第9地区 / District 9 †
2009年、南アフリカ=アメリカ=ニュージーランド合作映画
監督:ニール・ブロムカンプ
・ストーリー
南アフリカ・ヨハネスブルグ上空に突如出現した巨大な宇宙船。着陸も攻撃もせず、ただ浮遊し続ける宇宙船の船内には、衰弱した多数の宇宙人がいた。彼らは侵略者でも救世主でもなく、宇宙船の故障で漂着した“難民”だった。
人類は彼らを救助し、暫定的な居住区「第9地区」に収容。巨大企業MNU社内に設けられた専門セクション「エイリアン対策課」に管理・警備を委ねた。しかし、外観、言語、習慣、全てがかけ離れた宇宙人達を、人類は“エビ”と呼んで蔑み、南アは新たな人種対立を抱えこんだ。
そして20年が経過。スラム化した第9地区の人口は180万人を突破。人類と宇宙人との軋轢は、解消するどころかますます深刻化し、宇宙人による犯罪が多発、近隣住民は宇宙人の追放を要求し始める。持てあました政府は、宇宙人達を郊外の新居住区に“立ち退き”(事実上の強制移住)させる方針を決定。MNUに宇宙人への立ち退きの説明と、承諾を取る任務を委任した。
責任者に任ぜられたヴィカス・ファン・デ・メルヴェ(シャルト・コプリー)は、サラリーマン的な気楽さで作戦の指揮を執っていたが、あるアクシデントをきっかけに彼の立場は一変。追う側から、追われる側へと逆転してしまう。肉体は徐々に宇宙人に近づいていき、行き場を失い、逃げ込んだ第9地区で、ヴィガスは世界を揺るがす一大事件の中心となっていく―――
・作品解説
第9地区で起きたある“事件”を振り返る、専門家などへのインタビューが挿入されるなどドキュメンタリー形式で描かれた異色の“ファースト・コンタクト”作品。白人政権下の南アフリカで起きた“第6地区問題”をヒントにしたとされ、アパルトヘイト(人種隔離政策)や、現在も続く移民・難民問題といった南ア(と人類)の暗部を、“地球人対宇宙人”の構図でえぐり出した、社会派の一面も持つ。
ミリタリー・マニア的には、南アが舞台ということで、ベクター R5やベクター CR21、ダネル NTWなどの、日本ではなかなかお目にかかれない南ア製の銃火器が多数登場する点が見どころ。中にはPAW-20といったレアな銃まで登場する。徐々に宇宙人に身体が変異していく主人公が、宇宙人にしか使えない数々の宇宙人の武器を使って戦う場面が特徴的。クライマックスではCGで描かれたAMR-D13エクソスーツを使う大戦闘シーンが描かれる。
銃火器や様々なSF兵器以外では、キャスパー兵員輸送車が見所の一つ。アパルトヘイト当時、反政府ゲリラの地雷攻撃に手を焼いた南ア軍が開発した装輪装甲車で、地雷の被害を極小化するための極端に腰高で、V字型の底面を持つ車体が特徴*1。後にイラク戦争で同様の地雷やIED(即製爆発装置)に苦しんだアメリカ軍も、本車を参考としたほか、直接の発展型であるバッファロー地雷除去車*2を採用している。
航空機では、ユーロコプター・EC130エキュレイユや、アエロスパシアル・SA330ピューマといった欧州系のヘリが大挙登場する。