ロシアによるウクライナ侵攻(2022年〜継続中)

 2022年2月24日にロシア連邦がウクライナ北部及び東部から侵攻した事を始めとする紛争。
 2014年のロシアによるクリミア侵攻及び同年から続いていたドネツク州とルハンシク州における親ロシア派勢力による紛争を含める場合もある。

 開戦当初、ロシア連邦軍はウクライナの北部と東部の国境*1から大規模な勢力をもって侵攻し、緒戦では北部においてロシア軍がウクライナ首都キーウ近郊まで迫ったものの、ウクライナ軍の反撃により後退。以後は東部と南部での戦いに移行してロシア側勢力がウクライナ東部4州の大部分と南部クリミアを繋ぐ広範囲を占領したが、9月頃からウクライナ側が大規模反攻を成功させハルキウ州のほぼ全土など領土の一部を回復させた。以降は2022年5月からロシア側勢力による攻勢が行われているドネツク州バフムトを巡る戦闘を軸として2023年4月の今日まで継続している。

 2022年に勃発した、ソビエト連邦から多くを継承した超大国の1つであるロシア連邦と、同じくソビエト連邦から一部を継承した国同士の紛争という事から、当初は先進装備が戦場を支配するハイテク戦争となるのではと予測され、総兵力での優位に加えて先進装備開発においても優位にあると見られていたロシアが短期に勝利する*2という見通しが大半であった。
 しかし、実際には開戦から間もなくしてロシア軍が稚拙な動員・作戦計画を露呈させた事や、兵員の技量不足により先進装備を使いこなせなかった事に加え、ウクライナが戦時動員を間に合わせて緒戦の北部攻防を凌ぐことに成功。ゼレンスキー大統領らウクライナ政府要人も現地に留まっての徹底抗戦をアピールしたことで、ウクライナは世界各国から大量の軍事支援を取り付けることも出来た。また秋頃より協力国での訓練を終えたウクライナ軍兵士が帰国して戦線に加わった事により、情勢はウクライナ側がやや有利に傾いている。
 また実際の戦場も、高度な誘導ミサイルやドローンなど無人兵器に代表されるような各種の先進装備こそ運用されているものの、それらばかりでなく双方が塹壕の1つ1つを手榴弾と小銃で奪いあう塹壕戦や、砲兵による火力戦といった古典的な地上戦を展開させており、この点でも各国からの注目を集めている。

 短期決戦に失敗したロシア軍は東部戦線での攻勢を継続するも、その実態は開戦前の両国の国力差からするとまるで異なった様相を見せており、想定外の長期戦に引きずり込まれることになった。2014年からの経済制裁によって西側の製品に依存していたロシア国内での先進装備(航空機や精密誘導弾など)の開発や配備も滞っていたため、徐々に旧ソ連時代からの備蓄兵器が戦場に顔を見せるようになり、2023年3月に至っては極東ハバロフスクでモスボール保管されていた戦後第一世代主力戦車であるT-55のウクライナ方面への移送が確認されている。また、先進装備の基幹となる電子産業の現代化が遅れていたため、新型巡航ミサイルの制御部品に安価な中国製の民生向け電子回路が使われているのが確認されるなど、制裁下の長期戦に対する備えの無さが浮き彫りとなっている。
 戦力の不足からロシアは2022年9月に30万人の部分的動員を開始したが、この動員兵に支給するはずだった装備も横流しや書類の改竄により消えていたり、備蓄されていた銃器の一部が不適切な保管環境により使い物にならなくなっている事、動員した兵士に対して訓練を行う受け入れ体制が整っていない事が判明するなど、お粗末な実態が多々明らかになっている。さらに10月頃よりワグナー・グループの参戦も確認されているが戦車などはロシア国防省から供給されたものの肝心の弾薬が満足に供給されていないなど多くの問題が発生している。
 こういった実態もあってかロシア側は士気の低い部隊や将兵が多く、緒戦からこの侵攻作戦に否定的な兵士が最新鋭の戦闘車両ごと投降する事態も相次いでいる他、戦闘に参加している部隊でもハッチを開けたままにしていた戦闘車両の車内にドローンから手榴弾を投下されて撃破されるなど、杜撰な運用による喪失事例が多々見られている。

