2022年2月24日にロシア連邦がウクライナ北部及び東部から侵攻した事を始めとする紛争。
2014年のロシアによるクリミア侵攻及び同年から続いていたドネツク州とルハンシク州における親ロシア派勢力による紛争を含める場合もある。
開戦当初、ロシア連邦軍はウクライナの北部と東部の国境*1から大規模な勢力をもって侵攻し、緒戦では北部においてロシア軍がウクライナ首都キーウ近郊まで迫ったものの、ウクライナ軍の反撃により後退。
以後は東部と南部での戦いに移行してロシア側勢力がウクライナ東部4州の大部分と南部クリミアを繋ぐ広範囲を占領したが、9月頃からウクライナ側が大規模反攻を成功させハルキウ州のほぼ全土など領土の一部を回復させた。
以降は2022年5月からロシア側勢力による攻勢が行われているドネツク州バフムトを巡る戦闘を軸としてウクライナ側が守勢となっていたが、2023年6月上旬よりザポリージャ及びバフムトにてウクライナ側の反攻作戦が展開されている。さらにロシア側で参戦していたワグネル・グループが6月24日に反旗を翻しロシア領内のロストフとヴォロネジを一時的に制圧した。
2022年に勃発した、ソビエト連邦から多くを継承した超大国の1つであるロシア連邦と、同じくソビエト連邦から一部を継承した国同士の紛争という事から、当初は先進装備が戦場を支配するハイテク戦争となるのではと予測され、総兵力での優位に加えて先進装備開発においても優位にあると見られていたロシアが短期に勝利する*2という見通しが大半であった。
しかし、実際には開戦から間もなくしてロシア軍が稚拙な動員・作戦計画を露呈させた事や、兵員の技量不足により先進装備を使いこなせなかった事に加え、ウクライナが戦時動員を間に合わせて緒戦の北部攻防を凌ぐことに成功。ゼレンスキー大統領らウクライナ政府要人も現地に留まっての徹底抗戦をアピールしたことで、ウクライナは世界各国から大量の軍事支援を取り付けることも出来た。また秋頃より協力国での訓練を終えたウクライナ軍兵士が帰国して戦線に加わった事により、情勢はウクライナ側がやや有利に傾いている。
また実際の戦場も、高度な誘導ミサイルやドローンなど無人兵器に代表されるような各種の先進装備こそ運用されているものの、それらばかりでなく双方が塹壕の1つ1つを手榴弾と突撃銃で奪いあう塹壕戦や、砲兵による火力戦といった古典的な地上戦を展開させており、この点でも各国からの注目を集めている。
戦場で運用されている各種のドローンへの対抗手段としては既存の対空機関砲や対空ミサイルが用いられている他、小銃のような形ながらも妨害電波を照射する携行対ドローンシステムも運用されている。100m程の低空を飛ぶドローンに対しては歩兵が持つ各種の突撃銃や軽機関銃、さらには散弾銃による射撃も行われている。
短期決戦に失敗したロシア軍は東部戦線での攻勢を継続するも、その実態は開戦前の両国の国力差からするとまるで異なった様相を見せており、想定外の長期戦に引きずり込まれることになった。2014年からの経済制裁によって西側の製品に依存していたロシア国内での先進装備(航空機や精密誘導弾など)の開発や配備も滞っていたため、徐々に旧ソ連時代からの備蓄兵器が戦場に顔を見せるようになった。例としては防弾ヘルメットの不足から鉄製で旧式のSSh-68ヘルメットの内側にケブラー繊維を貼り付けただけのKOLPAK20という急造ヘルメットを配備したり、極東ハバロフスクでモスボール保管されていた第一世代主力戦車であるT-54/55を2023年6月に自動車爆弾としておよそ5tもの炸薬を充填してウクライナ軍陣地に向けて走らせた*3のが確認されている。また、先進装備の基幹となる電子産業の現代化が遅れていたため、新型巡航ミサイルの制御部品に中国製の安価な民生向け電子回路が使われているのが確認されるなど、制裁下の長期戦に対する備えの無さが浮き彫りとなっている。
