USSR AK-47 “カラシニコフ” / СССР АК-47 "Калашников" 【突撃銃】 †
モデル | 全長(折畳時) | 重量 | 口径 | 装弾数 | 連射速度 | 発射形式 | 製造国 |
AK | 870mm | 4,300g | 7.62mm×39 | 5/20/30/40/75/100+1 | 600発/分 | S/F | ソビエト連邦 |
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AKS | 870(645)mm |
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1949年にソ連に制式採用された自動小銃。後に「突撃銃」と分類される銃種の第一世代である。
制式名称は"7.62mm Автомат Калашникова(7.62mmカラシニコフ自動小銃)"、あるいは単にAK。後に登場する派生形と区別するため、完成年から主に「AK-47」と呼ばれるようになり、一般に広く定着している。
1942年、負傷後に転属した後方部隊で行った短機関銃の設計で才能を認められたミハイル・カラシニコフ軍曹は、戦後のソビエト連邦の優位を担う次世代小銃の開発を進める中央研究所へと配属される。1944年に7.62mm x39弾の制式化が決定されると、彼は大祖国戦争中に米軍から供与されたM1カービン、M1ガーランドなどを参考にしたライフルを1947年に完成させる。カラシニコフの銃はトライアルにおいて競合候補を下し、1949年に制式採用が決定、同年から配備が開始された。
専門・高等教育を受けていない新兵達にも取り扱いが容易な様に、なるべく単純、かつ頑丈に作られている。マガジンを単純な差し込み装填ではなく、前方の突起に引っ掛けて回し入れる固定力に優れる方式にしたのもその工夫の一つである。
ロシアが寒冷地である故に、冷え切った金属パーツに皮膚が張り付かないよう、ハンドガード等の地肌が触れる部分は木製パーツが使用されている。また生産性を重視し、たとえ生産状況が悪化して部品の品質にバラツキが生じた場合にも無理なく銃として組み上げ、機能できるように、部品間のクリアランスはあえて大きく取られている。
クリアランスが大きい=隙間が大きいため、少々の塵芥が侵入してもすぐ抜くことができる。さらに温度変化による金属の膨張/収縮にも対応できるため、寒冷地から砂漠地帯まであらゆる環境で作動し、弾詰まりが起き辛い。「水田の泥水の中に隠しても問題なく作動した」、「炎天下の砂漠で900発の連続射撃に耐えた」、「地面に埋められ錆びついた物を、錆びを落としたら問題なく作動した」、「塩水を浴び錆だらけの状態でも発射可能だった」など、その強靱さを語るエピソードには事欠かない。
操作も単純で子供でも簡単に憶えられ、訓練時間も少なく済むため、ベトナム戦争では多数の民兵がこのAK-47を使用した。こと“ベトコン”と呼ばれ、完全な民間人に扮装し、虚を突いた奇襲戦法をとる民兵組織は、アメリカ兵を散々なまでに苦しめた。挙句の果てには、当時まだ信頼性の低かったM16の代わりに、敵から鹵獲したAK-47を持ち歩くアメリカ兵まで現れる始末。冗談のようなエピソードだが、それだけ本銃が優秀である証とも言える。
こうした逸話によって本銃の耐久性能は神格化されがちなところがあるが、当然ながら「一切の整備が不要」というわけではない。何らかの衝撃でフレームが歪んだり、ボルト等の繊細な部分に異物が入り込めば流石に作動不良も起きる。特に粘度の高い泥は隙間からすぐに抜けないため、万一内部に入った場合は他の銃同様、しっかり清掃する必要がある。戦場で回収されたある個体では、整備を怠り続けた果てに集弾率が10MOAを超えるほど劣化していたという事例がある。
また意外な弱点として、ダストカバーがセイフティとセレクターを兼ねている点が挙げられる。発砲可能状態ではコッキングハンドルのスリットが無防備になり、異物が侵入しやすくなってしまうのである(ちなみにAR15(M16)はダストカバーが独立し、ボルトキャリアの密閉性も高く作られている)*1。
西側諸国の代表銃であるAR15(M16)と比較すると、弾道特性に劣る短小弾を用い、照準器も単純なタンジェントサイトで照準線が短い事もあり、セミオート射撃の集弾性能でやや劣る傾向にある(大口径ゆえにフルオート射撃の安定性では明確に劣る)。また、AR15が右手でグリップを握ったまま各種操作系にアクセスできるのに対し、こちらはグリップを離すか左手を用いる必要がある。
一方、生産性、整備性、悪条件下での耐久力など、軍用兵器に求められる信頼性については大きく勝っている。正規軍が運用する分にはM16やM4程度の信頼性で十分なレベルだが、正規軍とは違い満足なサポートを受けられない民兵やPMCには大きなメリットになっている。
「AKといえば頑丈だが精度が悪い」というステレオタイプなイメージは、母数が大きいために多数発生する劣化品や、違法コピーされた粗悪品の氾濫、そしてAR15(M16)との比較によって定着したものであり、実際のところはそれほど低精度の銃というわけではない。
