全長 | 重量 | 口径 | 装弾数 | 連射速度 | 発射形式 | 製造国 |
785mm | 3.82kg | 5.56mm×45 | 30 | 610〜775発/分 | S/F | イギリス |
イギリス軍が1985年に制式採用したブルパップ式の突撃銃。イギリスのRSAFによって設計・製造された。製造元は業態変更や合併によって名称が数度変更されており、1988年にはRSAFの民営化によってロイヤルオーディナンス社となり、1997年にはブリティッシュ・エアロスペース(BAe)の小火器部門として合併(この時期、H&K社も同部門に合併していた)。こちらも2005年には他数社の軍需企業と合併しBAEシステムズ・ランド&アーマメンツとなっているが、本銃の生産自体は1993年に一度終了している。
第二次世界大戦末期からイギリスで開発されていたブルパップ突撃銃をベースに、プロトタイプであるXL64を経て完成した(開発経緯についてはそちらを参照のこと)。
レシーバーはプレススチール製。操作系の配置はあまり洗練されておらず、排莢は右方向のみ、セレクター・マグリリースは左のみである。ボルトリリースは左側面にボタン、右側面にレバータイプと位置も操作も左右で異なっている。またセレクターとは別に、クロスボルト式のセイフティをトリガー付近に備える。
アイアンサイトを備えたキャリングハンドルとフロントサイトが着脱可能で、他の同時期のブルパップ同様、照準線の短さへの不安から固定4倍の国産SUSATスコープとの併用を前提に設計された。
SA80は1985年からイギリスの陸・海・空軍全てで導入が始まったが、初期モデル(A1)はジャム頻度や故障率の高さから問題が続出した。ベースとなったXL64が十分な性能を持っていたにもかかわらず、こうした問題が起きた背景には、英国が自国の4.85×49mm弾をNATOの次期小銃弾とするよう研究を最後まで続けたため、実際に選定されたアメリカ製の5.56×45mm弾への対応が遅れたこと、また当時のイギリス国防省が強く大幅な予算削減を要求したため、一挺あたり500英ポンド程度と見込まれていた予算が一挺あたり250英ポンドまで削減されていたことが関係しているとされる。
この配備当初の不具合についてはメディア上でも有名なものとなっており、1993年に出版された元SAS隊員アンディ・マクナブの著書「ブラヴォー・ツー・ゼロ」でも酷評されている*1。
1990年の湾岸戦争を経た後は、様々なトラブルや50以上の欠陥を指摘する公式なレポートが発表されている。この「LANDSETレポート」とよばれる英国防省公認の文書では概ね「L85A1及びL86A1LSWは、砂塵に塗れ易い環境下では、頻繁な作動不良を起こすほど機械的な信頼性に乏しく、潤滑性に非常に欠ける」としており、欠陥については特に「マガジンキャッチは衣服に容易く引っかかってマガジンを脱落させてしまい、ファイアリングピンはフルオート射撃時には折損しやすく、連続使用に適さない」などとしている。
こうした問題は個々のパーツの変更によって徐々に解消されたものの、モジュラー化が進む米軍の装備などの影響を受け、より抜本的な改修が計画され始めた。
その結果、2000年には製造元と合併していたH&K社により大幅な改修が行われ、L85A2へと更新された*2。多くの改良により、作動不良の回数は平均25,200発に1回と劇的に低下した。またアドオン式グレネードランチャーとしてH&K製のAG36が使用可能となった。
更に2007年にはアメリカのダニエルディフェンス社製のRASや米軍でも使用されるグリップポッド、ACOGとそれに付属するバックアップ用レッドドットサイトなど、最新のアクセサリーを追加。2011年には軽量かつ信頼性の高さで評価されているマグプル社製のAR15互換マガジンであるE-MAGが100万個調達され、従来のマガジンを全て置換する方針で随時更新しつつある。また正式な導入時期は不明だが、グレネードランチャー用の照準器としてEOTech社のホログラフィックサイトも一部導入されている。
2016年9月には、「SA80A3」のプロトタイプが公開された。現在保有しているL85A2のうち5000丁が2017年5月までにA3へと改修される予定。
こうした改良もあり、SA80シリーズは2020年頃まで主力火器として使用される事が決定している。
バリエーションとしては分隊支援火器モデルのL86 LSW(Light Support Weapon)、カービンモデルのL22などがある。他にも訓練用の.22LR弾仕様のボルトアクションモデル、L22登場以前に存在したプロトタイプカービンなどが存在する。
採用は大半がイギリス軍であるが、国内の警察や衛兵にも用いられている他、英連邦所属のジャマイカ・パプアニューギニアの特殊部隊に一部供与されており、経緯は不明だがボリビアの特殊部隊でも使用されている。
モデル | 解説 |
L85A1 | 1985年制式採用。配備初期から非常に多くのトラブルを抱えていた。 |
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L85A2 | H&K社による改修型。2000年より更新開始。 主な改修点はロッキングシステムのヘッドへのエキストラクターネイル追加、ファイアリングピンの形状変更、 ガスシステム周りのクリアランス調整、コッキングハンドル形状の変更(カートディフレクター兼用とした)など。 その他、信頼性の高いスチール製マガジンや、L123A2アドオンランチャーの採用が行われた。 2007年以降は専用のRASや、SUSATスコープのトリジコン社製ACOGスコープへの更新が進んでいる。 |
L85A3 | H&K社による改修型。2016年9月にプロトタイプが公開された。 主な改修点はアッパーレシーバーの再設計による信頼性の向上、レシーバー上部のウィーバーレールをピカティニーレールに換装、 ハンドガード側面にHKeyスロット*3を採用、TANカラーの追加など。 |
L86 LSW (L86A1/A2) | 分隊支援火器型。LSWはLight Support Weaponの略。 専用のバイポッドと機関部下にバーティカルグリップが追加されている。 ブレンの改良型「L4」の後継として開発されたが、その後諸問題によりFN ミニミに更新。 現在は、遠射性能と精度の高さからマークスマン・ライフルとして運用。 |
L22A1/A2 | SA80のカービンモデル。 ハンドガードが無く、フォアグリップが取り付けられた。 L22A2はピカティニーレールを追加し、イギリス陸軍の戦車兵用装備として配備されている。 |
L98 CGP (L98A1/A2) | 訓練用のもの。セレクターレバーは無く、ガスシステムも排除されている。 弾薬を発射するには、専用に引き伸ばされたコッキングハンドルを引く。 ボルトは後ろに引かれた後にスプリングで閉じられるので、厳密にいえばボルトアクションとは異なる。 |
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