H&K G3(HK31) 【自動小銃(突撃銃)】 †
モデル | 全長(伸縮時) | 重量 | 口径 | 装弾数 | 連射速度 | 発射形式 | 製造国 |
G3A3 | 1025mm | 4.34kg | 7.62mm×51 | 20 | 550〜600発/分 | S/F (S/3/F)*1 | 西ドイツ |
---|
G3KA4 | 895(711)mm | 4.09kg |
---|
G3SG/1 | 1025mm | 5.54kg | 7.62mm×51 | 5/20 | 550〜600発/分 | S/F | ドイツ |
---|
HK91 | 1025mm | 4.34kg | 7.62mm×51 | 20 | − | S | 西ドイツ |
---|
西ドイツが長らく配備していたH&K社製自動小銃。
M16についでその名が知られた西側の自動小銃であり、小口径弾普及以前の第一世代突撃銃である。近年はその使用弾薬ゆえバトルライフルにも分類される。
1950年代、敗戦後東西に分割統治されたことで誕生したドイツ連邦共和国、いわゆる西ドイツは、再軍備を急務としていた。戦後、軍と国内の軍需産業が解体され、分割統治によって共産圏と隣接することを余儀なくされた一方、すでにソ連ではAK47を実用化して、装備の近代化を図っていたのである。この矢面に立つ西ドイツ国境警備隊が最初に目を付けたのは、戦後スペインのCETMEに身を寄せていたモーゼルの技術者陣が設計したセトメライフルであった。国境警備隊の要請により、国内のH&Kとの共同開発でセトメライフルはNATO標準の7.62mm×51弾仕様に改められ、制式化に向けて開発が進んでいた。
戦後の西ドイツ国軍として組織されたドイツ連邦軍も参加した制式小銃トライアルの中で、候補は最終的にG1(FAL)、G2(SG510)、G3(セトメ・モデロ2の改良モデル)、G4(AR10)の4つに絞られた。これらいずれかの小銃国産化こそが西ドイツの最終目的であったが、連邦軍よりも再軍備を強く早期に必要としていた国境警備隊は1956年、最も早く調達可能なG1を輸入・採用を先行して決定し、他の候補銃をキャンセルした。連邦軍は国境警備隊の決定に沿い、G1のライセンス生産権を取得しようとしたが、ナチスドイツの侵略を受けたベルギーのFN社は報復的にこの要請を拒否する。G2、G4に関しても交渉は芳しくなく、軍は残るG3のライセンス取得に方向を定めた。CETMEの国外における生産・販売権は当時オランダのNWMに接収されており、軍は交渉の末、NWMに自国空軍の20mm弾薬を独占的に納入させる権利と引き換えにG3の生産・販売権を取得する。
1959年、軍はG3を制式小銃とすることを発表し、G3の生産は西ドイツ国内のラインメタル社とH&K社に委託された。しかしラインメタル社には小銃のノウハウが不足していたため生産は難航し、1969年にMG3の独占生産権を取得する代わりに同社はG3の生産から撤退。その間もH&K社はG3やその派生製品の国外販売実績を伸ばし、1977年には西ドイツ政府からG3及びその派生製品に関する独占的な生産・販売権を得た。
G3はローラーロッキング機構によるディレイドブローバック方式を採用している。どちらかといえば複雑な機構であったが、反動の抑制に優れていたため、セレクティブファイアのG3はセミ/フルいずれの射撃でも比較的扱いやすく、高い命中精度を示した。一方、ボルトを前進させるスプリングが強力なため、初弾の装填・コッキングがしづらいという欠点もあった。
また、最終弾発射後の自動ボルトストップ機能を搭載していないため、リロードの際にコッキングが必要になる。更にボルト閉鎖状態でマガジンを装填するとボルトキャリアローラーに負担が掛かり、最悪の場合破損するため、マガジン交換の前に手動でホールドオープン操作をすることが推奨されている(HKスラップも参照のこと)。
H&K社は軍用小火器の市場に一大シェアを築くことを図って、このG3をベースに様々な口径・種類の小火器を開発した。主なものでは、狙撃銃モデルのSG/1やPSG1・MSG90、短機関銃のMP5、5.56mm口径の突撃銃HK33、軽機関銃のHK11、HK21などが作られ、そこからまた更なる発展型が作られた。はては当時冷戦下の仮想敵であった東側の7.62mm×39弾モデルのHK32までそのラインナップに連ねる予定であった。全軍の歩兵用小火器全般を同一の操作のもので統一すれば(つまりH&KのG3ファミリーで統一してしまえば)訓練期間の短縮とコストの削減が実現できる……という理屈だ。現実には、設計の共通化による小火器開発のコスト抑制というH&K側のメリットは大きかったものの、小火器類のG3系統一という絵図を受け入れた軍組織は現れなかった。
また、戦後のドイツは旧ナチス・ドイツのイメージを払拭する為、武器輸出に関しては非常に厳格な制度を採っている関係上、国外での販路は主にライセンス生産に頼っており、採用国側に専用の生産設備を必要とする場合が多かった。多くの発展途上国で採用され商業的には非常に堅調だったものの、NATO所属の先進国各国では既に制式小銃の国産化の風潮が高まっており、北欧を除けばあまり採用されなかった。
後継となる筈だったG11の開発頓挫などもあって、ドイツ軍では東西統一後も、同社製G36の登場まで主力ライフルとして使い続けられた。現在もH&K社の商品カタログにこそ掲載されていないが、DMRとして一部が現役である。
各国への輸出、あるいはそのライセンス生産モデルも、アフリカ、中東、東南アジアなどの過酷な環境下で高い信頼性を示し、7.62mm口径の高威力もあって、今も各国軍で現役である。ノルウェーでは2007年に同社製HK416を採用するまで、本銃をAG3の名称で主力ライフルとして採用していた。
メディアにおいては、G3自身もさることながら短機関銃モデルのMP5や狙撃銃モデルPSG-1なども多く活躍し、「特殊部隊やスナイパーが用いる高性能な銃」というイメージをより強固なものにしていった。
高精度モデルのイメージからG3自体も非常に精度の高いライフルであるとみなされがちであるが、ベースとなった本モデル自体は他のライフルと比してそこまで飛び抜けた精度を持つ訳ではない。
なお、日本のトイガンメーカー・東京マルイから発売されている電動ガン「G3/SAS」は、G3のコンパクトモデルをイメージした架空の銃である。
(主なバリエーションモデルは、『G3バリエーション』の項参照)
転載に関しては、転載元の転載規約に従って行ってください。
外部リンク †
・H&K G3 ムービー1
・H&K G3 ムービー2