クリップ / Clip †
薬莢のリムのみ、あるいは大部分を覆うようにして数発の弾薬を一つに纏める器具。複数の弾薬をマガジンに一度で装填するためのもので、日本語では「装弾子」、または「挿弾子」とも。
連発式ライフルの登場により、装填や携行に必須の器具として普及し、1950年代ごろまで主流の歩兵銃だった軍用ボルトアクションライフルで使用された。当時の歩兵銃では脱着式マガジンは主流ではなく、兵士たちはこのクリップで予備弾薬をまとめポーチ等に収めて携行した。
脱着式マガジンを用いる銃でもM14やVz 58のように、銃にマガジンを装着したままでもクリップを使って再装填できる物もある(この場合は、ボルトをホールドオープン後、上からクリップで装填する)。マガジンが固定式から脱着式への移行期の銃で見かけられる。
主力歩兵銃が突撃銃ないし脱着式マガジンとなってからは、クリップにまとめた弾薬を携行するのは一般的ではなくなったが、現在でも脱着式マガジンへの弾薬装填補助具としては使われ続けている。この場合は、空のマガジンにアダプターをつけた上で、通常のクリップ同様指で弾薬を押し込んで装填する。
纏める弾数はボルトアクションライフル用では5発のものが多く、突撃銃用では5.56mm x45弾の10発や5.45mm x39弾の15発などがある。またこれら小銃弾薬用のものとは形が大きく異なるがリボルバー用では3発や6発のものが多い。
主なタイプに弾薬装填時にクリップが排出されるストリッパー(剥ぎ取り式)クリップと、弾とクリップが一括でマガジンに込められるアンブロック(一括)クリップが存在する。
ストリッパークリップは最も基本的なクリップの形式で、装填部にクリップをあてがい弾薬だけを指で上から押し込んで用いる。
アンブロッククリップはフェルディナント・マンリッヒャーが発明した、世界で最初のクリップの形式である。マンリッヒャー小銃やM1ガーランドなどに用いられていたクリップごとマガジン内に装填する設計で、全弾を撃ち切ると、排莢するさい同時に排出される。しかし、この構造上クリップ無しではマガジンへ弾薬が装填できないことから、クリップの供給が滞ると連発銃としては使用不能となってしまう欠点があった。この問題を解決したのが、ポール・モーゼルによって作られた、マガジンへの装填だけをサポートするストリッパークリップで、これの登場により、アンブロック式はごく限られた形式となっていった。
リボルバー用のものは弾薬を円弧状に並べるその形状からムーンクリップと呼ばれている。クリップは装填時に外れることなくシリンダーとフレームの隙間に収まる。また装填補助具であるスピードローダーも一種のクリップと言える。
ややこしいことに英語圏では口語的に脱着式マガジンのことを「クリップ」と呼称する場合も多いため、英文(会話)に登場する際には文脈から判断する必要がある。