スプリングフィールド M1 “M1ガーランド” / Springfield “M1 Garand” 【自動小銃】 †
全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 発射形式 | 製造国 |
1103mm | 4.32kg | .30-06 | 8 | S | アメリカ |
スプリングフィールド M1903の後継として開発された自動小銃。 制式名称は「U.S.Rifle Cal.30.MODEL1」だが、ウィンチェスター M1など当時存在した他の「M1」名称の兵器と区別するため、開発者ジョン・C・ガーランドの名前を取って「M1ガーランド」と呼ばれることが多い。
1936年にアメリカ陸軍の制式小銃として採用され、第二次大戦や朝鮮戦争でアメリカ陸軍の主力小銃として活躍。 第二次世界大戦では、諸外国が1発ごとに手動でコッキングを必要とするボルトアクション式の小銃を主力としていた中、コッキングを挟まず連続して8発撃てるセミオート射撃能力と、アンブロック(一括)・クリップと自動排出・自動閉鎖機構による素早いリロードにより絶大な威力を発揮した。気難し屋のジョージ・パットン将軍をして「俺はM1(ガーランド)以上の素晴らしい武器を見たこと無い」と云わしめた。
当時としては画期的な歩兵銃であったM1ガーランドだが、欠点もある。いずれもアンブロック・クリップの採用に起因したもので、まず、当時の主要な制式小銃と異なり弾薬を一発ずつ装填するのが困難なこと*1。ただし、実際の運用上で数発消費した際に、直接マガジン内のクリップに弾薬を継ぎ足すのはコツがいる上に時間がかかることから行われなかったようだ。フル装填したい場合は、ボルトを引ききったままレシーバー左側面のクリップラッチを押し込むことでクリップを排出したのち、フル装填済みのクリップを新たに装填するのが一般的だった。
またクリップと共に自動閉鎖機構にも難点がある。クリップをマガジンに装填するさい、ボルトに親指を挟まれてしまうことがたびたびあった。クリップをマガジンに押し込んだとき、クリップの初弾を親指が抑えたままであれば、ボルトはリリースされない。しかし親指を離した瞬間ボルトがリリースされるため、射手は素早く手を引っ込める必要がある。これをしくじってしまうと鉛筆が折れるほどのボルトの閉鎖力によって、ガーランド・サムと呼ばれる特徴的な負傷を親指の爪に残すことになった。このためクリップを押し込む際にはコッキングハンドルを掌(の手刀や小指球と呼ばれる部位)で抑えておくことで、ガーランド・サムを防ぐというテクニックが広く知られている。
そして、最も有名なのが弾切れになってクリップが自動排出されるさい、特徴的な甲高い金属音*2を発することである。これは近距離では再装填のタイミングを敵に知られるとして兵士には不評で、実際に現場からは敵の襲撃を招いていると苦情が殺到したため、プラスチック製クリップを導入するなどの解決策が練られた。もっとも、こうした解決策は終戦までに採用されることはなかった。また、逆にこれを利用して敵をおびき出す事が出来ると考えた米軍兵士も居たという。
しかし、戦後にドイツや日本の兵士を対象に行われた調査では、この排出音を聴いた事のある者、ましてこれを攻撃の好機と捉えていた者はほぼ居らず、第二次世界大戦の主要な戦場では、爆発などの激しい戦闘音のためほとんど認識されていなかった、というのが実態のようである。
もっともこの特徴的な音はメディアにおいては象徴的に扱われ、前述のような、様々な場面におけるギミックとして活用されている。
また、空挺部隊や戦車兵の護身用として銃身長を18インチに短縮した、折畳み式ストックの「M1E5」と従来のストックのままの「T26」が製造されている。大戦末期に15000挺のオーダーが出されたが、1000挺製造された時点で終戦となった。18インチ銃身モデルは「タンカー・ガーランド」の通称がよく知られているが、これは戦後に民間市場で販売された際につけられた名称である。
第二次世界大戦を象徴する銃とあって現在でもアメリカ国内では非常に人気が高く、2017年にはかつてフィリピンに供与された86,000挺を回収して政府の民間人用の銃火器訓練プログラム(CMP)に利用すると公表されている。その他にハンティング用に5連発化したクリップなども流通している。
自衛隊も64式小銃を制式採用するまで本銃を使用しており、特別儀杖隊である第302保安中隊ほか、ファンシードリル隊の儀仗銃として2018年まで使用されていた*3。またアメリカでも、一部の陸軍の士官学校やリクルーター*4に協力的な学校(特に公立の高校)で、整列や行進の際の姿勢矯正などの名目で、現在も使われているケースがあるようだ。
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外部リンク †
・Springfield M1 Garand
・US M1 Rifle (Garand) ムービー