 ウクライナ側には日本を含む西側各国、さらにはロシアやベラルーシなど52ヶ国から約2万人*3の義勇兵が参戦しているが、彼らの身分は金銭的利益を主たる目的とされている傭兵ではなく、ウクライナ陸軍の指揮下にあるウクライナ郷土防衛隊の外国人軍団などに所属して、ウクライナの法律に基づき、他のウクライナ軍部隊に所属するウクライナ人兵士と同じ待遇を受けている正規軍人となっている。

 この紛争では、ロシア側が先述の通り備蓄兵器を、ウクライナ側も同様の(旧ソ連時代からの)備蓄兵器に加えて民間市場に流通していた銃器や世界各国からの供与兵器を運用している事もあり、1国対1国*4の紛争にしては特異な事に、極めて多種多様な武器が運用されている。
 なお、ウクライナはロシア側勢力から余りにも膨大な数の兵器を鹵獲しており、戦車や装甲車などの一部兵器の供給数に至ってはロシアからの鹵獲によるものが最多となっている。このためウクライナに対する最大の支援国にロシアを挙げているメディアが一部有る他、ウクライナ国防省やウクライナ軍兵士らもロシア側勢力から鹵獲した兵器の事を「レンドリース」と、これらをロシア側に向けて使用する事を「返却」と揶揄している事がある。

 以下に各参戦勢力が運用している武器を纏めている。多種多様な武器が扱われている為、一部の派生型は省略している。また一部の銃器は敵対勢力による鹵獲が確認されているのみで実際に使用した勢力を推測としているものがある。

参戦勢力別使用武器

参戦勢力小銃/自動小銃突撃銃拳銃狙撃銃
対人/対物
短機関銃軽機関銃重機関銃
機関砲
ロケット及び無反動砲
非誘導/誘導
携行地対空ミサイル手榴弾
殺傷/非殺傷
擲弾発射器地雷
対人/対戦車
その他
ロシア連邦軍
FSBなど国防省以外の部隊含む
AKM
AK-74
AK-103
AK-12
A-545
AS
PM
MP-443
SVD
VSS
VKS
SV-98M
TSVL-8 M5*5
SSG 04*6
SSG 08*7
PPK-20PK
RPK
M1910/30
DShK
KPV
NSV
Kord
RPG-7
RPG-22
RPG-30
RMG*8
RPO*9
RShG-1*10
9K38
9K333
RGD-33
F1
RGD-5
RKG-3
RGN
RGO
AGS-17
DP-64
GM-94
POMZ-2
OZM-3
OZM-72
PMN-2
PFM-1
POM-3
MON-50
MON-90
QB57
OZ-1
KSVK9M111
9M113
9M131
9M133
K-51*11
Zarya*12
TM-62
PTKM-1R
ドネツク人民共和国軍
ルガンスク人民共和国軍
M1891/30AK-74Oplot
P08
M1891/30PPSh41
MP40
PTRS1941
ワーグナー・グループAKM
AK-74
AK-103
M4
MP-443MTs-566
SVD
T-5000
SSG 04
PK
RPK
RPG-7
9M133
ウクライナ軍
KORDなど国防省以外の部隊含む
AKM
AK-74
AKS-74U
AK-105
AK-12
M4
M16
Fort-221
UAR-15
マリューク
FAL
F2000
G36
HK416
MCX
MSBS
TT
PM
M92
G17
G19
M1891/30
SVD
M110
XCR-M
Fort-301
TS.M.308*13
DSR-1
SRS A1
M1500
Fort-230*14
M1928A1
Vz61
M/45
DP
RPD
PK
RPK
Fort-401
M1910/30
DShK
KPV
NSV
M2
RPG-7
RPG-18
RPG-26
RPO
M72
M3
AT4
APILAS
RPG-75M*15
パンツァーファウスト3
9K38
FIM-92
ミストラル*16
スターストリーク HVM
RBS-70
F1
RGD-5
Mk14 Mod 0*17
RGT-27S2*18
DM51
DM61
GM-94
GP-25
KBA-117*19
Fort-600
M32A1
M320A1
Mk19
MON-50
SUB-2000BFG-50*20
アリゲーター*21
LRT-3
Wilk
手製対物ライフル*22
9M113
9M131
BGM-71
FGM-148
RK-2*23
NLAW
RBS-17*24
ミラン F2A
DG-01
L84A3
JVA 0406
TM-62
PARM1
PARM2
FFV 028
EMP F2
HPD2A2
M/56
AT2
ウクライナ郷土防衛隊
外国人軍団を含む
AKM
AK-74
AKS-74U
M4
M16
ACR
HK416
FAL
FNC
SCAR
F2000
ARX200
AUG
CZ806
Vz58
56式冲鋒槍
M70
APB
PSM
Vz82
P10
G17
M1891/30
SVD
M700
Model 10 FCP-SR*25
Z-10*26
FR-F2
TRG-42
MP5
UZI
EVO3
Vz23
Borz*27
DP
PK
RPK
MAG
MINIMI
MG42
Vz59
PZD 556*28
NSV
W85式高射機槍
M55*29
RPG-7
RPG-22
RPG-30
RPO
M72
M3
パンツァーファウスト3
マタドール*30
C90-CR*31
9K38F1
RGD-5
RGO
RKG1600*32
M67
GHO-1
m/50*33
VOG-17*34
火炎瓶*35
Mk19
M320A1
RG-1*36
RBG-6
RGP-40*37
X7
SVT
M1
M14
M99
ファルコン
HS.50
9M111
RK-2
RK-3*38
NLAW
TM-62

