スリー・キングス / Three Kings
1999年、アメリカ映画
監督:デヴィッド・O・ラッセル
・ストーリー
1991年3月、イラク南部 (バスラ近郊)のアメリカ陸軍ベースキャンプ。2月24日以降のわずか100時間ほどで決着がついた地上戦の後、多国籍軍側の勝利が確定・停戦合意となり湾岸戦争は終結した。
本国への帰還準備を始める兵士たちがいる中、アメリカ陸軍第437民事中隊は、投降したイラク軍捕虜の武装解除の任にあたっていた。その時兵士の一人が、イラク軍がクウェートから持ち去った金塊の隠し場所を記した地図を、捕虜の体の中から見つける。同キャンプ内には民間ジャーナリストを取り扱う陸軍の広報事務所があり、デルタフォース出身で特殊部隊(グリーンベレー)のアーチー・ゲイツ少佐(ジョージ・クルーニー)の担当は、ジャーナリストの警護。
地図発見の噂を耳にしたゲイツ少佐は何を思ったのか、第437民事中隊の補充兵である、所帯持ちのトロイ・バーロー一等軍曹(マーク・ウォールバーグ)、空港職員のチーフ・エルジン二等軍曹(アイス・キューブ)、学歴もオツムも弱いコンラッド・ビグ上等兵(スパイク・ジョーンズ)を呼び出す。
「どうせサダムがクウェートの富豪から盗んだ金塊だ。それをサダムから盗んで何が悪い」
除隊後の生活に不安を抱いていた理由から、彼らを連れてAWOL*1により、停戦直後のイラク領内にこっそり金塊を頂戴しに行こうというのだ。幸いそこは、ベースキャンプから半日もあれば往復できる場所。残りの人生をバラ色に変えてくれる金塊を手に入れるべく、彼らは金塊を目指してキャンプを後にする。
地図に示された場所に着くと、首尾よく目的の金塊入手に成功。だがキャンプに帰ろうとしたその時、イラク国防軍がシーア派イスラム教徒の反体制派を弾圧する現場を目撃してしまう。*2
彼らを見殺しにして金塊を手にキャンプに戻るか、それとも国外脱出に手を貸すか。選択を迫られた彼らが取った行動とは―――。
・作品解説
本作は、ただ単に湾岸戦争を題材とした映画ではない。直接戦闘に従事する兵力ではなく、あくまで最前線で戦う部隊の作戦行動支援を行っていた「戦務支援部隊」と、戦場の奥深くで活動した「特殊作戦部隊」。いずれも表舞台には登場することの少ない、いわば軍の「脇役」部隊を"主役"にした異色の戦争映画である。
特に実戦経験が無い(架空の)民事中隊を主役にすることで、戦闘が終わってからの軍規が緩みまくっている状況を上手く表現している。
また、オープントップタイプのHMMWV(ハンヴィー)やサンドバギー(FAV=高速攻撃車両)、UH-1汎用ヘリコプターなど、軍事兵器においても(主力戦車・攻撃ヘリ以外の)支援・輸送手段用が活躍するのも興味深い(一応、イラク軍最強の主力戦車であるT-72も登場するが、ほとんど出番は無い)。
ちなみに意図的に荒い画質、不鮮明な色味・音声にすることで、あたかもニュース映像を通して鑑賞しているような、おもしろい撮影技法を取り入れていることも特徴である。*3
アメリカ軍関係者
反体制派関係者
イラク軍関係者