ミネベア M60 “ニューナンブ” 【回転式拳銃】 †

　1960年代に日本の新中央工業(現ミネベアミツミ)がS&W M36などを参考に開発した小型回転式拳銃。正式名称は「ニューナンブM60 回転式けん銃」。

　1950年代後半、戦後アメリカから供与された拳銃の多くが、耐久力の限界を迎えて故障を頻発させる状況であった当時、国内の治安悪化の懸念もあり、警察庁をはじめ、拳銃を装備する各公的機関で新たな拳銃の需要が高まっていた。銃器の輸出入や製造に関する許認可権をもつ通商産業省(現在の経済産業省)は、国内の経済力向上を任う機関でもあったことから、外国産拳銃の輸入ではなく国産拳銃をもって各機関の需要に応えるべく開発を主導した。こうして生まれたのが、ニューナンブである。愛称の“ニューナンブ”は、開発依頼を受けた「新中央工業」の前身である「中央工業」の創設者であり、日本の銃器開発の第一人者である南部 麒次郎氏から取られている。

　警察庁をはじめ、皇宮警察、厚生省麻薬取締官、入国警備官や税関、海上保安庁などにも採用されており、刑務所の刑務官の非常用装備にも指定されている。なお、詳細なスペックや生産情報は機密とされ、価格すら一切公表されていない*1。特徴は、ミネベアで設計された紛失防止用の索を括るランヤードリングに、独自の形状のシリンダーラッチとグリップパネルである。ハンマースプリングは設計のベースとなったとされるS&W M36同様のコイルスプリング(巻きばね)だが、リーフスプリング(板ばね)に比べトリガープルが重く、ダブルアクションでの命中率は悪いようである。ミネベア設計のグリップもその使用感については賛否両論である。

　開発当初、銃身には一般用の3インチモデルと、幹部用の2インチの2種類が生産されていたが、1994年の装備軽量化で多くが2インチモデルとなった。また、前期型と後期型が存在し、それぞれグリップとシリンダーラッチ、ランヤードリングが異なる他、フレーム上部の肉厚にも違いがある(写真の物は後期型)。

　すでに調達は終了しており、以降の制服警官の装備は国産拳銃ではなく、S&W 37エアーウエイトやS&W 360、オートマチックのP230、S&W 3913などが国外から調達されている。

　余談だが、ミネベア社が名称を登録商標にしているため、エアガンで「ニューナンブ」という名称を使っているメーカーは無い。ちなみに、写真はマルシン製の「8mm ポリスリボルバー」。他にはハートフォード製の「J-Police.38S」などがある。