H&K P7 【自動拳銃】 †
1970年代後半に、H&K社が、警察用ピストルとして開発した小型自動拳銃。当初、「PSP(Polizei Selbstlade Pistole/警察用セミオートマチックピストル)」の名で完成したが、当時の西ドイツ警察の新型制式ピストルトライアルへの提出時に「P7」*1の仮番号が与えられて、そのまま制式名となった。
本銃の大きな特徴の一つがガスディレードブローバック、又はガスロックという機構である。ガスオペレーションが発射ガスの圧力を利用してチャンバーの「開放」を行うのに対し、ガスディレードブローバックはスライドを「閉鎖(ロック)」して、後退を遅らせる仕組みである。
もう一つは、スクイズコックと云う機能。グリップ前部が稼動し撃針と連動するコッキング・レバー*2となっており、これを押し込む事で撃針がコックされ、緩めるだけで、コック状態の撃針がふたたびデコッキングされる仕組みである。これにより初弾を薬室に装填したままでも安全に携帯でき、銃を取り出し構えるだけでハンマーやセイフティの操作を介することなく射撃が可能となる。元々は警察用を念頭に開発されたため、安全性と即応性を両立させるべく、この様な仕組みが考え出された。しかし、スクイズコックを固定するために他の銃では使わない筋肉を使用する為、銃の保持バランスが崩れてしまい、何かと使いづらいと不評であった。GSG9ではP7を装備していた当時、隊員に対して徹底的な取り扱い訓練を課していたようだ。
マガジンリリースは初期型ではグリップ底部、マガジンハウジングの後方に設けられていた(ボトム・キャッチ式)が、マイナーチェンジ型のP7M8、M13では、コッキング・レバー直上(上掲画像)に移設され、アンビとなり、グリップハンドでの操作も可能になった。トリガー後部の左側面には、スクイズコックと連動するスライドキャッチ・レバーが配されており、コッキング・レバーを握れば、後退位置でホールドされたスライドがリリースされて、即発射可能となる。また、スライドキャッチ・レバーのみを操作することも可能だ。
機構上、マニュアルセイフティはなく*3、グリップ後部のフレーム左サイドに配された丸いボタンはスライドリテイナーという部品で、通常分解のさいに使用するボタンである。スライドを僅かに引いた状態でこれを押すことで、スライドを取り外すことが出来る。
P7はガスディレードブローバック用のシリンダーをスライド下に持っているが、初期型ではここが過熱して射手の指を焼いてしまう欠点があったため、これを耐熱樹脂でカバーし、同時にトリガーガードを大型化したP7M8が作られた。
また、P7M8をベースに弾倉をダブルカラム化したP7M13、.40S&W仕様のP7M10などが開発された。P7M10は1991年からアメリカ市場向けに生産・販売されたもので、アメリカのシューター達の間では『ジャム無し、リコイル軽い、よく当たる』と隠れ(?)ファンが居ると言われる。
ドイツ国内を始め、19か国で警察・軍用として採用され、ギリシャやメキシコではライセンス生産も行われた。2008年の販売終了まで、生産はおよそ四半世紀に渡り、2007年には25周年記念の特別仕様モデルが500挺限定で販売された。P7M8の木製グリップパネルモデルをベースに設計者の名前とシリアルナンバーの刻印が施されており、表面に「P7」のロゴと精緻なP7のモチーフが裏面に彫刻された記念コインが付属した*4。
各種バリエーション †
モデル | 解説 |
P7M13S | P7M13にフレーム右側面にマニュアル・セイフティが追加されたモデル。メキシコでライセンス生産され、同国軍で配備された |
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P7M8SD P7M13SD | 銃口部にサプレッサーが取り付け可能なモデル |
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P7K3 | バレルとマガジンを交換することで.22LR弾、.32ACP弾、.380ACP弾の3つの口径が使用できる。 また、.22LR弾用バレルには低い腔圧でスライドが作動するためにフローティング・チャンバーが装備されている |
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P7M7 | .45ACP弾を使用するモデル。6挺製造された後、開発が中止された |
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