Navy SEAL(Sea Air and Land):アメリカ海軍特殊作戦部隊 †
ベトナム戦争期にアメリカ海軍内に設立された特殊任務部隊。
前身は第二次大戦で水中での破壊工作や上陸支援などを行っていたUDT(Underwater Demolition Team:水中破壊部隊)であり、ベトナム戦争でもその有効性が認められSEALへと改編された。名前の「SEAL」は活動範囲である海空陸「SEA AIR and LAND」を繋げた造語であり、動物のアザラシ(Seal)とかけてある。
SEALを構成する作戦部隊はNSWG(海軍特殊戦グループ)と呼ばれ、現在、知られる限り1、2、3、4、11の5つのNSWGから成り、このうちNSWG1とNSWG2が、主力となる八つのSEALチームで構成されている。アメリカ西海岸のカリフォルニア州コロナドを本部とする、奇数番号のSEALチーム1、3、5、7がNSWG1を構成し、担当地域は全世界に及ぶ。東海岸のヴァージニア州リトルクリークに本部を置く、偶数番号のSEALチーム2、4、8、10はNSWG2を構成し、各チームがそれぞれ局地的な担当区域を持つ。ナンバー規則とグループの構成上の都合から、9は欠番となっている。NSWG3を構成するSEAL輸送チーム1&2はSEALチームとその装備を送り込むための、輸送やサポートを担うグループ*1である。
それとは別に抗テロを目的としているのが旧SEALチーム6であり、現在のNSWDG(海軍特殊戦開発グループ)、通称"DEVGRU(デヴグルー)"である。公式には米海軍の陸海空における特殊作戦で運用される戦術と技術の試験・評価・開発を行うとされているが、実際にはデルタフォースと共に、統合特殊作戦コマンド(JSOC)の指揮下で、米政府が公式には認めていない対テロ特殊作戦を行なっているとされ、部隊内部でも最も情報の統制が厳格で、秘匿性の高いチームとされている。
軍特殊部隊としてはSASと並んで最も有名な部隊であり、装備、人員、作戦遂行に可能な技術の全てにおいて世界最高であると同時に、訓練そのものは人間の限界を遥かに越えるほど過酷極まりないものであり、志願者の90%以上が選抜訓練の最終段階以前に脱落するとも言われている。
特に1日に4時間以上の睡眠時間は許されない第8週目の訓練期間は、“ヘルウィーク"と呼ばれるほどに過酷であり、志願者は階級による差別は一切無いため、時に死者が出ることもある。
一方、SEALへの入隊資格は階級による制限が無く、アメリカ海軍への志願条件を満たす者なら誰でも可能であり、選抜訓練をパスすれば海軍配属と同時にSEAL隊員となることもできる。グリーンベレーが陸軍の三等軍曹に満たない階級では志願できないのと対照的である。
また、創設以来から女性には入隊資格が無かったが、2015年以降は男性と同じ条件を満たせば女性も入隊が可能となっている。
パナマ侵攻や湾岸戦争、アフガニスタンのタリバン政権崩壊作戦や現在は泥沼化しているイラク戦争などの軍事作戦以外にも、対テロ作戦に従事する機会も多いらしい。そのため、通常の特殊作戦部隊の技能と同時に対テロの最精鋭部隊としても機能することが多くなってきたようだが、時として友好国や同盟国への対テロ作戦の技能供与に協力することがあるようで、海上自衛隊内部に存在が確認されている日本版のSEALであるSBU(特別警備隊)の訓練に影響を与えたようである。
また、2011年5月にはパキスタンで、国際テロ組織:アルカイダの指導者であり、9.11米国同時多発テロ事件等の首謀者とされるオサマ・ビン・ラディンを急襲し、暗殺するという成果を挙げている。
部隊の性格上、長くその活動は一般に知られることはなかったが、映画『ネイビー・シールズ』を皮切りに徐々に知名度が上昇。メディア作品への登場も増え、今ではグリーンベレーなどに替わってアメリカ特殊部隊の代名詞的存在となった感がある。
ベトナム戦争時代のタイガーストライプ迷彩の野戦服姿が有名なSEALだが、アフガニスタンではカルザイ大統領(当時議長)警護任務の際、カジュアルな服装でMk18を装備、警護に当たるSEALメンバーの姿も目撃されている。
新旧装備品 †
- ■SEAL出身の人物(実在)
- ウィリアム・シェパード (宇宙飛行士)
- エリック・プリンス(ブラックウォーター社創設者)
- クリス・オスマン(元シール・チーム3所属。装備メーカーTAG社創立者。「ネイビー・シールズ*2」著者)
- クリス・カイル(元狙撃手。「ネイビー・シールズ 最強の狙撃手*3」著者。2013年に死去)
- ドゥエイン・ディーター(ナイフメーカー「Master Of Defense」社長)
- チャック・ファーラー (映画「ネイビー・シールズ」脚本家)
- ハリー・ハンフリーズ (軍事アドバイザー)
- ハワード・E・ワーズディン(元DEVGRU所属狙撃手。「極秘特殊部隊シール・チーム・シックス*4」著者)
- マーカス・ラトレル (「アフガン、たった一人の生還」著者)
- マーク・オーウェン(仮名。元DEVGRU所属。『アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY*5』著者)
- マイケル・A・モンスーア (06年にアフガニスタンにて戦死。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦の艦名に)
- マイケル・マーフィー(05年にアフガニスタンにて戦死。アーレイ・バーグ級ミサイル駆逐艦の艦名に)
- リチャード・"マック"・マコウィッツ (元狙撃手、Future Weapons司会等)
- ローク・デンバー(映画「ネイビーシールズ」に出演)
- ■SEAL出身の人物(架空)