USSR RPG-7 / CCCP РПГ-7 【対戦車擲弾発射器】 †
全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 製造国 |
950mm | 6.3kg | 85mm | 1 | ソビエト |
ソビエトが1960年代に開発した個人携帯可能な肩付け式対戦車/軽装甲火器。RPG2に改良を施し、命中率と射程の向上を図った物。
なおRPGとはロシア語の「Ручной Противотанковый Гранатомёт」の英語綴り「Ruchnoy Protivotankovyi Granatomet」の頭文字で、携帯式対戦車榴弾発射器の意。「Rocket Propelled Grenade(ロケット推進式榴弾)」の略称とされることもあるが、こちらは誤り。しかしなまじ意味が通るゆえ、広く後者の語で紹介されている。
弾頭と発射器の2つで構成されている点と、発射炎を後方に逃がすことで射手への反動衝撃を低減している点、発射器は使い捨てではなく、再度弾頭を装着する事で何度も発射可能である点はRPG2と同様である。固定サイトのほか専用の光学サイトも用意されており、弾頭も目的に応じてHE弾(榴弾)やHEAT弾(対戦車成形炸薬弾)などが用意されている。HEAT弾は、命中すれば300mm程の装甲を貫く威力を持つ。
発射の際は、引き金を引くことでまず弾頭尾の発射用火薬に点火し発射。弾頭は発射後10mほど慣性飛行した後、安定翼を開くと共に今度は推進用のロケットモーターに点火、目標に向けて再加速していく二段式である。これはロケット弾の噴射を射手に浴びせないための仕組みで、過去にドイツがパンツァーシュレックで採用した噴射ガス避けの防盾に比べ、携行性を犠牲にしない優れた設計であった。一方で、発砲時の後方噴射(バックブラスト)が激しく、しかも目立つため、扱いには注意が必要である。味方が噴射を被らないよう、発砲の前には後方に人がいないことを確認し、かつ発砲後は速やかにその場から移動しなければならない。
無誘導なので命中精度はさほど高くなく、一般的な必中距離は80m程度とされるが、熟練した兵士であれば、150mから最大で300m先の目標にも命中させられるという。直撃を狙う以外にも、時限信管を短時間で作動するようセットし、爆発によって広範囲へのダメージを与える使い方も可能である。
命中率が低いとはいえ、兵員輸送中のヘリにとっては、低強度紛争における最大脅威のひとつであり、映画『ブラックホーク・ダウン』でも描かれたソマリア・モガディシュの戦闘において、アメリカ軍のMH-60ブラックホークを撃墜したのも、このRPG-7であった。2001年からのアフガニスタン紛争中にも、アナコンダ作戦において、特殊部隊員を載せたCH-47チヌーク輸送ヘリが、着陸降下中にRPG-7による直撃を受け、2機が撃墜されている。
他のソビエト製兵器同様、構造が簡単かつ加工が非常に容易。そのうえ弾頭と発射器に分かれるので、かさばらず持ち運びにも便利である。そのくせ殆どの戦闘車両を撃破する威力を持つRPGは、国力の乏しい中小国家などでも大量に作られ、現在でも旧東側勢力やゲリラ勢力の主力対戦車火器として幅広く使用されている。
近年では装甲技術の向上によって戦車に対する優位性は低下したが、それでも対軽装甲/対陣地兵器として今なお世界各地の紛争地で使用され続けている。
様々な改良モデルも存在し、中でもD型は発射機を二つに分割できるようになっており、より携行性を高めている。現在ロシアで生産中のモデルは、有効射程を550〜700mに延伸したV2型と、D型の改良モデルD3型である。
弾頭も改良が続けられており、特にERA(爆発反応装甲)にも対応したタンデム弾頭を持つPG-7VRは、イラク戦争においてアメリカ軍のM1A1エイブラムス戦車の側面装甲を貫通した例を持つ。修理可能な程度の損傷だったが、携帯型対戦車兵器で、世界最強クラスの第3世代MBT(主力戦車)を一時行動不能に陥らせただけでも大変な「戦果」であり、今なおRPG-7が侮りがたい兵器であると見せつけた。
戦火と縁遠い日本においても、1996年の在ペルー日本国大使公邸占拠事件や、2001年12月に鹿児島県の奄美大島沖で発生した北朝鮮工作船事件*1などで直接関わっており、実物の映像も放送・報道された。イラク、アフガニスタンなどの紛争地域のニュース映像では必ずと言っていいほど姿を現し、映画などのメディア作品上でも、(もっぱら「悪役の使う武器」としての出演が主ではあるが)露出度の高い兵器であり、一般への知名度は非常に高い。
また近年、防衛省でも住友商事を通じて数挺のRPG7と弾薬を入手している。これは自衛隊の装備品ではなく、各種機材の対弾試験用と言われている。
現在ロシア軍は「RPG29」と呼ばれるタンデム成形炸薬弾を使用する対戦車擲弾筒を使用しているが、RPG29もまた、RPG7と同様にゲリラ等により幅広く使用されている。
各種バリエーション †
発射器モデル | 解説 |
RPG-7 | 基本型 |
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RPG-7V | 光増幅・パッシブ赤外線式暗視装置が装着可能になった型 |
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RPG-7V2 | 有効射程を550〜700mに延長した型。現在のロシアでの生産モデル |
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RPG-7D | 空挺仕様、砲身を2分割できるようになっている |
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69式ロケットランチャー (Type 69) | 中国のノリンコが製造したコピー 映画等でしばしばRPG-7の代用として登場するが、上部にキャリングハンドルが追加されているので容易に判別可能 他、バイポッドの追加、補助グリップの廃止など、相違点は意外に多い 69-1式は暗視照準装置を使用できるようにした型 |
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B41 | ベトナムで製造されたRPG-7 |
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RPG-7-USA | 米・エアトロニックUSA社が製造したRPG-7 その見た目はもはや別物であり、トリガーグリップはAR15A2タイプに変更され、M4用のフォアグリップやテレスコピックストックを装着している さらにピカティニーレールを左右上下に配置しているため、各種光学装備を使用することが可能である。現在はGS-777に名称が変更 |
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弾頭モデル | 開発年度 | 弾頭直径(mm) | 重量(kg) | 有効射程(m) | 装甲貫通力(RHA換算mm) |
PG-7V | 1961 | 85 | 2.2 | 500 | 260 |
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PG-7VL | 1977 | 93 | 2.6 | 500 | 500 |
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PG-7VR | 1988 | 64 / 105 (タンデム弾頭) | 4.5 | 200 | ERA + 600-700 |
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TBG-7V | 1988 | 105 | 4.5 | 200 | N/A (サーモバリック弾頭) |
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OG-7V | 1999 | 40 | 2.0 | 350 | N/A (対人榴弾) |
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武装商店様より素材を提供して戴きました。有り難うございます。
外部リンク †
・RPG-7 ムービー