コルト S.A.A / Colt Single Action Army 【回転式拳銃】 †

　1873年に開発されたコルト社製シングルアクション式回転式拳銃。同社のベストセラー拳銃である。「ピースメーカー(Peace Maker)」という愛称で呼ばれることも多いが、この名は当時、コルト製銃器の主要な販売業者の一人だったベンジャミン・キトリッジが、セールスの折に付けたものである。とはいえ犯罪者も愛用していた為、実情はその愛称とは程遠かったらしいが。

　それまでのコルト製リボルバーと違い、シリンダー上部にフレームを通して銃身基部からボディまで一体の、堅牢なソリッドフレームを採用した。これにより、当時としては強力な.45ロングコルト弾やリピーターライフル用の.44-40ウィンチェスター弾が使用できる*1ようになった。
　そのかわりシリンダーは脱着不可となり、当時の中折れ式や脱着が可能なシリンダーを持つリボルバーと比べて、リロードには蓋をあけて一発ずつシリンダーに込めていくという手間が掛かるものとなった。
　装填方法は、まずローディングゲートを開き、ハンマーをハーフコックにする。この時シリンダーは自由回転できるようになる。次に薬室、つまりシリンダー穴をローディングゲートに合わせ、弾を込める。ただし薬室すべてに装填するのではなく、2発目の薬室は空にしておく。シリンダーの装填が終わったら、ローディングゲートを閉じハンマーをフルコックにする。2発目を空にしておくと、この時に空の薬室が来るため、安全にハンマーを下ろすことが出来る。
　排莢は、装填時と同じようにハーフコックしローディングゲートを開く。そして薬室をローディングゲートの位置に合わせ、前方のイジェクターロッドを押すことで弾が一発ずつ排夾される。

　現代に比べ当時の銃器は安全装置に乏しかったが、本銃も例外ではない。ハンマーがレストポジションにあると撃針が雷管に接触しているため、この状態で何かの拍子にハンマーに衝撃が加わると暴発を起こしてしまう*2。撃針と雷管の接触を避けるために、レストから僅かにハンマーをコックしたまま固定する「セーフノッチ(レストとハーフコックの中間であることから「クォーターコック」とも呼ばれる)」が設けられていたが、それでも強い衝撃を受けるとノッチが壊れ暴発する危険があった。このことから確実に暴発を防ぐためにシリンダーから一発だけ抜いて空のチャンバーをハンマー位置に来るようにする方法が取られることも多かった。

　1872年末にブラックパウダーモデルが完成し、陸軍用の7-1/2インチモデルが最初の生産となる。1896年からはフレームを強化し、無煙火薬を使用するスモークレスモデルが登場。
　1892年にダブルアクション式の「ダブルアクションアーミー」に替わるまで、20年もの間アメリカ陸軍の制式拳銃（制式名｢M1873｣）として活躍することになる。ソリッドフレーム+SAの簡素かつ堅牢な設計に加え、.45ロングコルト弾の高い威力を持つ点がアメリカ軍で好まれ、開拓時代のベストセラーウィンチェスターライフルと並び、当時のシューター達に好まれた。
　本銃がアメリカにおける.45口径信奉の始まりともされる。長い歴史の中では多種多様なパフォーマンスも生み出されている(詳しくはガンプレイ（コルト SAA）を参照のこと)。

　現代でも西部劇ファンに親しまれ、生産が続けられている。生産時期によって、1st.、2nd.、3rd.、4th.の年代に区別されている。
　口径は当初こそ.45ロングコルトモデルのみだったが、各口径のモデルが時代を経るにつれ加えられ、.22口径〜.455口径までの36種類に及んでいる。

　更に銃身長や使用弾薬の違いによっても、それぞれに愛称がある。

　バントラインスペシャルには8、8-1/2、9、9-1/2、10、10-1/2、12、14インチの各バレルが存在した。ちなみにアメリカ西部開拓時代の保安官である"ワイアット・アープ"が使っていたバントラインスペシャルは16インチだったらしい。
　モデルによって、フロント/リアサイト、ハンマー、シリンダー、トリガーガード等の形状・位置に差異がある。エジェクターロッドヘッドに関しては、フルムーンタイプとハーフムーンタイプのものがある）。

　また、コピーモデルも多く生産され、スタームルガー社からは「ブラックホーク」、ベレッタ社からは「スタンピード」、タウルス社からは「ガウチョ」がそれぞれ発売されている。