H&K XM8 【突撃銃】 †
全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 発射形式 | 発射速度 | 製造国 |
840mm(基本型) | 3.4kg(基本型) | 5.56mm×45 | 30 | S/F | 750rpm | ドイツ |
6.8mm×43 SPC |
2002年から主にH&K社によって開発されていたモジュール式の突撃銃。
XM29(OICW)開発計画の遅延を受け、アメリカ陸軍は開発を主導するH&Kとジェネラル・ダイナミクスに開発工程の分割と高速化を要請。これにより計画は小銃モジュールと擲弾モジュールの二つに分割され、それぞれの完成後にOICWとして統合されることとなった。この小銃モジュールに与えられたコードネームがXM8である。なお、擲弾モジュールはXM25として開発されている。
機関部はH&K社のG36をベースとしている。オリジナル同様ストック、銃身、フレーム等がモジュール化され、数本の固定用ピンだけでユニットを脱着し、用途に応じた組み替えを可能としたモジュラーウェポンである。主な組み換えバリエーションは短銃身を用いるカービン(BASELINE CARBINE)・コンパクトカービン(COMPACT CARBINE)型、ヘビーバレルの長銃身を用いる遠距離(SHARPSHOOTER VARIANT)型である。
新規に開発されたアンダーバレル式擲弾発射器(XM320)に対応し、標準の照準器として米インサイトテクノロジー社製のリフレックスサイト・レーザーサイトを兼ねるISM(Integrated Sighting Module)を備えたキャリングハンドルを有する。このキャリングハンドルとハンドガードにはそれぞれ折り畳み式のバックアップ・アイアンサイトを内蔵する。
ハンドガードに並ぶ特徴的な穴は、PCAP(ピカティニー・コンバット・アタッチメント・ポイント)という新しいマウントシステムで、ピカティニーレールに比べ精度を保ったまま照準機器の着脱が可能であるという。ピカティニーレールに対応したモデルもXM8R(Rail)の名称で開発されていた。
口径も従来の5.56mm NATO弾だけでなく、当時問題視されていた威力不足を解消するためレミントン社で開発されていた6.8mmSPC弾対応モジュールも用意された。
こうした多くの先進的な機構を備えていたものの、XM8に対する陸軍の要求は非常に高度なものであったため、無理に実装された機能も多かった。例えばM16に存在するようなマグリリースボタン機能もXM8には要求されたが、ベースとなったG36にはパドルしか存在しないため、これをグリップ側に延長するような形で実装された。しかしこれは大型化したことによって引っ掛かりや誤動作を招いた。
また、2002年時点で提出されたプロトタイプは軽量さを重視した空虚重量2.8kgのものであったが、2005年には分隊支援火器(AUTOMATIC RIFLE)型への換装を可能とするよう要求されたため、最終的な空虚重量は3.4kgに増加した。しかしこの変更を以ってしても信頼性・耐久性の面で当時分隊支援火器として採用されたM249を上回ることは出来ず、陸軍の成果報告には議会から多くの疑問が向けられていた。
こうして改良が重ねられたものの、2005年の陸軍のXM8開発計画に対する予算要求は保留の後却下され、計画は中止された。
当時の陸軍広報ではこの新型小銃について熱心な報道を繰り返していたが、これは陸軍の独走に近いものであったようで、2005年4月に中東のカンダハールで開かれた、現地の米軍兵士と当時の国防長官ラムズフェルド氏との対話集会にて、「XM8はいつ配備されるのか」という旨の質問が為された際、ラムズフェルド氏はこの件を全く把握していなかったらしく、補佐に控えていた中将が代わりにコメントを行う一幕が見られた。*1
この後、XM8はH&K社単独の製品としてSCAR計画やその他の次期小銃選定のためのテストに出展されたが、いずれも採択されることなくトライアルを終えている。2007〜2008年に掛けて、M4カービンと他のプラットフォームの信頼性を比較するテストが行われた際には、良好な成績が見られたものの、M4のテスト結果があまりにテスト毎に異なるため原因が調査されたところ、ライフル自体ではなくマガジンの問題であると判明。結果M4用マガジンの調達・改修計画が編成されたのみで、やはりXM8が採用されることはなかった。
その後、何故か同社が提供したものと思しき(民間市場に出回っていない筈の)XM8を装備しているPMCオペレーターの写真なども発見された。2007年〜2010年に掛けてはマレーシアの空軍と海軍特殊部隊で試験運用が行われており、使用状況は不明だが現在でも式典でXM8Rモデルが多数登場している。
2011年にはH&Kのカタログ上からは廃盤となり、事実上の開発中止になったと思われる。
なおしばしば制式小銃の代替を恐れたコルト社などによる政治的妨害、または玩具的な外見を嫌った兵士による反発により、優秀な性能を示していたのにも関わらず計画が中止された、という風説があるがいずれも誤りである。実際には上述のように、XM8の性能を以ってしても陸軍の提唱するモジュラーウェポン構想に必要な性能を達成できなかったため、予算が打切られたものである。
頻繁に引き合いに出される信頼性に関するデータも、2005年の計画中止後に行われた試験のものであることに留意すべきであろう。
動画 †
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