H&K PSG1 【自動小銃(狙撃銃)】 †
全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 発射形式 | 製造国 |
1230mm | 7.39kg | 7.62mm×51 | 5/20 | S | ドイツ |
1970年代にドイツのH&K社がG3をベースに開発した、セミオート式狙撃銃。PSG1とはPräzisions Scharfschützen Gewehr-1(Precision Sharpshooter Rifle:精密狙撃銃)の略。
1972年に起きたミュンヘンオリンピック村テロ事件以降、遠距離に存在する複数の標的をすばやく、かつ一撃で倒す強力なセミオート式のスナイパーライフルの必要性から、当時の西ドイツ政府からの依頼により開発された狙撃銃である。
自動小銃という部品が多く複雑な構造でありながら、高精度の部品と肉厚のヘビーバレルを用いる事で、1MOA以下という現代のボルトアクション狙撃銃クラスの高い着弾精度を持つ。
独立したチークパッドやパームレストが装備され、射手の手の大きさや体格に合わせて大きさをある程度まで調節可能になっている。トリガーも、射手が自身に合わせてプルや引き代を調節可能で、ユニットごと取り外してアジャスト作業ができる。銃身はオリジナルよりも厚みを増したフリーフロートのヘビーバレルで、ライフリングはポリゴナル形状とされた。排莢口後部には、M16/AR15のボルトフォワードアシストに似たボルト閉鎖装置が追加され、物音を立てることなく静かな装填が可能となっている。
もともとの開発経緯が、軍用よりも法執行機関向けということもあったためか、PSG-1には通常の狙撃銃のセオリーから外れた3つの特徴がある。
第一に、スコープが固定されたヘンソルト製の6倍スコープ。有効射程は800m程度だが、100mから600mに対応するレティクルのみを備えている。
第二に、バレル・銃口にねじきりが施されておらず、サプレッサーが装着不可能である点。
第三に、標準のバイポッドが用意されておらず、レスト式の小型三脚が付属する点。
これらはいずれも、如何な高精度狙撃銃とはいえ、それ単体で複数の標的を的確に連続して狙撃するのは反動や振動、照準速度の問題から物理的に不可能に近いため、即応性の高い固定倍率のスコープで比較的近距離での使用に限定し、振動を増やす外的要因(サプレッサー)の装着は考慮せず、レストに搭載して銃座のように運用することを想定されたからである。
価格は高性能なだけあって1挺辺り7,000ドルとやや高価であるが、当時としては世界最高峰の着弾精度を持つ半自動狙撃銃であった。
ドイツのGSG9やGEO、GISなどといった対テロ部隊に配備され、日本の海上保安庁特殊警備隊(SST)やSAT(特殊急襲部隊)も試験目的で数挺を導入していたようである。
しかし前述したように非常に特殊な運用を想定したライフルであったため、実際に使われたケースはほとんど無いようである。特にスコープが換装不可能な点は多くのユーザーに不評であった。
H&K社は1987年に、より実際的な運用を想定し技術的にも改善されたMSG90をリリースしている。
2006年には改修モデルの「PSG1A1」が発表されている。コッキングした際にスコープと干渉しがちだったコッキングハンドルの角度を最適化、固定であった標準のヘンゾルト社製PSG1用6倍スコープをシュミット&ベンダー社製3-12倍スコープに変更・換装可能にした、SG 550スナイパー用のフォールディングストックを装着可能となった、等の改良がおこなわれた。
とはいえ設計面での古さもあり、2010年代にはカタログ落ちとなっている。
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外部リンク †
・H&K PSG-1 ムービー