FN ハイパワー / FN Hi-Power 【自動拳銃】 †
「ブローニング・ハイパワー」の名でも知られる自動拳銃。ジョン・ブローニングが晩年に設計し、その死後FALなどの設計で知られるFN社の技師デュードネ・ヨゼフ・サイーブらによって1934年に完成した。 一方、他のオートマチックではやや珍しいマガジンセイフティという安全装置も備えている。マガジンを抜いた状態ではトリガーとシアの連動を外す機構で、薬室内に弾丸が残っていた場合の不注意な暴発を防ぐことが出来る。しかし、トリガープルが重くなる上、装着されたマガジン前面にマガジンセイフティのスプリングのテンションがかかるため、マガジンキャッチを押してもマガジンがスムーズに落下しなかった*1。そのため、この機能は特殊部隊での運用時には外されていることが多かったらしい。またショップによるカスタムや、サードパーティによるクローンでも定番の加工である。 初期の軍用モデルは「FN GP(Grande Puissance)*2 M1935」の名で制式化され、その民間モデルが「FN HP(Hi-Power) M1935」の名で販売された。「M1935ミリタリーモデル」とも呼ばれるこのモデルは、照尺が可変のタンジェントサイトとリングタイプのハンマーを備え、着脱可能なストックがセットだった。ただ、ストックとこれを着脱するためのグリップのスロットは、第二次大戦中までの仕様で、以降は廃止されている。 第二次大戦後も長らく活躍し続け、英連邦を始め世界各国で採用された。現用オートマチックとしては最古老の部類ながら、イギリス軍では2013年に後継のグロック 17(Gen4)へ更新されるまでのおよそ半世紀、L9A1の名称で同軍の制式自動拳銃であり続け、SASのような装備の融通が利く特殊部隊でも後発のP226採用後も、冷戦時代を通じてハイパワーが使用されていた。予算の関係等でカナダ軍やオーストラリア軍のように2017年時点でも現役の軍もある。 100万挺を越す生産数を誇る、世界で最も生産された自動拳銃の一つであり、派生型も数多く登場している。1981年には、ホワイトドットが入ったフロント&リアサイトと、アンビ化した大型のマニュアルセイフティを装備したMk.IIとなり、1989年には、AFPBを追加した最終モデルのMk.III(上写真のモデル)が登場した。なお、1990年に登場した.40S&Wモデルは、スライドが少し厚くなり、スライドリリースレバーと接する部分に段差がつけられている。このモデルをベースに9mm×19の強装弾に対応したカスタムHPを製作するガンスミスも存在する。 2021年にはM1911クローンで知られるアメリカのスプリングフィールド・アーモリー社が『SA-35』の名前でハイパワーのクローンモデルの販売を開始した。グリップパネルがウォルナット材とされたのを始め、旧モデルのようなリングハンマーや左側面だけのサムセイフティなど、外観はFNの初期モデルを思わせる、一見クラシカルなものとなっている。 2018年に本家FNでは生産終了となっていたが、2022年のショットショーで新生ハイパワーが発表された。マガジンセイフティの廃止・リングハンマーなどはSA-35と共通だが、外観は全体にエッジの面取や稜線のアレンジによってMkI〜IIIの各旧モデルとは印象を異にし、同社のファイブセブンやFNPといった近代モデルを思わせる意匠となっている。
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