H&K HK416(HKM4) 【突撃銃】

H&K HK416 D145RS
モデル名銃身長全長(銃床伸長時)重量口径装弾数発射速度発射形式製造国
HK416C9in560mm(690mm)3.09kg5.56mm×4510/20/30850発/分S/Fドイツ
アメリカ
D10RS10in686mm(785mm)3.27kg
D14.5RS14.5in787mm(890mm)3.74kg
D16.5RS16.5in855mm(951mm)3.81kg
D20RS20in941mm(1037mm)4.10kg
MR556A116.5in861mm(957mm)3.90kg5.56mm×4510/20/30S

 2000年、当時イギリスBAe社傘下だったH&K社は、技術力を見込まれイギリス軍の主力火器SA80の改良を請け負った。その実績から当時デルタフォースの研究開発部門に属していたラリー・ヴィッカーズ監修のもと、デルタフォースとの合同研究開発・フィールドテストを行い、M4を含めたM16系の近代改修モデルとも云うべきH&K版M4――コルト製と区別するため「HKM4」と呼ばれる――を2004年に発表する。

 HKM4は、M16系の特徴であったボルト作動方式?を変更し、同社G36XM8ガスピストン作動システムを移植。2万発もの発射に耐える耐久性(公式発表)を実現し、その後の耐久性・信頼性向上を目的としたガスピストン式AR15クローンブームの先鞭となった。
 発表時のデモンストレーションでは泥水に浸したHKM4を引き上げ、そのまま射撃を行うという驚くべきパフォーマンスを披露。HK416へとアップグレートされた後の2006年のデモンストレーション動画では米軍SOCOM基準の耐水射撃テストをM4と共に行い、難なく射撃を行うHK416に対し、M4は同じテストで機関部が破損するというテスト結果となった。しかしこれに関しては、テストはM4側は水を抜く暇を与えず即座に射撃行っている、初期には耐水能力を保証しているモデルは特注モデル(A2)のみであったなど、些か誇張された箇所も多かった。
 他にもハンドガード部の変更による銃身の過熱問題への対応、SA80改修時に開発したジャム頻度が低い新型スチールマガジンの採用など、外観そのものが大きく変わるような変更はほとんどなく、各部の信頼性向上への改修が多い*1。そのため操作方法は従来と全く同じで、既存のM16系ユーザーも違和感なくHKM4に移行できるよう考慮されている。ほぼM4の上位互換とも見える仕様だが、(以後登場した他のガスピストンAR15も同様だが)ガスピストン作動へ変更された事で、重量はやや増加し、またガスによりボルトが直接後退するM4と異なり、バレル上部のピストン運動がボルトを後退させるため反動でマズルが跳ね上がり易くなっている。*2

 2005年には、コルト社からの抗議により名称を「HK416」へと変更。FN社製SCARといった対抗馬もあらわれ、並行して試験されていたXM8も計画自体がキャンセルされるなど逆風もあったが、現在は着々と採用実績を伸ばしつつある。
 現在のところ、アメリカ、インドネシア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、韓国での採用が伝えられている。主に特殊部隊などの限定的なものがほとんどだが、ノルウェーでは、現用のG3に替わる制式主力ライフルという、大口採用である。トルコではライセンス生産による同様の制式化が予定されていたがキャンセルされた。またイタリア、ドイツ*3、フランス*4の特殊部隊、海上自衛隊の特殊部隊「SBU」でも試験的に導入されたとも云われている。
 珍しいところでは、アメリカ軍がHK416D10RSの「上半分」のみをSOPMODキットとして供給しているようで、通常のM4カービンのロアレシーバー(要は下半分)に、HK416のアッパーアセンブリ*5が組み合わされたライフルを携行する特殊部隊員の写真が見られる。
 2011年5月2日にビンラディンを襲撃、殺害した米国海軍DEVGRU(旧SEALチーム6)所属の隊員が本銃を使用していたという情報が海外のミリタリー系サイトで話題となった。

 ちなみに、2004年に登場した「HKM4」と、2005年登場の「HK416」とでは、仕様が若干異なる。HKM4が排莢口の開閉式ダストカバーをオミットされ、ボルトキャリアが剥き出しだったのに対し、HK416では従来のダストカバーが復活している。また、HK416は海兵隊等の要望により、立射姿勢で照準器を使用しやすい高さにアッパーレシーバーのレール位置が若干、底上げされている。

