サコー M60 / Saco Defence M60 【軽機関銃】 †
モデル | 全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 連射速度 | 発射形式 | 製造国 |
M60 | 1150mm | 10.5kg | 7.62mm×51 | ベルト給弾 | 550発/分 | F | アメリカ |
---|
E3 | 1070mm | 8.8kg | 7.62mm×51 | ベルト給弾 | 500〜650発/分 |
---|
E4(アサルトバレル) | 940mm | 9.66kg |
---|
E6(アサルトバレル) | 931mm | 9.27kg |
---|
1957年にアメリカ軍が制式採用した軽機関銃。
第二次世界大戦中、アメリカ軍はドイツ軍の汎用機関銃のように軽量で高い火力を持つ機関銃の開発をスプリングフィールド造兵廠で開始。鹵獲したMG42やFG42などを参考に幾つかの試作モデルが作られ、最終モデルであるT-161E3を1957年2月に『M60』の名称で制式採用した。当初は国営のスプリングフィールド造兵廠が生産を行っていたが、大量生産の必要から民間企業であるサコー・ディフェンス社*1に生産が移っている。
M14やM16のように、M60も実戦投入された初期のモデルには問題が多かった。複雑な機構と軽いが脆弱だったプレス加工製のレシーバーカバーはしばしば故障を起こし、全弾を撃ち尽くすまで勝手に稼働し続けたり、またフィードの設計の問題でベルトの挿入角度が直角に近く、装弾不良がよく起きたため、現場では丸いレーション缶をフィードトレイに取り付け、ベルトの動きを円滑化するような対応策も採られた。
また、初期モデルはキャリングハンドルが機関部に装着されていたため、銃身交換時には耐熱グローブを必要とし、交換銃身自体もバイポッドやガスチューブがセットだったことから本体への装着には時間がかかる問題もあり、ライフルをはるかに上回るサイズと重量もあって、兵士たちのあいだでは『ピッグ(豚)』としばしば呼ばれた。この渾名は21世紀にまで受け継がれ、アフガニスタン、イラクでの戦争でも使われている。
とはいえ、それまでのマガジン給弾式かつ銃身即時交換不可だったBARよりも高い持続射撃能力と、大戦中に急場しのぎで用意されたM1919A6に比べればずっと軽量だった点は、それらを知る者には好評であった。
汎用機関銃として設計されたため、分隊支援火器以外にも、三脚に据えて重機関銃として、あるいは軍用ヘリコプターやジープ等の搭載機銃(ヘリ搭載型がC、Dモデル、車両搭載型がE2モデル)としても活躍した。
ベトナム戦争中は様々な火力増強・小型軽量化の試みが行われたらしく、ヘリ搭載用に小型化されたBモデルを携行するSEALの写真も多く見られる。背負ったバックパックから機銃用のリンクレスシュートを用いて給弾する歩兵用システムも開発されており、公式な名称は不明*2だがSEALs博物館や、シュートの供給元であるスタンダード・アーマメント社の資料にその姿を見る事が出来る。
後に、バイポッドをガスチューブに移し、キャリングハンドルを銃身に移して銃身の交換を容易にした試作改良型のE1を経て、フォアグリップの追加などの全体的な改良を行なったE3モデル、さらに改良を加えられたE4モデル(米海軍名称Mk.43)が開発された。約22万5千挺が製造され、米海兵隊や米海軍などで使用された。原型M60からE3、E4へのコンバージョンキットも供給され、これらの部品が混在したモデルも使用された。
米軍一般部隊では車載用は1977年に、歩兵用は1991年にM240へと置換された。現在では米海軍の演習用として一部現役であるほか、タイなどでは現在も主力機関銃として使用されている。
また、米軍特殊部隊ではその軽量さゆえ、Mk48の登場までしばらくM60の派生モデルであるM60E4(Mk.43 mod.0)を使用していた。このモデルは1990年代にサコーで改修が進められていたが、サコーが2000年にジェネラル・ダイナミクスに買収されたことを契機に、USオードナンス社へ生産契約が移行されたものである。USオードナンスでは更に改修を進め、小型・軽量化と信頼性の強化を行ったM60E6モデルを現在生産しており、世界各国に売り込んでいる。2014年にはデンマーク軍のトライアルでMG5などのライバルを下し、制式採用が決定された。
メディアにおいても映画「ランボー」をはじめ独特のいかつさから人気があり、退役により払い下げも行われたため、映画などでプロップガンとしても多く活躍している。
各種バリエーション †
モデル | 解説 |
M60 | 基本型 |
---|
M60E1 | M60のガスシリンダー、銃身、バイポッドの接続方式を変更したもの |
---|
M60B | ヘリコプターから射撃を行うため、1960年代に配備されたもの。ストックは簡略化されている。 マウント部が無いため、キャリングハンドルを機内のフックに引っ掛けたり、射手が保持して使用していた |
---|
M60C | 航空機搭載用のモデル。電気的制御により遠隔操作で射撃を行う。 軽攻撃(COIN)機のOV-10などに搭載された |
---|
M60D | ヘリコプターや車両等へマウントできるようにしたもの。 UH-1BやUH-60ブラックホーク、CH-47チヌークなど主要なヘリコプターのドアガンとして用いられた。 特徴的なハンドガードやヒートシールド、ストックは無くなっており、 グリップもブローニングM2のようなスペードハンドルとなっているため、外見上はM60とは分かりにくい。 また照準器は円形の対空照準に変更 |
---|
M60E2 | 戦車の同軸機銃など、装甲車両へ取り付けての運用を目的としたモデル。 銃床等、車両搭載に必要の無い外装は取り外されている |
---|
M60E3 | 初期モデルの問題点を解決し、1986年ごろより実戦配備を開始したモデル。 軽量化モデルが用意されたが、軽量化バレルを始めとして部品の磨耗・破損が激しくあまり使われなかった。 そのため、アメリカ陸軍と海兵隊では大部分の部隊がM240への切り替えを行った |
---|
M60E4 (Mk.43 Mod0) | M60E3を短銃身化し、多くの改良点を取り入れ信頼性をアップしたもの。 前方にフォアグリップが追加されているのが大きな特徴。 「Mk.43 Mod0」は同モデルのアメリカ海軍での制式名称 |
---|
Mk.43 Mod1 | 上記Mk.43 Mod0を改良したもの。 ピカティニーレールが各所に追加された |
---|
M60E6 | USオードナンス社による最新モデル(E6の呼称は同社による製品名で米軍の制式名ではない)。 全体的な耐久性向上の他に、従来モデルで問題視されたベルトフィード機構の信頼性やトリガーユニットの安全性が新規設計となり改善されている |
---|
転載に関しては、転載元の転載規約に従って行ってください。
外部リンク †
・M60 ムービー