ガス直噴方式 / Direct Impingement †
M16等に使われている、ガスオペレーション方式のひとつ。短縮して「DI方式」とも呼ばれる。
発砲時に生じるガスをバレル内からチューブによって機関部へ誘導し、直接ボルトキャリアへ発射ガスを吹き付けてボルトを後退させる動作方式である。
スウェーデンのリュングマン社製の自動小銃AG m/42によって初めて採用されたが、現在ではより優れたAR15タイプのDI方式が大半を占めるため、本項目では主にこのAR15タイプのDI方式の特性について説明を行う。
(これにちなんで、日本ではDI方式を「リュングマン方式」という造語で呼ぶ人もいるが、「リュングマン」は設計者ではなく社名であるため、現在はこの造語が使われることは少なくなってきている)
オリジナルのDI方式は密閉されたボルトキャリアをガスで外から押して後退させる、ピストン方式のピストンを省略したような動作方式であるが、AR15に用いられるDI方式では、穴の空いたボルトキャリアにチューブを繋ぎ、ボルトキャリア内部にガスを通して内側から押すことで後退させる。
この動作方式では、ガスはボルトキャリアに沿って動くため、ガスの流れが安定化することで動作の信頼性は向上しており、また余剰なガスは排莢口から勝手に抜けるため、ガス圧の調節も行いやすいという利点がある。
一般的なガスピストン方式と比べると、ピストンが無いため軽量化やフロントヘビーの低減に有利である。ピストンパーツがないため銃への負荷も小さく反動も減るため、ボルトアクションライフルほどではないせよ、高精度のバレルセッティングも比較的容易である。
また、ガスが通りさえすれば動作が可能であるため、ピストン式と異なりガスチューブを曲げたり丸めて配置することが可能な点は小型化において大きな利点である。実際に短銃身タイプのAR15ではガスを十分減速してから機関部に送るため、長いガスチューブをバレル周辺で巻いてから機関部へと接続するものも多い。
一方、発射ガスが直接ボルトキャリアを通るため、熱*1や汚れが溜まりやすいという欠点もある。もっとも、これは適切な射撃間隔やメンテナンスを維持していれば大きな問題となるレベルではない。初期にはAK47などと比較して大きく信頼性に劣る動作方式と噂されていたが、現代の対照実験ではそれほど大きな差は見られていない。
むしろ問題となるのは、ボルトキャリアから噴出するガスが射手に吹き付けやすい点である。特にAR15では、ガス量の多い弾薬を用いたり、サプレッサーを装着するなどして機関部の圧力が通常より高まると、チャージングハンドルとレシーバーの隙間からガスが噴出して顔面に直接当たるという現象が起こる事が知られている。これを避けるため、俗に「ガスバスター」と呼ばれる*2密閉性が高く隙間からガスを漏らさない構造のカスタム・チャージングハンドルも市販されている。