 バリエーションとしては、.308NATO弾モデルの「HK417」を用意し、2008年には、民間型となるセミオートオンリーの「MR223(MR556)」を発表している。外観上では、以前は他社製OEMだったと思しきグリップとストック?が、H&K独自の新規デザインに改められており、2012年からは「MR556A1」の名称で、7.62mm×51弾(.308ウィンチェスター弾)モデルの「MR762A1」と共に、民間市場で販売されている。

 現行のHK416/MR556A1では、様々な純正アクセサリーが用意されており、アイアンサイトやグリップ、バットストックが、いずれの派生モデルでも任意に換装できる。アイアンサイトはG3系ライクな前後のサイトやHK416専用のフリップアップサイトが、グリップは発表時のタンゴダウンタイプ(上掲写真)の他、グリップアングルの異なるH&Kオリジナルの2種が、バットストックはコルトタイプのカービン/固定ストックの他、パッド形状の異なるH&Kオリジナルの2種のカービンストックが、それぞれ用意されている。
 また、D14.5RSのみ、バレルにM4のようなステップカットを備える。本来ステップカットは、M203マスターキーなどのバレル装着型アドオンを固定するためのデザインだが、M4の発展型であることを示すアイコンとなっているだけで、実際にはこれらを装着することは出来ない。これらアドオンは銃身のステップカット部とバレルナット部に固定具を取り付ける設計だが、HK416のバレルナットは、ガスピストンとの干渉を避けるため新設計のものとなっており、従来のアドオンの固定具とは干渉してしまうためだ。この仕様のため、従来のAR15系アッパーレシーバーとの互換性も無い。
 
 2012年には、新型の「HK416A5」が発表された。これは、米陸軍が行ったM4カービンの後継銃の開発を目的とした「インディビジュアル・カービン・コンペティション」参加のため、H&Kが開発したモデルである。外観は同社製G28で取り入れられた設計が新たに盛り込まれ、G28とほぼ同型のバットストックやクアッドレール・システム、トリガーガードに変更され、ボディ色もFDE(フラットダークアース)が追加された。ガスブロックにはガスレギュレーターが新たに備えられ、ロワーレシーバーも新型となり、セレクターレバーに加えて、ボルトリリースとマガジンリリースボタンもアンビとなった。またマガジン挿入孔のカット角度は旧416と異なり、従来のM4と同様の角度に戻されている。これは旧416ではマガジン共用で*6問題があったためと思われる。また、マガジンのラインナップにはG36のような透明なものも新たに加えられた。なお、2013年に米陸軍のインディビジュアル・カービン計画はキャンセルされている。

 口径バリエーションはHK417以外にH&K純正のものは存在しないが、ワルサー社が生産している.22LR仕様モデルや、AAC等が試作している.300BLK用アッパーなど、他社製クローンやサードパーティ製キットとして幾つか存在する。2015年にはオランダのNL-MARSOF(海軍特殊作戦部隊)が.300BLKモデルを調達する意向を発表した。

 公式にはA5以外のバリアントがカタログに上った事は無いが、需要に応じて幾つかのモデルが用意されていた。概要は以下の通り*7

各種バリエーション

モデル解説
HKM4最初期のモデル。排莢口のカバーがなく、余剰ガスのベントや排莢口カバーのラッチが収まる溝の無いツルリとしたボルトキャリアが露出していたのが大きな特徴。
バレルナットには従来のデルタリングが残されており、ガスブロックには上左右3面にピカティニーレールが配されていた。
ハンドガードはXM以来のリブ付きコルトタイプと、のちのHK416のものに似たクアッドレールタイプの2種。
HK416上記を改修した生産モデル。フロント周りが一新された。
HK416A1ファイアリングピンセイフティが導入される。以後全てのモデルで採用。
HK416A2OTB(Over The Beach、上陸作戦)モデル。
バッファチューブとボルトキャリアにそれぞれ一箇所ずつ穴があり、機関部から水を素早く排出する。
またエキストラクターの隙間を埋めるようにバレル基部内側に突起が設けられ、バレルが水に満たされている時に薬室に掛かる圧力を下げる。
ただしこのバレルではジャケットされていない弾頭では動作不良を起こす可能性がある。
このうち2箇所の排水穴は以後全てのモデルで採用。
HK416A3ノルウェー軍採用モデル。
ボルトキャリアのネジを半固定楔に変え、フィールドストリッピング時に紛失しないように変更。
ディスコネクター後部上に突っかえを設け、ハンマー位置に関わらずセレクターがセーフティに入るよう変更された*8
サプレッサー用ガスレギュレーター(2ポジション)と、標準より背の高いフリップアップ式バックアップアイアンサイト*9を備える。
ディスコネクター周辺の仕様は以後全てのモデルで採用。HK416A3の開発後MR556が発表されたためそちらで始まった仕様として主に知られる。
HK416A4トリガーグループがMR556で採用されたトリガープルがより軽く短い2ステージトリガーに置換。以後全てのモデルで採用。
HK416A5HK416A4にコンペティションの要求仕様などを追加したもの。本文参照。

