GIAT ファマス / GIAT FAMAS 【突撃銃】 †
モデル | 全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 連射速度 | 発射形式 | 製造国 |
F1 | 757mm | 3.52kg | 5.56mm×45 | 25 | 930発/分 | S/(3)/F | フランス |
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G2 | 757mm | 3.75kg | 5.56mm×45 | 30 | 1000発/分 |
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フランスのサンテーヌ造兵廠GIATで開発され、フランス陸軍に1977年7月制式採用されたブルパップ式突撃銃。FAMAS(ファマス)とは「Fusil d’Assaut de la Manufacture d’Armes de St-Etienne」の略称で、「サンテーヌ造兵廠製アサルトライフル」の意である。その独特な姿格好から兵士間では『Clairon』(信号ラッパ)と呼ばれている*1。
初期型はF1の名で制式化され、後にトリガーガードを大型のものに改めたG1型が登場した。1994年には、PKOなどの多国間共同作戦を意識して、NATO標準の30発STANAGマガジンを使用可能としたG2型が登場し、フランス海軍がこれを採用している。しかし同国陸軍では、Félin(後述)の採用を意識してか、大半はF1のままとなっている。
G2にはコマンドー、スナイパー、SMG、ピカティニーレール装備などの多くのバリエーションがあり、その他にも輸出用のFAMAS Export、民間用のFAMAS Civilなども存在する。
ブルパップ構成の他にも特徴的な機構が取り入れられている。ひとつがレバー・ディレイド・ブローバックと呼ばれる作動方式で、900発/分を超える高速な連射速度と低反動を実現している。
また、ファマスは当時としては左右利き手への両用化に富んだ設計となっている。まず、排莢孔カバーは左右を付け替えることで、排莢方向を左右スイッチ出来る。一般に排莢孔はレシーバー右側面に配されるため、ブルパップ式レイアウトの場合、左利きの射手が構えると、後方に流れた薬莢が射手の顔にヒットするか、頬で排莢孔をふさぐ形になってしまうからだ。さすがに臨機応変とはいかないものの、ボルトの組替えの必要なオーストリアのAUGや(そもそも排莢方向のスイッチ自体不可能な)イギリスのSA80に比べると優れた設計である。
発砲の切り替え機構にも一工夫あり、セレクターレバーがトリガーガード内、トリガー前方に配置され、手をグリップから離すことなく人差し指で安全位置からセミ/フルへの切り替えが可能である。またレシーバー下部にモジュール化した撃発機構を配し、ここにメインのセレクターとは別にもうひとつセレクターレバーを設けている。このレバーを操作することでメインセレクターを「フル」位置にした際、3バーストかフルオートいずれかに使い分けることが可能である。
銃身は、レシーバーから前方に延びる金属製の被筒で後半が覆われており、被筒前方のブロックにキャリングハンドルやハンドガード・グリップの前端を接続し、レシーバー部にそれぞれの後端をプッシュピンで留める構造としている。被筒は銃身に触れないフリーフロート設計なため、銃を保持した際に銃身に外力が加わらない仕組みだ。
一見キャリングハンドル部に固定されているように見えるアイアンサイトは、実際には前後のサイトとも銃身に固定されており、キャリングハンドルによって覆われているのみである。
キャリングハンドル中央とチャージングハンドル前方にはライフルグレネード射撃用に、折畳み式のアリダード式照準器が2種配置されている。それぞれ直接照準用と間接照準用で、後者は左右どちらかに回転させて展開し、ライフルを90度横に傾けた状態で使う仕組みで、左右どちらでも使う事が出来るというユニークな設計となっている。
また、AUGやSA80が照準線の短さを補うため、低倍率の光学照準器を標準としたのに対し、FAMASはバイポッドの標準化を選択した。バイポッドはキャリングハンドル基部の金属製のインナーに固定され、前述の被筒部に接続するため、銃身のフリーフロートを崩さず、脆弱なプラスチック製のキャリングハンドルにも負担をかけない構造である。
フランス軍は本銃を約30万挺調達し、陸軍のみならず海軍や空軍地上部隊などにも配備している。しかし、初期のF1はブルパップ構成に起因するもの以外にも問題があった。プラスチック製のパーツは割れやすく、マガジンは使い捨てを前提として安価に設計されたことから脆弱で変形しやすく、しかも予算不足から実際には使いまわしで運用することを余儀なくされ、ジャムの原因となっていた。AUGなど完成度の高いブルパップに押され、フランス国外での需要は中東の一部の国(しかも元植民地)ばかりで数は少ない。自国製の物を好むフランス人傭兵すらあまり好まなかったという。
また、光学照準器の搭載を想定した設計ではなかったことから、光学照準器の装備が一般的となった2000年代には、金属製強化フレームと一体のマウントレールをキャリングハンドル内に通して、レシーバーと被筒部に固定する「PGMP*2」キャリングハンドル・ハンドガードユニットが急遽配備されるなどの対応が行われた。
こうした問題を補うため、フランスの次世代兵士計画「Félin」ではG2型をベースに様々な改良が加えられた。最も顕著な変更点は、特徴的なキャリングハンドルの高さがかなり下げられ、他の近代化されたブルパップアサルトライフル同様、ほとんどフラットトップに近い形状となった点であろう。FAMAS Félinはその名の通り、Félinシステムの中枢を担う、機関銃や狙撃銃でも共用で運用される昼夜兼用サイト・データ共有機能モジュールの搭載を念頭に設計されている。これら先進機器モジュールこそ持たないものの、システムの核となるFélin仕様にアップグレードされたファマスF1が一部前線部隊に配備され、中央アフリカやシリアの争乱のさいに派遣された部隊がこれを装備している光景が見られた。
しかし2011年、フランス陸軍はFélinの完成を待たず、2013年内を目処に全てのファマスを置換すると発表した。ファマスに関しては様々な問題が報告されていたが、特に軍主力のF1モデルでは現用の5.56mm NATO弾(SS109)では薬莢切れを起こす問題*3があり、独自のスチール製薬莢を使用する必要があったことなどが問題視されていた。
後継トライアルには、SCAR-LやF90(近代化改修版AUG)、CZ805やARX160などが参加し、最終候補はSCAR-LとHK416に絞られたが、最終的に2016年にはHK416Fの制式採用が発表された。一方で同年にフランスでは国内のテロ増加を受け、145年ぶりに8万人規模の国民衛兵隊の再編を決定。ファマスはこちらの制式装備として配備予定である。
モデル | 解説 |
F1 | 初期型。 |
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G1 | トリガーガードがグリップガードに変更。 |
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G2 | 1994年から製造されている改良型。 30発STANAGマガジンやM203が使用・装着可能になった。 |
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G2 Commando | バレルが短縮化されたカービンモデル。 |
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G2 SMG | バレルと共にレシーバーも短縮化され、さらにコンパクトとなったカービンモデル。 |
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G2 Sniper | バレルを延長した狙撃銃モデル。 スコープはキャリングハンドルを排除して装着されている。 |
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G2 Picatinny rail | キャリングハンドル上部を、ピカティニーレールとしたもの。 |
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Félin | G2をベースに、昼夜兼用オプティカルサイトやレーザー・レンジファインダーを装着した次世代型。 |
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