USSR SVD / СССР СВД 【自動小銃(狙撃銃)】 †
1963年にYe.F.ドラグノフが開発し、ソ連軍に制式採用されたセミオート式狙撃銃。正式名称は「Снайперская винтовка Драгунова;Snayperskaya Vintovka Dragunova(ドラグノフ式狙撃銃)」。「ドラグノフ」とも呼ばれる。
狙撃銃としては速射性が高いセミオート式、分隊に1丁という多めの配備数など、運用思想は現代の選抜射手ライフル(DMR)に近いものとなっている。
外観や操作系はAKに近いが、構造的な類似点は全くない。作動はAKのロングストロークではなく、ショートストローク・ガスピストンによるガスオペレーションで、ガスブロック後部にはガスレギュレーターも備える。ボルトロッキングはAK同様のロータリー式だが、最終弾発射後にはボルトを後退位置に留めるという、AKに無いボルトストップ機能を備え、コッキングハンドルを一旦引くことでリリースする仕組みとなっている。
レシーバー側面にはソ連軍標準のダブテイル(蟻溝)マウントを備え、標準的な4倍率スコープのPSO-1の他、光増幅型暗視照準装置の1PN-51(NSPU-3)など、マウントを介して数種の光学照準器が使用できる。
本銃に使用するため開発されたPSO-1照準器は簡易な赤外線探知装置が組み込まれており、スコープ左側面のつまみを回すと対物レンズに赤外線フィルターが降り、赤外線を発光している対象が発光し発見可能になるという現代の電子戦に対応した先進的な作りとなっていた。ただし、IRイルミネーターを備える最初期(第0世代)の暗視装置の検知を目的としているものであり、受動式の暗視装置が主流となると赤外線検知装置は省かれている。
また前述のDMRのような一般歩兵の装備として運用可能なよう充実した機能を備えている。ストックにはベルトによって着脱するチークピースやバックアップ用のアイアンサイトを備えているほか、近接戦がこなせるよう銃剣が装着可能。
旧時代的でAK47に類似した外見から精度はそれほど高くないというイメージが根強く、メディアでもそういった扱いが多いが、実際には1960年代の初期型では1MOA程度、1970年代に曳光弾や焼夷徹甲弾などの特殊弾頭に対応するための変更*1が加えられた以降は1.2MOA程度と、半自動小銃としては現代水準で見ても高い精度を有する*2。

旧ソ連崩壊後はイジェマッシ社で生産が行われており、様々なモデルが登場している。
1990年には、木製のハンドガードやストックをポリマー素材に置き換えた近代化モデルが登場し、1994年には、折り畳み式ストックを備えたカービンモデルの「SVDS」が開発された。SVDSではフラッシュハイダーは旧来のバヨネット用ソケットを先端に備えた大型のものから、通常の小型のものに変更された。
これをベースに更に銃身を短縮、標準バイポッドやピカティニーレールなどを備えた「SVDM」モデルも登場しており、いずれもロシア軍に採用されている。
またツニートチマッシ社で、ヨーロッパではより高威力な狩猟用弾薬として普及している9.6mm×64ブリネッキ*3に準じた狙撃用徹甲弾である7N33を用いる「SVDK」というモデルが開発され、こちらもロシア軍で採用されている。
イジェマッシ社からは、SVDを民間用の猟銃に改修した「Tigr(タイガー)」シリーズも販売されている。Tigrシリーズは7.62mm×54RとNATO制式の7.62mm×51(.308)の2つの口径バリエーションが販売されている。これらは民間向けにバヨネットラグが廃止されている。
また同じく猟銃として9.6mm×53ランカスターという弾を用いる、ロシアの銃器区分上は散弾銃となる「TG3」というモデルも販売されている。このTG3は19世紀にイギリスのチャールズ・W・ランカスターが発明した銃身断面の内径側が楕円形となるライフリングを採用しており、これがロシアではライフリングとして扱われない為に、ライフリングの無い銃であるから散弾銃へと区分される事による。もちろんTG3から発射される9.6mm×53ランカスター弾にはライフリングによる回転が与えられているため、スムースボアの散弾銃とは比較にならない射撃精度を持つ。
なおしばしばメディア上でも混同されるが、類似品として、イジェマッシ社のもう一つの民間向け銃器ブランドであるサイガにも7.62mm×51モデルがある他、ユーゴスラビアのツァスタバ社によるM91や、ルーマニアのPSL(FPK)がある。これらは内部構造がAKMと同様のロングストローク・ガスピストンを用いたもので、本銃との直接の関連性は無い。ただ性能的には同等であるらしく、輸出実績の多いM91やPSLは中東の紛争地域では狙撃銃として広く普及している。
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