H&K G11 【突撃銃】 †
全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 発射速度 | 発射形式 | 製造国 |
750mm | 3.4kg | 4.7mm×33 | 45/50*2 | F:460発/分 バースト:2000発/分 | S/F/3 | ドイツ |
H&K社が1970年代から開発していたブルパップ式の突撃銃。
ダイナマイト・ノーベル社が開発した「ケースレス弾」を使用する次世代アサルトライフルとして位置づけられていた。
従来の弾薬が「弾丸+発射薬+薬莢」で構成されているのに対し、ケースレス弾は圧縮した固形火薬が薬莢を兼ねており、「弾丸+発射薬」となっている。
当時、戦車砲では発射後に薬莢が残らない、ケースレスもしくは可燃性薬莢の砲弾が実用化されつつあり、このアイデアを小銃弾に持ち込んだともいえる*1。
これにより、同じ重量でも携行できる弾数が大幅に増加する(単純計算で5.56mmNATO弾用30連M16マガジン7本に対し、26本の45連G11用マガジンを携行可能。弾数5倍以上)。更に弾薬の形も自由に設計できることから、円筒状でない四角形の断面をもつ弾薬をも設計でき、弾薬の製造に真鍮を使用する必要も無い為、コストダウンも図れるとされた。
薬莢自体が存在しないので、射撃時に薬莢をばらまく事もなく、排出した薬莢による火傷や転倒を防ぎ、かつブルパップタイプでありながら射手の利き腕を選ばないというメリットも生み出している。さらに、排莢のプロセスと機構をそっくり省略できるため、毎分2千発という高速バースト射撃により、反動で銃身がぶれる前に弾が連射され、高い集弾性を発揮するなどの利点もあった。
しかし、小火器用のケースレス弾には難点も多かった。弾薬外面は特殊な素材でコーティングされていたものの、薬莢式に比べれば保存時には湿気などに弱く、持続射撃時に薬室内の温度が上昇して意図せず撃発するコックオフ現象の可能性が高いなど、解決すべき問題は多かった。
また、G11自体の問題として「弾倉内に縦に並べられた弾薬を給弾時に横向きに回転させる」「フルオート時は毎分460発、バースト射撃時は毎分2000発に射撃サイクルを変化させる」といった極めて特殊な機構を実装するため、時計の内部機構のような非常な複雑な機関部となってしまい、信頼性や生産性には大きな改善が必要であった。
こうした問題もあり開発は20年以上に及び、1990年代にようやくドイツ連邦軍で試験運用が始まった。
しかし当時既に最大の仮想敵国であるソ連が崩壊し、先進的小火器の必要性が薄れたことから、ドイツ軍はNATO標準の5.56mm×45弾の採用を決定したためG11の開発計画も中止された。
1980年代には米陸軍のACR計画にも参加しているが、米陸軍の高過ぎる目標設定のため、他の多くの参加企業と同様に不採用となっている。
バリエーションとして、二連式散弾銃のように本体を中折りして300連の大容量弾倉を格納する軽機関銃モデル「LMG11」や、より小型の4.7mm×33ケースレス弾を用いる拳銃サイズのPDWモデル「G11 PDW」なども開発されていた。
様々な問題により、本銃自体は採用されなかったものの、長期に渡って研究された弾薬のデータはその後も様々な場所で活用されている。
PDWモデルの構想は、弾薬の研究データと共に4.6x30mmの通常薬莢弾を用いる同社のMP7へと受け継がれ、現在では世界各国の特殊部隊で広く使用されている。また、ケースレス弾薬に関する特許は米軍の次世代ケースレス弾薬火器計画「LSAT」に権利が売却されており、現在も研究・開発が進められている。
動画 †
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