FN ファイブセブン / FN Five-seveN 【自動拳銃】 †
全長 | 銃身長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 製造国 |
208mm | 122mm | 662g | 5.7mm×28 | 10/20/30+1 | ベルギー |
FN社が1995年に発表したポリマーフレーム自動拳銃。同社製P90のサイドアームとして開発され、弾薬の共用が可能となっている。
製品名は口径の5.7mm(five-point-seven)由来する。また登録商標上、最初と最後の文字を大文字としたFive-seveNという自社の略称に因んだ表記が採用されている。
使用弾薬のSS90弾*1は、ライフル弾を小型にしたようなボトルネック形状をしており、弾頭はそれまでの拳銃弾のようなドングリ形ではなく鋭利な円錐形をしている。小口径のため弾丸の初速が速く(秒速650メートル)、クラス3のボディアーマーを撃ち抜く貫通力を持つ。弾頭重量が小さいためエネルギーでは標準的な9mmパラベラム弾や.45ACP弾などには劣るが、ストッピングパワーを補うため、同じFN社製のSS109弾同様、人体等の軟体に命中すると弾丸が横転してフラグメンテーションを起こしやすく設計されている。射撃時の反動も比較的小さい。
また、従来の拳銃弾に比べ細長く、グリップの前後幅は増したものの、マガジン装弾数は標準で20発と大容量になっている。またオプションとして30発の拡張マガジンも販売されている。
銃本体のデザインも特徴的で、当初採用されていたピーナッツ形状のトリガーガードは注目を浴びた(現在生産されているものはストレート型)。プラスチックはフレームだけでなく、スライド部をも覆っており、過熱や冷却によるはりつきに備えたものとなっている。意識されて設計されたものか不明だが、口径の5.7mm以外に銃自体の高さも5.7インチ(=14.478cm)となっている。
作動は一般的なショートリコイルではなく、ディレイドブローバックとなっている。内部ハンマー式を採用しハンマーが露出していないため、ポリマーフレーム拳銃に多いストライカー式拳銃だと誤解されることもある。
アイアンサイトは固定式と可動式の物がある。
開発中のモデルが発表された90年代半ばはSASを始めとする各国特殊部隊が実験的に調達していたようだが、21世紀現在も制式採用している公的機関は非常に限られる。初めて制式採用されたのは2000年のことで、P90を採用しているキプロス共和国軍の特殊部隊へと納入されたものであった。
当初、供給は公的機関にのみと限定されていたが、2004年からは民間市場において$800程で販売されている。高貫通力を謳った商品であるため、FN社からは民間用に貫通力を落とした弾薬が供給されているが、他社製の各種高威力・高貫通力弾が販売されている。
しばしば5.7mm×28弾の性能と共に「最強の自動拳銃」とみなされる事もあるが、実際には予算の潤沢な軍特殊部隊での採用例も少なく、それほど卓越したものとは言い難い。特にP90と異なり、このような高初速弾は短銃身においては従来型の自動拳銃弾に比べかなり巨大なマズルフラッシュを発生させるため、正確な連射には適していないという点は大きなデメリットである。このため、フラットな弾道と大容量マガジンという競技的に優れた性質を持つにもかかわらず、競技射撃で使用される例もほとんど無い。
2013年には改良モデル「Mk.2」が標準モデルとなった。コントロールパーツに若干の変更が加えられたほか、スライドにはフロントセレーションが追加され、プラスチックカバー内の金属スライドも2ピースから1ピースとなりメンテナンス性が向上している。
各種バリエーション †
確認されているバリエーションは以下のとおり。銃本体にモデル名を区別する刻印などは無いようである。
モデル名 | 説明 |
初期モデル | 生産終了。ダブルアクションオンリー(DAO)、マニュアルセーフティ無し。 |
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現行モデル | ダブルアクションオンリー(DAO)、マニュアルセーフティ有り。トリガーガードはストレート形状 |
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タクティカル | 公用。USG発売時に米国内向けのIOMを改称。発砲時の命中精度を上げるため、 初期モデルをシングルアクションに変更したもの。マニュアルセーフティ有り。 |
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IOM (Individual Officer's Model) | 公用。USG発売時に廃止。シングルアクション。マニュアルセーフティ、マガジンセーフティ有り。 タクティカルと全く仕様は一緒。初期型はピーナッツ型トリガーガード。 |
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USG (United States Government) | アメリカ市場向け民間モデルの名前。シングルアクション。マニュアルセーフティ、マガジンセーフティ有り。 初期モデルは装弾数が10発であったが、AWB解除(2004年)により装弾数が20発になった。 |
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