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • M240は既に追加済ですが? -- 2022-10-30 (日) 05:47:11
  • 携帯式防空ミサイルシステムは緊急時には地上目標(戦車など)に対して使用できると聞いたことがあるのですがウクライナに提供されたスティンガーやミストラルは対戦車ミサイル代わりに使用されたりはしなかったのでしょうか? 戦闘機や対空兵器の質・量の面で航空優勢を確保できないことはウクライナは最初から自覚しているはずで、そういう運用をされていてもおかしくはないと思い、質問いたしました。 第二次世界大戦末期のドイツ軍のように制空権を失った状態でも陸上戦力は戦果をあげていたりする例もあるのでいかがでしょうか?  ※念のため申し上げますがこのコメントはウクライナおよび、ウクライナの軍事組織に対するヘイトではありません。ウクライナは十二分にミドルパワーであり、その軍備も十二分だと思っています。こういう形態の21世紀以前の旧態依然とした部分と21世紀のサイバー攻撃・ドローン等々を使用した部分が混ざった戦争ではうまく実像を捉えられない人も多いと思います。なので、ウクライナへのヘイトコメントと受け取らないでいただけますようお願い申し上げます。 -- 2022-11-09 (水) 03:17:30
  • どうやらロシア軍動員兵の一部ではBeemanQB57エアライフルが使用されていたみたいです、ウクライナ特殊部隊が鹵獲している写真をTwitterで見ました。 -- 2022-11-14 (月) 05:52:20
  • それと宇郷土防衛隊で所持が確認されてるトルコのTarget社製散弾銃をどう追加するかで迷ってるんですよね。また表が複雑になりそうで。 -- 2022-11-14 (月) 15:41:23
  • 地雷の項目を削るというのは如何ですか? -- 2022-11-15 (火) 22:36:29
  • 削るとしたら小銃と自動小銃を合わせるかなんですよ。どっちも数が少ないので。それで「その他」の項目でも作って空気銃と散弾銃をそこに入れるかとかを考えてます。 -- 2022-11-15 (火) 23:51:07
  • 小銃の項目を廃止することに賛成です。現状で該当する機種がモシンナガン一種だけ且つ、既に狙撃銃の一覧に記載されているようなので削っても差し障りはないと思われます。 -- 2022-11-25 (金) 14:26:57
  • 実装していただきありがとうございました。 -- 2022-11-26 (土) 19:24:03
  • ウクライナ軍特殊部隊やアゾフ大隊で豊和M1500のホーグ20タイプが使用されているみたいです。 -- 2023-04-15 (土) 20:19:14
  • M1500追加しました。 -- 2023-04-15 (土) 21:37:32
お名前:


