タクシードライバー / Taxi Driver
1976年、アメリカ映画
監督：マーティン・スコセッシ
・ストーリー
ニューヨークでタクシー運転手を始めたベトナム帰還兵のトラヴィス・ビックル（ロバート・デ・ニーロ）。彼は他の運転手のように仕事場を決めず、客の命令するまま高級地区だろうと黒人街だろうとどんなところへも行く。
ある日トラヴィスは、大統領候補パランタイン（レオナード・ハリス）の選挙事務所に勤める選挙運動員ベッツィ（シビル・シェパード）に目をつけた。数日後、彼は事務所を訪ね、選挙運動に参加したいとベッツィに申し込み、デートに誘うことに成功。だがデートの日、とんでもない失態をして彼女を怒らせてしまい、トラヴィスは彼女から相手にしてもらえなくなってしまった。
毎日、街をタクシーで流すトラヴィスは、「この世の中は堕落し汚れきっている。自分が掃除してやる」という思いにとりつかれ、それはいつしか確信に近いものになる。
そんなある日、麻薬患者、ポン引き、娼婦たちがたむろするイーストビレッジで、ポン引きのスポーツ（ハーヴェイ・カイテル）に追われた13歳の売春婦アイリス（ジョディ・フォスター）と運命的な出会いを果たすのだった―――。
・作品解説
ベトナム後遺症、社会の腐敗、都会の中の孤独など、『病める大国』の裏側をこれでもかと描き出した70年代ニューシネマの代表作。先立つ1972年、人種差別主義者で知られたアラバマ州知事ジョージ・ウォレスが銃撃される事件が起きたが、本作はその犯人アーサー・H・ブレマーが著した『暗殺者の日記』をヒントに制作された。
大都会の暗部で狂気を暴走させていく主人公トラヴィスは映画史上屈指のアンチヒーローと称され、ラストの『モヒカン狩り』での襲撃は圧巻の一言。これを鬼気迫る迫力で演じきったロバート・デ・ニーロ他、ジョディ・フォスター、マーティン・スコセッシ監督の出世作ともなった。
しかし、あまりにも真に迫った内容からレーガン大統領暗殺未遂事件などの類似犯を生み出した問題作でもある。
徹底したリアリズムで描かれた本作だが、スコセッシ監督は銃器に関しては無頓着だったのか、登場する銃は名前と実物が一致しなかったり、シーンによって銃が違ったりとエラーシーンが多く、この点でも『問題作』。
とはいえ、闇ルートのバイヤーを呼び出して銃の品定めをするシーンや、黙々と射撃訓練に励むシーン、ナイフでマグナム弾の弾頭部に十字傷を入れたり、引き出しのレール等の部品から自作のスリーブガンを組み立てるなど、銃好きには「ニヤリ」とさせる描写が秀逸。
トラヴィスが鏡に映る自分に銃を向ける名シーンを真似するのが、当時マニアの間ではやったとか、はやらなかったとか。