MRシリーズ

モデル解説
MR223(556)HK416A4のセミオート・マッチシューティング用モデル(時系列的には登場はこちらの方が先)。
バレルにクロームラインが施されていない*10。前述の2ステージトリガーを採用。またHK416シリーズと異なり、ロアレシーバーをAR15互換のものと交換できない。
MR223はヨーロッパ・カナダ、MR556はアメリカ市場向けモデル。基本的に名称が異なるだけだが、MR223の方はマズルデバイスを交換出来ない仕様になっている*11
MR223・556間の差異とバレルの仕様は以降のモデルでも同様。
MR223(556)A1MR223をAR15互換のロアーレシーバーを使用可能としたモデル。
レシーバーの互換性に伴いアッパーレシーバーのみのキットも販売を開始。何故かトリガーグループがフルオート化改造可能なもの*12となり物議を醸したが詳細不明。
レシーバーの互換性は以降のモデルでも同様。
MR223(556)A2MR223A1のフラッシュハイダーが無く、スレッドも無いためマズルデバイスの装着が不可能なモデル。ドイツ連邦に製品として登録されているが、公式のアナウンスも実際の販売もされなかった模様。
MR223A3HK416A5のセミオートモデル。ただしガスレギュレーターは無い。今のところヨーロッパ・カナダ市場向けのみでMR556A3はまだ販売されていない。
 
登場作品ジャンル使用者備考
24 -TWENTY FOUR-項目参照
Alliance of Valiant Arms項目参照
Combat Arms項目参照
GAMER項目参照
G.I.ジョー項目参照
OPERATION7項目参照
REDリターンズ項目参照
SOCOM: U.S. Navy SEALs項目参照
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン項目参照
アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス項目参照
ウォッチドッグス項目参照
ガン・ブラッド・デイズ項目参照
キングスマン項目参照
グリーン・ホーネット項目参照
ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり項目参照
ゴーストリコン アドバンスウォーファイター2項目参照
ザ・タウン項目参照
ザ・ユニット 米軍極秘部隊項目参照
ザ・レイド項目参照
ジョン・ウィック項目参照
スプリンターセル項目参照
ゼロ・ダーク・サーティ項目参照
ターミネーター4項目参照
トランスフォーマー:リベンジ項目参照
バイオハザード オペレーション・ラクーンシティ項目参照
バトルシップ映画ミック・キャナルズフリップアップサイト
警察車両から拝借
バトルフィールド 3項目参照
バトルフィールド 4項目参照
バトルフィールド ハードライン項目参照
バトルフィールド バッドカンパニー項目参照
バトルフィールド バッドカンパニー2項目参照
バトルフロント映画ガンケースに携行
未使用
パニッシャー項目参照
ハンコック項目参照
ハンナ映画CIA特殊部隊ダットサイト装着
タクティカルライト装着
フォアグリップ装着もあり
雪山で所持
発砲無し
ヒットマン アブソリューション?項目参照
ブラッドバス小説トニー・ブラッドグッド
ペーパーマン項目参照
マージナル・オペレーション小説ジブリールHK416C
メダル オブ オナー ウォーファイター項目参照
メタルサーガ ニューフロンティア項目参照
ルーザーズ項目参照
ルール 無法都市項目参照
ワイルドスピード SKY MISSION項目参照

このページの画像はHK DEFENCEから転載しています。
転載に関しては、転載元の転載規約に従って行ってください。


※あまりに頻繁に繰り返される上に結論の出しようがない話題なので、コメント欄で「G36」「XM8」「HK416」のいずれが優れているか/今後普及するかといった話題はお控え下さい

