7.62mm×51弾 †
1950年代から使用されている小火器用弾薬。5.56mm×45弾よりも長距離での効果が高いため、機関銃や狙撃銃に採用されている。80年代までは主力小銃用としても多くの国で使われていた。
民生用としては.308ウィンチェスター弾がある。同じものとして紹介されることもあるが、実際には規格が若干異なっており、混用により生じる問題については議論がある。
1940年代にアメリカでフルオートライフルの開発計画が持ち上がったことにより、付随して銃弾の小型化が検討されたのが開発の始まりである。薬莢がより短い.300サベージ弾が参考にされ、当初の試作品は薬莢長が47mmと今より短いものだった。
しかしながら当時主力だった.30-06弾よりも射程が短くなることに軍が難色を示したため、同等の性能を実現できるように薬莢長が延長され、7.62mm×51弾となる。薬莢全長が.30-06弾よりも短いのは装薬の性能向上によるところである。
この旧態依然とした設計に、規格を統一しなければならないNATO加盟国からは反発があった。
イギリスはフルオートライフルには従来通りでは反動が過大であると考え、小口径の.280ブリティッシュ弾を開発しており、ベルギー、カナダもこれに興味を示していたが、アメリカは射程低下を拒み7.62mm×51にこだわった。
アメリカを説得するためにイギリス、ベルギーは.280の威力を増強する改良案を提示したがアメリカは一切譲歩せず、最終的にはカナダがアメリカに倣う意向を示したことによりNATO弾は7.62mm×51に決定する。
結局のところイギリスの懸念は正解であり、直後に始まったベトナム戦争で、アメリカ軍は7.62mm×39弾のAK47を装備する北ベトナム軍に対し苦戦を強いられる。7.62mm×51弾は反動が大きく、携行弾数も少なく、またこれを使えるM14は長く重くなった。ベトナムで頻発したジャングル戦では取り柄の射程も活かせず、欠点ばかりが目立つ結果となる。
実戦により問題が明らかになったこともあって、アメリカは小口径軽量弾の主力化へと大きく舵を切り、1964年から5.56mm×45弾を使用するM16への置き換えが始まってしまった。
一方で7.62mm×51弾は5.56mm×45弾よりも長距離において効果的であるため、冒頭で書いたように機関銃、狙撃銃での需要は残り、現在でも使用されている。
また小銃用途としても、21世紀に入ると開けた環境が多い中東での戦闘が増えたことで長射程の7.62mm×51弾のM14が重宝された。また反動軽減技術が向上したこともあり、アサルトライフルのバリエーションとして7.62mm×51弾のフルオートライフル(バトルライフルを参照)も開発されている。
またM855A1の技術を応用したM80A1弾薬も開発されており、従来のM80弾よりも高貫通力と長射程化、そしてレッドフリー(毒性の強い鉛の廃止)化を達成している。
自衛隊は「M80普通弾」として同規格を採用した。また小銃用として装薬を減らした減装薬弾も開発しており、64式小銃、62式機関銃は常装弾、減装弾の両方に対応している。
モデル | 弾頭重量 | 銃口初速 | 初活力 |
M80 | 10g(147gr) | 833m/s(2,733ft/s) | 3,304J(2,437ft-lbf) |
long range BTHP | 11g(175) | 790m/s(2,580ft/s) | 3,586J(2,586ft-lbf) |
M80普通弾(減装) | 10g(147gr) | 732m/s(2,401ft/s) | 2,679J(1976ft-lbf) |