スミス&ウェッソン M36 “チーフスペシャル” / Smith & Wesson Model 36 "Chiefs Special" 【回転式拳銃】 †

　M36は、アメリカのスミス&ウェッソン社が、1950年に高い携行性を目的に開発した小型回転式拳銃である。
　最小サイズとなるJフレームを使い、シリンダーを従来の6連装から1発減らして5連装にすることでポケットに収まるほど小形になり、非番時の警官などの護身用として愛用された。発表時に愛称を警察官から募った結果『チーフスペシャル』という名が付けられた。1957年には他の同社製リボルバー同様に名称がナンバーへと改められ、『36』とされた。1989年には、女性向けの特製グリップを備えた『36レディスミス』がラインナップされている。
　コルト ディテクティヴスペシャルと共に小型リボルバーの代表格として君臨し、日本の警察庁も採用し、更にこれをベースにニューナンブを開発している。36は1999年に生産を終了したが、その後、同社のクラシックラインで再生産されている。

　1951年にはフレームとシリンダーをアルミ合金製とした「エアーウェイト」モデルの『37』が発売された。このモデルはアルミシリンダーに問題があったことからのちにスチールシリンダーに置き換えられている。日本警察はニューナンブ調達終了直後には、国産拳銃ではなくこの37を調達している。
　37のアメリカ本国での売れ行きは決して良好とは言えず、扱う銃砲店は南部に行くほど少ない。ただ、「日本の警察が制式採用した」ということで客が興味を示すケースもあるらしい。

　1965年には素材をステンレスに変更した『60』が登場。正規の生産モデルとしては世界初のオールステンレス製拳銃として人気を博し、以降同社のステンレスモデルの名称の頭には慣習的に6の数字が付くことになる。1996年に発売された60-9では、強靭なJマグナムフレームと延長シリンダーを採用し.357マグナム弾も発射可能となったが、2005年に発売された60-10では、再び.38スペシャル弾オンリーの仕様へと戻された。

　2002年にはスカンジウム合金フレームと.357マグナム弾の発射に耐えるチタン合金製のシリンダーを備えた『360』が発売された。バレルもアルミ合金製のアウターとステンレススチール製の内筒で構成するほどの軽量化を施した「エアーライトウェイト」モデルである。日本警察でも2006年から『M360J SAKURA』という特別仕様モデルを調達している。

　M360JはS&Wが製造する本体に日本国内でミネベアが指掛け付きグリップとランヤードリングの追加などを施しているもので、使用する弾薬が.38スペシャル弾に限られることから、シリンダーはチタン合金ではなくステンレススチール製に換装されている。納入された前期型にはバレルとフレームに大きく"Minebea"の刻印があったが、後期配備型からは省かれ、フレーム左側面のシリアルナンバー下に施された"SAKURA M360J"および"NMB"の刻印のみとなっている。
　日本警察では、2011年までに約2万5,000丁が配備されていた。しかし、2009年より複数の県警よりひび割れの報告があり、これを受けて警察庁が指示した一斉点検により、約200丁で亀裂が発見されて回収されるとともに、メーカーに対して改善が要請された。その後調達が再開され、現在でも配備数は増加している。また、公式カタログには掲載されない特注モデルであるが、若干数の細身のグリップを備えたモデルがアメリカ合衆国の民間市場で流通している。