5.56mm×45弾

 1957年にアメリカのスプリングフィールド造兵廠で開発された.223レミントン弾 (.223 Remington)、またはこれを元にベルギーのFN社が開発したSS109などに代表される弾薬規格。
 サイズは厳密には同一ではないものの、いずれも口径5.56mm、薬莢長45mmである。

 米軍による弾薬の有効性に関する調査により、近距離においては大口径低速弾と小口径高速(SCHV、Small Caliber High Velocity)弾の与えるダメージにはほとんど変化が無いことが判明した。それならば弾薬を小型化することで「弾速の増加(着弾までの時間の短縮、弾道のフラット化、貫通力増加などに関わる)」「反動や誤射の低減」「携行数の増加」といったメリットを得る事ができる、という理念のもとに開発されたものである。

 .223レミントン弾は、実測では0.222インチとなっている。実測値と違う数字と開発元でない名前が冠されたのは、類似口径の弾薬との誤認を防ぐためと、ベースとなった.222レミントン弾の改修版であることを示すためである。.223レミントン弾開発時には、他数社が同様の小口径ライフル弾を開発し、トライアルが行われたが、最終的に.223レミントン弾が米軍の制式弾薬"M193"として採用された。
 その後、この規格の弾薬をNATO標準とするに当たって、NATO各国にとって平等となるようミニミ軽機関銃の20インチ銃身に最適化された、FN社のSS109弾が選ばれ、'5.56mm×45 NATO弾''として1980年に現NATO制式弾薬として採用された。こちらは米軍では"M855"の名で制式採用され、1989年に発表されたM16A2はこのM855(SS109)に合わせて設計された。

 しかしSS109には設計上の問題が幾つかあり(詳細はグリーンチップの項目を参照)、湾岸戦争以降の交戦距離が長くなる戦場では威力・射程が不足する問題を露呈した。また、米軍では市街戦用に短銃身のM4カービンを一般歩兵にも支給するようになり、フルサイズのM16に適応していたM855では、初速が落ちることによる威力低下や、発射ガスが燃えきらないことで機関部が汚れやすくなる、といった事態も引き起こされた。
 これらの問題にアメリカ陸軍は新型弾薬「M855A1 EPR(Enhanced Performance Round)」を開発。また、海軍・海兵隊は「Mk318 SOST(Special Operations Science and Technology)」を開発している。
 加えて、米軍ではACOG(Advanced Combat Optic Gunsight)を大量に配備した*1結果、弾自体の威力不足ではなく「撃った弾が当たっていなかった」事も判明した。

 .223レミントンと5.56mm×45NATO(SS109とそれに準じる弾薬)は薬莢・弾頭寸法自体は同じだが、薬室のスロート長さや最大火薬圧力、ツイストレートに差がある。.223レミントンの方が低圧力を規定されているため、.223レミントン用の銃で5.56mm×45NATOの発射は危険である。逆の場合は発射自体は安全に行えるものの、.223レミントンの最適な環境でないため多少精度が落ちる。民間用ライフルで.223 ワイルド(Wylde)を使用弾薬にしていしているものがあるが、このような弾薬があるわけではなく、.223レミントンと5.56mm×45NATOの両方で性能を落とさない仕様であることを示している。

 新型弾薬とACOGの普及により、米軍内では5.56mm弾への不満は大幅に減少した。2016年現在では、アメリカ以外のNATO各国でも米軍同様、SS109の問題を解決する為に独自の弾薬を開発・採用し、ライフル自体もそれに最適化された国が多くなっており、結果として規格としては同一であるものの、弾薬の共用面での問題を抱えている状況である。

 5.56mm×45弾については国内外問わず「あえて敵を殺傷せず、手当てに人員を割かせる事で敵の戦闘力を削ぐよう設計されている」「着弾後に横転する事で体内を切り裂く設計である」などといった解説が多いが、いずれも後述の威力問題などから後世創作されたもので、事実ではない*2

モデル弾頭重量銃口初速初活力
M193(.223レミントン)3.56g(55gr)993m/s(3,260ft/s)1,755J(1,294ft-lbf)
M855(SS109)4g(62gr)948m/s(3,110ft/s)1,797J(1,325ft-lbf)
M855A14g(62gr)961m/s(3,150ft/s)1,859J(1,371ft-lbf)

※データはすべて20インチバレルから発射した際のもの


※データは https://en.wikipedia.org/wiki/5.56%C3%9745mm_NATO からのもので、あくまで一例です。
弾薬の種類や製造元、発射する銃によって数値は異なります。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ガリル初期型 ⬇M16A2が発表されたのは1984年だったか1986年だったかの筈 注釈2 -- 2015-09-14 (月) 20:06:10
  • 現NATO弾は、民間でも販売しているんですかね? よく5.56mmNATOとかグリーンチップの名で、大手企業が販売していたりしますが…… -- 2015-09-14 (月) 23:57:16
  • 最初から民間向けに製造してる物と、軍での保管期限切れ(使用期限とは別)の放出品の2種類が販売されています。 -- 2015-09-15 (火) 00:13:08
  • M855A1に統一されたのは、MK318とかだと使える銃が限られるから? -- 2016-09-03 (土) 06:30:17
  • 弾丸の説明ページは地味にありがたい。 -- 2016-09-03 (土) 09:37:13
  • ほとんどは口径のページに飛ばされるしね -- 2016-10-13 (木) 15:28:51
  • 表記が5.56×45mmではないのは何故? -- 2020-03-02 (月) 18:31:07
  • 単にここのサイトは昔はその表記が多かったためですね。比較的マイナーですが間違いというものでもなく、現在でもH&Kなどのメーカでも使用されています。 -- 2020-03-02 (月) 19:06:13
  • 現行の5.56×45mm NATO弾は海上コンテナ(40フィート・ドライコンテナ)を貫通できるでしょうか? 空の状態でも2.6〜3.7トンもあって、海上の輸送に適応した頑丈さなら、見た目以上に外板は厚みがあるのでは。映像作品のようにコンテナを盾にすることは可能ですか? -- 2021-04-28 (水) 19:08:18
  • 板厚1.6〜2mmしかないから現行のM855A1じゃなくても余裕だと思う。というか5.56のフランジブル弾でも貫通してる動画がある。ttps://youtu.be/NP0_A65eJWg -- 2021-04-29 (木) 11:39:05
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*1 敵味方を識別しやすくして誤射を防ぐ、という目的もある。2000年代前半では近距離向けのダットサイトやホロサイトが主流だったが誤射が多発していた。
*2 表現上の残酷さをあえて狙ってのことか、こうした表現は小説作品などでは特に頻繁に見られる。日本では筒井康隆や伊藤計劃の作品など。

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Last-modified: 2024-09-02 (月) 20:15:35 (35d)