程度軽減している。
 ベルトが何発ごとに分離するかで性質が大きく変わる形式で、長いものでは50発ごとに分離するもの、逆に短いものでは3発ごとに分離するものがある。
 MG34のスタータータブから250発全てまでが非分離式で嵩張ったGurt33ベルトリンクを、スタータータブを別体としてベルトリンク自体も25発ごとに分離するようにしたGurt34ベルトリンクがその端緒となる。
 MG34とベルトリンクを共用するMG42や、このアイデアに影響を受けたRPDPKなど東側の金属製ベルトリンクに見られる構造である。

全分離式

 全分離式は弾薬の1発1発ごとにベルトリンクが分離するようになっており、射撃の度に1発分のベルトリンクが銃から排出されるようになっている。
 この為、リンクや薬莢を使い捨てにする限りにおいては、射撃後のベルトリンクがぶら下がって取り回しが悪いという非分離式の欠点を完全に克服している。その一方で、徹甲弾曳光弾などの弾種を入れ替えもしくは比率替えなど再び弾薬をベルトリンクに組み込むには、バラバラなベルトリンクを組みながら弾薬を挿していかなければならないという欠点がある*5
 またベルトリンクの1つ1つが空薬莢よりも小さな金属片のようなもので、射撃によってこれが周囲に飛散してしまうため、再利用する場合には回収の手間が増えたり、小さなベルトリンクが銃の機関部や他の機器の隙間に入り込んで動作に支障を発生させる危険性がある。
 M60ミニミなど西側の金属製ベルトリンクに見られる構造である。

補足・保弾板

 ベルトリンクに似たものとして、保弾板、フィードストリップ(Feed strip)式と呼ばれる給弾方式がある。
 これは金属板に弾薬が嵌まるスロットを設けたもので、基本的には板であるために銃から突出して嵩張り易く、ベルトリンクと比べて多弾数化が難しい、マガジンと違い弾薬が露出しており汚れに弱いという、ベルトリンクとマガジンの両方の欠点を併せ持っていたため廃れた方式となっている。数少ない長所としては、金属板に弾薬が嵌まるスロットをプレス加工するだけで製造できるためマガジンやベルトリンクに比べて生産性に優れていた事、当時主流だった布製ベルトリンクと比べて湿気に強い点が挙げられる。
 とはいえホチキス機関銃で3発ごとに屈曲するようにした、金属製ベルトリンクの始祖ともいえる形式も作られており、欠点が目立って廃れたとはいえ歴史的には重要な給弾方式である。

3.ドライビングバンド(Driving band)について

 弾頭の側面に巻き付けられた、ライフリングに噛み合わせる為の帯状の部品。
 ライフリングの捩れを弾頭に伝達して旋転させる効果の他に、弾頭と銃身の隙間を弾帯が潰れながら埋める事で隙間から火薬の燃焼ガスが漏れる事を抑制し、エネルギー効率を高めると共に銃身の腐食を低減する効果がある。
 弾頭の外殻となる被甲に柔らかい銅や銅合金を用いている、あるいは柔らかい鉛が剥き出しな小口径弾薬では、被甲や鉛そのものがライフリングへ十分に噛み合うために弾帯が採用される事は稀だが、硬い鉄や鋼を弾殻として、あるいはこれらの無垢で用いている大口径弾薬は単体ではライフリングへ噛み合わせる事が困難なため、銅や銅合金、軟鉄などで作られた弾帯を弾頭の側面に巻き付ける事が一般的である。
 こういった性質のため本サイトで扱っている火器の弾薬に採用されている事は希だが、MG131M61などに使われる機関砲弾には採用されている。


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  • 記述が物足りなかったので色々追加しました。半分離式のお初はGurt34よりも前例があるかもですが、そこまで掘り切れてないので詳しい方の修正をお願いします。 -- 2022-02-20 (日) 02:31:04
  • ダミーカートとM27ベルトリンクを手作業で繋げてる人のブログがあったので、全分離式でもモノによっては一応手組は可能では?ttps://shinchanfareast.militaryblog.jp/e953194.html -- 2022-02-24 (木) 00:30:14
  • 情報ありがとうございます。非分離式より手間が掛かる、というような記述に修正します。 -- 2022-02-24 (木) 04:04:54
  • 1つ目のバンダリアは「ガンベルト」という呼称というか名称もありませんでしたか? 昔見た西部劇映画でガンベルトと登場キャラが言っていたのを覚えています。それと最近読んだ「ようこそ女たちの王国へ」(年代的に南北戦争頃を舞台としたウェン・スペンサー著作の全年齢貞操逆転商業小説)でガンベルトという表現がありました -- 2022-02-25 (金) 19:58:43
  • ↑その『ガンベルト』は「銃器を運ぶベルト」(「ピストルベルト」「ウェポンベルト」)とは全く違うような表現でしたか?純粋に弾を運ぶベルトとしての意味でしたか? -- 2022-02-25 (金) 23:06:18
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*1 日中戦争での中国はMG08をライセンス生産していたが、布製ベルトリンクを国産できずにドイツとアメリカから輸入していた。
*2 例外としてチェコのVz.59と中国の67式汎用機関銃はリムド弾薬である7.62mm×54Rを使用しながらも押し込み式を採用している。
*3 この点において引き抜き式のままで軽量なPK軽機関銃はかなり画期的である。
*4 一部の航空機搭載機関銃などで、長大なベルトリンクを銃から遠い位置に置かれた弾薬箱に収める運用をする場合は、ベルトリンクの経路の途中にブースターと呼ばれる電動モーターによる給弾補助装置を備える場合がある。
*5 前述のリンカーを用いれば解決できる欠点ではある。

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Last-modified: 2024-03-27 (水) 01:56:40 (257d)