戦力の不足からロシアは2022年9月に30万人の部分的動員を開始したが、この動員兵に支給するはずだった装備も横流しや書類の改竄により消えていたり、備蓄されていた銃器の一部が不適切な保管環境により使い物にならなくなっている事、動員した兵士に対して訓練を行う受け入れ体制が整っていない事が判明するなど、お粗末な実態が多々明らかになっている。また動員に反発した市民により募兵所が焼き討ちされる事件も多発した。さらに10月頃よりワグネル・グループの参戦も確認されているが戦車などはロシア国防省から供給されたものの肝心の弾薬が満足に供給されておらず反旗を翻されるなど多くの問題が発生している。
こういった実態もあってかロシア側は士気の低い部隊や将兵が多く、緒戦からこの侵攻作戦に否定的な兵士が最新鋭の戦闘車両ごと投降する事態も相次いでいる他、戦闘に参加している部隊でもハッチを開けたままにしていた戦闘車両の車内にドローンから手榴弾を投下されて撃破されたり、遺棄する兵器や弾薬に破壊処置をしなかった為に後述のウクライナ側からの「返却」を受けるなど、杜撰な事例が多々見られている。
ウクライナ側には日本を含む西側各国、さらにはロシアやベラルーシなど52ヶ国から約2万人*4の義勇兵が参戦しているが、彼らの身分は金銭的利益を主たる目的とされている傭兵ではなく、ウクライナ陸軍の指揮下にあるウクライナ郷土防衛隊の外国人軍団などに所属して、ウクライナの法律に基づき、他のウクライナ軍部隊に所属するウクライナ人兵士と同じ待遇を受けている正規軍人となっている。
この紛争では、ロシア側が先述の通り備蓄兵器を、ウクライナ側も同様の(旧ソ連時代からの)備蓄兵器に加えて民間市場に流通していた銃器や世界各国からの供与兵器を運用している事もあり、1国対1国*5の紛争にしては特異な事に、極めて多種多様な武器が運用されている。
なお、ウクライナはロシア側勢力から余りにも膨大な数の兵器を鹵獲しており、戦車や装甲車などの一部兵器の供給数に至ってはロシアからの鹵獲によるものが最多となっている。このためウクライナに対する最大の支援国にロシアを挙げているメディアが一部有る他、ウクライナ国防省やウクライナ軍兵士らもロシア側勢力から鹵獲した兵器の事を「レンドリース」と、これらをロシア側に向けて使用する事を「返却」と揶揄している事がある。
一方のロシア側は自国で兵器需要の殆どを賄えていると主張しており、実際に開戦後の調達事例としてはイランから多数のドローンを購入したの主として、インドが整備の為にロシアへ預けていた戦車を接収する、インドやミャンマーからロシア製兵器の部品を買い戻すなど限定的な事例のみ確認されていた。しかし2023年の夏ごろよりイランやミャンマーから砲弾を調達してウクライナで使用しているのが確認されており、実情は主張とは異なるようだ。
また世界有数の兵器輸出国家である中国の動向も各国から注目されているが、これまで中国はウクライナへ戦災復興支援として大型クレーンなどの重機を供与したり、ロシアへ非武装の軽装甲車を輸出したりと、どちらとも縁を切らず、しかし深く肩入れせずといった立場を維持している。このため紛争の規模の割に中国製兵器があまり見かけられないという近年では珍しい状況となっており、確認されている例も中国が戦前にウクライナに輸出していたり、中国がかつてイランやパキスタン、アルバニアなどに輸出していた兵器がロシアやウクライナに供与ないし再輸出されているなどのみである。一方で民生製品はその限りでなく、双方の兵士が中国製の民生向けダットサイトや赤外線やサーマルを用いた暗視照準器を多用している他、ウクライナは多数の中国製ドローンを偵察や着弾観測、自爆攻撃に使用している。またロシア側も先述の通り新型巡航ミサイルに中国製の民生部品を使用している。
以下に各参戦勢力が運用している武器を纏めている。多種多様な武器が扱われている為、一部の派生型は省略している。また一部の銃器は敵対勢力による鹵獲が確認されているのみで実際に使用した勢力を推測としているものがある。
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