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 007 スカイフォールでシルヴァの部下やボンドが使用してました(007 の項目にも書いてありました) -- 2018-06-16 (土) 17:48:59
  • 007 スカイフォールでシルヴァの部下やボンドが使用してました(007の項目にも書いてありました)
    (また、007でこの銃が登場した作品はスカイフォールだけなのでできればこの項目の登場作品のとこは007 スカイフォールという風にしてください) -- 2018-06-30 (土) 20:04:16
  • エクスペンダブルズについては2作目にも登場してたのでこの項目の登場作品のとはエクスペンダブルズという風にしてください -- 2018-07-04 (水) 23:37:57
  • ノルウェー軍でも追加調達が決定だとか。なかなか快調ですなあ... -- 2019-01-21 (月) 20:17:32
  • 本家HKとHK-USAの公式サイトにも416Cが載ってないのに気づいた 生産終了してるのかそれとも元々プロトタイプ的な代物だったのかな? -- 2019-04-04 (木) 18:04:30
  • 長期間の射撃でバレルが破損?みたいな話が近年出てるみたいだけど、実際の所どうなんだろう?フランス、ノルウェーで問題になっていない所からして限定的な不具合だったんだろうか?それとも新規導入のM855A1弾薬との相性なのかな?構造的に負荷がかかり易いという人もいてよく分からない。 -- 2019-05-16 (木) 23:12:35
  • 単に日本の一部の銃雑誌が宣伝のためにインターネットで出した話題で、海外ではそのような話は全く話題になっていませんよ。信頼性をウリにしている製品ですから当たり前ですが。 -- 2019-05-17 (金) 06:20:01
  • 上の欠陥論についての話題で、どうして開発者の一人であるラリー・ヴィッカーズ氏に言及する人はいないのでしょうか?僕は、もしhk416に話題の欠陥があるならヴィッカーズ氏も言及していると思うのですが、どうして彼はこの問題とされていることに一切言及していなのでしょうか。 -- 2019-05-18 (土) 23:20:04
  • 意味が分かりませんが、開発者が製品についてコメントしなければならない義務はありませんし、そもそも上記で述べられているようにそのような話題は海外ではありませんので当然かと。 -- 2019-05-18 (土) 23:46:32
  • ↑x4 M27とM855A1の話があるように弾薬との相性も考えられるかもしれません。しかし、要因の一つとしてならまだしもそれが根本的な原因とは思えません。リュングマンを無理矢理ガスピストンにしたため本来なら存在しなかった負荷が生まれたのがHK416です。構造面での不利は否めません。当然、HK社もそんなこと設計段階で把握しておりレシーバー周りの剛性を確保するため肉厚にしてます。故に416ちゃんはM4と比べてクソデb…むっちりボディなんですわ。弾薬のみの影響としてしまうとこうしたHKの設計が何ら意味を成さないものとなってしまいます。416ちゃんは無意味に肉を着けてるわけじゃありません。ただ、それでも決して少なくないとされる破断の話のように限界があるみたいですが。他方で仏軍や米海兵隊のように当銃を採用する向きもありますから「破断する!欠陥!もう駄目だ!」という短絡的な結論に至らず、長い目で見てはいかがでしょうか? -- 2019-05-28 (火) 17:16:23
お名前:

*1 2007年にはXM8、SCAR-L、HK416、M4カービンの各銃10挺を35時間にわたって汚し、その後6000発(トータル60000発)発射させる通称「ダストテスト」が行われた。動作不良回数の結果は XM8 - 127回 SCAR-L - 226回(16回は深刻な問題)HK416 - 233回 M4 - 882回(19回が深刻な問題)であった。このことから、従来のM4に比べてHK416(とその他の次世代銃)は、その信頼性が高いといえなくもない。が、同年夏に行われた同様のテストでは、M16とM4はトータルで307回を記録し、統計的に見て、重要な差ではないともいえる。
*2 参考:フルオート試射動画 最初がM4、次がHK416 http://www.youtube.com/watch?v=KY0Xtxasyiw
*3 GSG9
*4 GIGN、第1海兵パラシュート連隊
*5 銃身やボルトアセンブリ、フォアエンドが組み付け済の状態のアッパーレシーバー。
*6 主にマグプル製P-MAGとの。
*7 参考資料:http://www.hkpro.com/forum/hk-nfa-talk/202895-notes-hk416-armorer-course.html
*8 従来のAR15はトリガーグループの設計上、ハンマーをコッキングしなければ(トリガーが上がっていなければ)セレクターをセーフティに回せない仕様になっている。
*9 レーザーモジュールを上部レールに取り付ける際に干渉させない目的で作られたもの。
*10 H&Kの公式コメントでは「精度に影響を与えないため」とされている
*11 ヨーロッパ・カナダとアメリカのサプレッサーに関する法律の差異のためと思われる(特にポーランドなどは「サプレッサーを装着可能な銃火器」そのものが規制対象)
*12 というより、単にHK416A4と同等の作動システムのもの

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