*1 これにはロシアの同盟国であるベラルーシの国境と接している部分も含むが、ベラルーシは国内にロシア軍を受け入れてはいるものの、侵攻には直接参加していない。
*2 多くの予想では3日でロシアの勝利に決着するとされていた。
*3 2022年3月のウクライナ発表
*4 国際的に広く承認されていないドネツク人民共和国及びルガンスク人民共和国を除いての数え方。
*5 ロシアのLobaev Arms社が開発製造しているボルトアクション狙撃銃
*6 ステアー社製ボルトアクション狙撃銃
*7 ステアー社製ボルトアクション狙撃銃
*8 ロシアのBazalt社が開発製造しているHEATとサーモバリックのタンデム弾頭を使用する使い捨てロケット発射器
*9 ソ連で開発されたサーモバリック弾頭などを使用する使い捨てロケット発射器。ソ連及びロシアなどでの兵器分類では火炎放射器となっている。
*10 ロシアのBazalt社が開発製造しているサーモバリック弾頭を使用する使い捨てロケット発射器
*11 ソ連で開発されたCSガス手榴弾
*12 ロシアで開発された閃光手榴弾
*13 ウクライナのTactical Systems社が製造しているB&T社のAPR308のコピー
*14 ウクライナのFort社が開発製造している短機関銃
*15 チェコスロバキアが開発した使い捨て携行式対戦車ロケット発射器
*16 フランスのMBDA社が製造している携行地対空ミサイル
*17 アメリカ製の対構造物手榴弾
*18 ウクライナ製のサーモバリック手榴弾
*19 ウクライナのKB MIAが製造しているAGS-17のコピーモデル
*20 アメリカのSerbu Firearms社が開発製造しているボルトアクション対物ライフル
*21 ウクライナのSNIPEX社が開発製造しているボルトアクション対物ライフル
*22 KPVの銃身を流用したものなどが確認されている。
*23 ウクライナのLuch Design Bureau社が開発製造している対戦車ミサイル
*24 AGM-114C空対地ミサイルを元にスウェーデンのボフォース社が開発製造している地対艦仕様。対戦車運用も可能。
*25 アメリカのサベージ社が開発製造しているボルトアクションライフル
*26 ウクライナのZbroyar社が開発製造している民間向けAR10クローン
*27 チェチェン共和国で密造された短機関銃の総称であり俗称
*28 チェコのDefence and Security Services社が製造している汎用機関銃
*29 スペインのイスパノ・スイザ社で開発されたHS.804をユーゴスラビアのツァスタバ社がライセンス生産していた機関砲
*30 イスラエルとシンガポールが共同開発製造している使い捨てロケット発射器
*31 スペインのInstalaza社が開発製造している携行対戦車ロケット発射器
*32 ソ連で開発されたRKG-3対戦車手榴弾にドローン投下用のフィンを追加したもの。
*33 フィンランドの迫撃砲弾改造手榴弾
*34 本来であればこの名称はAGS-17などで使用する弾薬を示しているが、この場合はVOG-17にUZRG信管を組み合わせた密造手榴弾の俗称。VOG-25を元にして製作される物も含めた俗称としてハタブカと呼ばれる事も多い
*35 市民に対し火炎瓶による抵抗を呼びかける動画や郷土防衛軍製火炎瓶投下ドローンの動画が投稿されているが、実際には殆ど使われていない模様
*36 ウクライナのYuzhmash社が製造した携行半自動擲弾発射器
*37 ポーランドのZM Tarnów社が製造しているリボルバー擲弾発射器
*38 ウクライナのLuch Design Bureau社が開発製造している対戦車ミサイル

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Last-modified: 2023-06-06 (火) 02:26:52 (9h)