ダムダム弾 /dumdum bullet †もともとは旧英領だったインド・コルカタ(カルカッタ)近郊のダムダム工廠で造られた、 .303British の中でも、殺傷力を高めた特殊な弾薬の俗称。 ライフル銃が発明されて銃弾の速度が音速を上回るようになって以来、鉛がむき出しの銃弾の殺傷力が高いのは経験的に知られていた。高速で撃ちだされる軟らかい鉛の弾丸は、目標に命中すると大きくつぶれるように変形したり、砕けてバラバラになったりして、傷の程度を酷くした。こうした軟頭弾は、ダムダム工廠で製造される前から、実際に狩猟用として使われていたのである。 こういった経験を元に、ダムダム工廠で作られたのが MK.II.303British だった。これは通常の .303British の先端から1mmほど銅合金の覆いを取っ払って、先端だけ鉛をむき出しにしたものだった。 その後にイギリス軍の制式となってMK.IIIとなり、さらに先端に窪みを設け、より銃弾が変形したり、砕け散りやすく改良したMk.IV、弾丸の底部もジャケットで覆い、コアだけが飛び出す問題を解決したMk.V が開発された。 後に1898年、ドイツから、ダムダム弾は不必要な苦痛を与える兵器でハーグ陸戦条約に抵触している、という抗議が出された。この抗議は世界的に受け入れられ、ダムダム弾は戦争においては使用禁止となった。 ドイツからは不必要な苦痛を与えるとして抗議を受けたダムダム弾だが、確かに同じ.303Britishの普通弾(フルメタルジャケット)に比べれば傷の程度は酷くなった。 ダムダム弾はいろいろな思惑から使用禁止になったが、規制は無くとも近い将来には使用されなくなっていっただろうと思われる。 第二次世界大戦後の研究ではダムダム弾による損傷は実際は破片による直接的な外傷ではなく、弾丸が破片状に爆発する現象(フラグメンテーション)によって引き起こされるものであり、現代的な高速弾においては特別な工夫なしに一般的に起こる現象であることが知られている。 ダムダム弾は現在でいうところの、ジャケッテッド・ソフトポイント(JSP)弾にあたる。JSP弾は軍隊以外の民間用途(狩猟・護身用)に殺傷力を高める弾頭形状の1種として現在でも使用されている。 メディア上ではいわゆる「ホローポイント弾」などと共にその構造や効果について非常に誤解や混用が多い弾種で、特に「通常の弾に十字の切れ込みを入れる(ことによって破片を作りやすくする)」といったギミックでダムダム弾になり殺傷力が上がる、とする描写が多い(無論これはあらゆる点で誤りである)。 夏目漱石の小説『吾輩は猫である』では野球を表現するための比喩として登場しており、日本でも古くから知られていたことが伺える。 最新の10件を表示しています。 コメントページを参照
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