現在、ロシア軍の制式突撃銃は、後継のAKMやAK74に更新されているが、旧共産圏の国々では未だ相当数の本銃が制式ライフルとして使用されている。
また西側諸国でも、SEALやSASといった特殊部隊では、ベトナム戦争当時から、敵地への潜入作戦時にこの銃を使用する隊員が少なからず存在した。上記のような強靱な耐久性と、西側標準の5.56mm弾を凌ぐ火力、弾薬の現地調達が容易(現地での購入や敵からの奪取による)などが主な理由である。他にも「独特の発射音で敵味方を誤認させやすい」「薬莢などの痕跡から自身の出自を推測させないため」「M16が閉所では長すぎて邪魔だから」という理由もあるようだ。
砂漠の過酷な環境にも強いことから、中東で活動するPMCのオペレーターの武装としても人気がある。
アメリカではブルガリア・アーセナル社、中国北方工業公司(ノリンコ)、ユーゴスラビア(現セルビア)ツァスタバ社のAKスポーターモデルが販売され、AWBが布かれた際には、サムホールストックの「スポーツ用」と銘打ったノリンコ製「MAK90スポーター」なるものも存在した。これは名称こそ違うが、少し手を加えれば(全自動の)AK-47へとなるため、コロンビアの麻薬カルテルの間でも好まれたと言う。
特に2016年以降では、米露間の関係悪化・経済制裁でロシアから正規品のAKシリーズが入手しずらくなったため、アメリカ国内でもセンチュリー・インターナショナル・アームズ社やインター・オーディナンス社などがAK-47を生産している。
世界ベストセラーということもあり、サードパーティのカスタムパーツ市場規模はAR-15にも匹敵する。光学サイトやレール付きハンドガード、M4タイプのテレスコピックストックで近代化されたモデルも見られるようになった。とはいえ、カスタム志向のアメリカでも「AKにアクセサリーを付けるのは邪道」と考えるユーザーも少なからず存在するらしい。
AK-47は比較的単純な構造で大量生産し易い事から数多くの亜種が世界中に氾濫し、現在もあらゆる戦場、あるいは密猟や犯罪の場でもその姿を見ることができる。
その独特なスタイルにはファンも多く、アートのモチーフとされることもしばしばである。珍しいところではアフリカのモザンビーク共和国では、解放闘争をともに戦った『戦友』として国旗にAKの図案を採り入れている(余談ながら、モザンビークでのとある式典の際にはカラシニコフ氏本人も出席している)。
一体どれだけの数が生産され、使用されているのかはもはや定かではなく、無節操なまでにコピーされたものを含めれば全世界中で5億挺はあるだろうと言われる。
ただ皮肉にも、資本主義社会の元でAR15を設計したユージン・ストーナーが巨額の富を得たのに対し、共産主義社会の人間であるカラシニコフ氏は名誉や勲章以外の個人的報酬は1ルーブルも受け取れなかった。
各種バリエーション †
モデル | 特徴 |
AK-46 | 1946年に完成した原型。操作系がレシーバー左側についている以外、構成はほぼそのままAK-47に受け継がれた |
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AK-47/I | 初期生産型。レシーバーはプレス加工で、マガジンの構造上給弾不良を起こしやすかった |
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AK-47/II | 中期生産型。レシーバー加工が削り出しに改められた量産品。生産数は少ない |
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AK-47/III | 後期生産型。現在最も見られるタイプで、1953年から東欧各地で大量生産された |
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AKS-47 | 上記AK47の空挺モデル。MP40に類似した折畳みストックを用いる |
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便宜上AK-46と呼ばれるプロトタイプの時点で、AK-47同様のガスオペレーション・ロータリーロック機構をはじめ、ほぼ現在の物と同様の機構を備えていた。
弾薬は7.62mm×41弾を使用し、セイフティと分けられたセレクターを備え、チャージングハンドルなどの操作系は左側に設けられていた点で違いがある。
トライアルのため、折り畳みストック型を含めた数挺が製作され、そのフィードバックからAK-47へと至る更なる試作型が製作された。
その他の主な後継・亜種・クローンモデルは『USSR AK バリエーション』の項参照。

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外部リンク †
・Kalashnikov AK-47 ムービー1
・Kalashnikov AK-47 ムービー2