レミントン M700 / Remington Model 700 【小銃(狙撃銃)】 †
アメリカのレミントン社が開発したボルトアクション式ライフル。現代的ボルトアクションライフルのスタンダードとも言える存在である。
1962年に登場した本銃は生産コスト、性能、耐久性のいずれも当時のライフルでは群を抜いており、今なお第一線で使われ続けている。全米のSWATの大半が本銃をベースとした狙撃銃を配備しており、アメリカ陸軍では1988年から『M24SWS』の制式名で、また同国海兵隊では『M40』の制式名でベトナム戦争のころから本銃のカスタムモデルを制式狙撃銃として採用している(それぞれの仕様差は下記のバリエーション表を参照)。
セミオートマチックライフルに比べて連射性こそ劣るものの、その代わりに高い集弾性を持つため「ワンショット・ワンキル(一撃必殺)」を旨とするスナイパーに好まれている。
イラク戦争においても、雑踏の中に紛れた相手を精密狙撃出来るほどの性能が発揮されたものの、近年では連射性の低さと装弾数の少なさゆえ、市街戦では適さないという報告がなされている。イラク戦争のファルージャの市街戦で、固定マガジンを使用していたため、マガジン内の弾薬を撃ち尽くしたアメリカ軍兵士が発砲する毎に1発ずつ弾薬を排莢口から装填しながら戦闘を続ける姿がニュースで流され、後に着脱式マガジンを採用することとなった。米海兵隊のスナイパーは、本銃とM9に加えて、自衛用に別途ライフル/カービンを携帯する必要があったほどだった。アメリカ海軍や海兵隊では、すでにセミオートスナイパーライフルの『Mk11 Mod0』との併用を行っており、同陸軍では同じくナイツ社製SR-25の発展型である『M110』を、M24SWSに替わる制式狙撃銃として採用している。
また一方、それまで簡易改造した64式小銃を狙撃銃として使用していた陸上自衛隊が、米陸軍のM24SWSを『対人狙撃銃』の名で2002年に採用し、2011年までに1118丁が調達されている。発生が懸念される市街地戦やゲリラの掃討作戦などに対応するべく、現在は本格的なスナイパー養成訓練が進行中であるが、米軍ですでに退役が進んでいるライフルを採用した*2ことも含め、正しい運用が行われるのかという疑問の声もある。調達価格は約61万円。2020年の総合火力演習ではM24A2が登場している。
とはいえ、米陸軍は結局、M110採用後もM24SWSを継続して購入し使用しつづけており、レミントン製M24A2やM24E1 ESRへのアップグレードも行っている。2010年にはM24E1 ESRを「XM2010」の名称でテストを開始し、将来的には新しい制式ボルトアクション狙撃銃として採用する見込みだ。
ちなみに米海兵隊で使用されているA1以降のM40シリーズは、海兵隊内で独自に組み立てられているモデルで、レミントン社は部品を供給しているのみとなっている。またレミントン社製M700のいずれのラインナップとも大きく異なる仕様となっている。
各種バリエーション †
モデル | 解説 |
M700P M700P-LTR (M700PSS) | 警察及び法執行機関向けモデル。 M700Pは26インチバレル、M700P-LTRは20インチバレル。 以前はM700PSS(Police Sharp Shooter)という名称で販売されていたが、現在はM700Pに改称。 |
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M24 SWS | HSプレシジョン社製の銃床とリューポルド社製スコープを装備し、 トリガーガードをアルミ製からスチール製に変更したもの。 バレルとボルトの変更で.300ウィンチェスターマグナムも使用可能なロングアクションと呼ばれるレシーバーを有する。 陸上自衛隊が採用したのはこのモデル。 軍用モデルだがアメリカ海兵隊のM40シリーズと違い、レミントンが製造。 |
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XM24A1 | .300ウィンチェスターマグナムを使用する試作モデル。試験時に不発が多く、不採用となった。 |
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M24A2 | M24をベースに、レミントンが独自に改修した軍・法執行機関向けのライフル。 内蔵マガジンから着脱式マガジンに変更、装弾数を10発と大幅にアップさせ、 新たにタクティカルボルトハンドルとMARS(Modular Accessory Rail System)と呼ぶピカティニーレールシステムをレシーバーに搭載し、 銃床を前後長と高さも調節可能なアジャスタブルストックに変更したもの。 |
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M24A3 | A2をベースに、新型のアジャスタブルストックを装着し、弾薬に.338ラプアを使用するモデル。 旧モデルと比べ、全長が約8センチ延長された。 |
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M2010 ESR | M24 SWSをベースに、使用弾を7.62mmNATOから300ウィンチェスターマグナムとし、 ストック/シャーシをレミントン社のMSRと同様のものに交換したもの。 既存のM24 SWSがすべてM2010と同仕様にアップグレードされる予定。仮制式時の名称はXM2010、M24E1 |
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M40 | 1966年に、当時のM700バーミントモデルを海兵隊が採用したもの。 .308ウィンチェスター弾に合わせたショートアクションと呼ばれるレシーバーを有する。 ウィンチェスター M70のトリガーガードを組み合わせ、レッドフィールド社製・3-9倍率のスコープを使用する。 |
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M40A1/A3 | 部品はレミントンからの供給だが、組立は全て海兵隊内で行われる独自のモデル。 当初は、戦地から引き上げられた初期のM40のリビルドと共に改良が施されたモデルだった。 元々の木製ストックをグラスファイバー製のコンポジットストックに変更し、スコープをユナートル社製・10倍固定倍率スコープに変更したもの。 M40A3では、ストックはマクミラン製。スコープはS&B社製に変更。 |
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M40A5 | 2009年採用のM40系最新モデル。 銃身を、シュアファイア社製マズルブレーキとサプレッサーを装着可能な新型に換装し、 これまで内蔵5発だった弾倉を、着脱式10発弾倉に改めている*3。 またフォアエンド前方に追加光学機器を装着するためのピカティニーレールマウントが追加された。 これは主にAN/PVS-22ナイトビジョンを運用するために用いる。 |
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M40A6/A7 | A5のシャーシをレミントン社製RACS(Remington Accessory Chassis System)に改装したモデル。A5では限定的であったレイルマウントがハンドガード全面に配置され、ストックが折り畳み可能となった。 |
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happ