ボディアーマー / Body armor

 防弾ベスト(Bullet-pnoof vest)あるいは防弾チョッキとも呼ばれる、主に胴体を銃弾から防護することを目的とした鎧の一種。俗にいうボディアーマーという語は、本来は古くからの鎧全般を差す。
 現代的な防弾性能に特化したものはバリスティックベスト(Ballistic vest)とも呼ばれる。
 後述するような防弾用素材が開発されるまで長らく軽量素材でまともに銃弾を止めることは非常に困難であり、それまでは長距離飛行した砲弾・榴弾の破片や拳銃弾といった、比較的貫通力・エネルギー共に低い投射物による損傷を防ぐためのフラック(砲弾)ジャケットと呼ばれる製品が主流であった。

 19世紀末に発明され、第一次世界大戦から軍に採用され始める。その後の第二次世界大戦中の1943年にナイロンと鋼板を使った現在の物が作られたが重量の関係から主に飛行機のパイロットが着用した。その後朝鮮戦争後に改良されアメリカを主とした各先進国のあいだで普及し始める。その材質も鋼板から、より軽量かつ高性能を求めてベトナム戦争後の1980年代に登場したケプラー繊維*1や、アライド・シグナル社が開発したポリエチレン繊維のスペクトラ、最近ではザイロンといった繊維を束ねたもの(俗に云うソフトアーマー)やケブラーの二倍の強度を持つPBO繊維、ファイン・セラミックなどを用いた防弾板との組み合わせへと進化している。

 国際規格(NIJ規格0101.03)で決まっているボディアーマーの防弾性能は下表参照。

防御クラスストップ可能な銃弾レベル
I.22LR
II-A9mm、.40S&W、.45ACP
II9mm、.357Magnum
III-A.357SIG、.44Magnum
III7.62mmx51
IV.30-06徹甲弾

 繊維素材を用いたソフトアーマーは多くはベスト状に形成されており、比較的軽装で上衣の下に重ね着可能な単体のものと、防弾板や各種ポーチ類を組み合わせられるプレートポケット等を備えた、衣服の上に着るものの2種類がある。フィクションでは、上衣なしでシャツの下に着込んでいても外見から全く分からないものも登場するが、実際にはソフトアーマーだけでも相応の厚みと重量があり、はっきりとした着膨れが見て取れる。
 ソフトアーマー単体であれば比較的軽量で身動きを取りやすいが、それだけでは弾が貫通しないだけで、強力な衝撃があれば重篤な打撲や骨折に繋がる可能性が高い。そのため、必要であればソフトアーマー単体では防ぎ切れない着弾の衝撃を緩和吸収するとともに、強力な弾丸の貫通を防ぐ防弾板が併用される。これはトラウマ(外傷)プレートやトラウマパッドと呼ばれ、セラミックや金属、あるいは耐衝撃に特化したプラスチックなどの高分子材料で形成される。アメリカ軍で使用されているSAPIプレート等がセラミック製プレートとして代表的である。
 また、防弾板は表面に当たった弾が滑って腕などを傷付けたり、逆に裏面が砕けて内部を傷付けたりする可能性があるため、ケプラーなどの防弾繊維で軽く覆って、滑りや破片を防ぐようにしたものが現代では一般的である。
 
 最新の防弾板を用いたボディアーマーは、ライフル弾のゼロ距離射撃の貫通を防ぐほどの性能に達しているが、その分重く重量は最大で十数kgにも達するため、重くかさばる点は依然として変わらない。
 防弾性能と機動力のどちらを重視したボディアーマーを用いるかは組織の方針や部隊・作戦の特性によって異なる。このためソフトアーマーと、防弾板を仕込んだプレートキャリアをそれぞれ用意し、状況に応じて重ね着するかいずれかを単体で着用するかを使い分けているケースも多く見られる。
 またボディアーマーはその性格上、通気性は皆無に等しく、長時間の着用は訓練された者でも大きな負担となる。このため、イラク戦争のころからボディアーマー下の着用を前提としたコンバットシャツと呼ばれる衣服が登場している。これはBDUのボディアーマー下部位のみを薄手のTシャツのような生地に置き換えたもので、通気性をある程度向上させ負担を軽減することから、アメリカ軍をはじめ各国の軍で導入が行われている。

 かつて日本を含め犯罪組織でよく使用されたトカレフ等に使われる7.62mmトカレフ弾(特にロシア製)には、鉛でなく安価な軟鉄を弾頭にした貫通力の高いものが多く、各国警察機関でソフトアーマーを無効化する弾丸として恐れられた。
 アメリカでは拳銃弾の新製品が「コップ・キラー(警官殺し)」と呼ばれる、ボディアーマーを無効化する弾薬だとする都市伝説が頻繁に発生しており、中にはメディアによるバッシングや銃規制運動などの社会現象にまで発展した事例もある。
 例えば「銃身の磨耗を減らす」目的で施された弾頭のテフロン樹脂コーティングが高い貫通力を持つとされたKTW社の拳銃弾は、後の検証で実際は貫通力はむしろ低下すると示されたにもかかわらず、メディアバッシング時に適用された法令により現在でも幾つかの州で規制対象となっている。

 現在主流のボディアーマーは、上述したベストと防弾板によるシンプルなものであるが、柔軟性や軽量性と高い防弾性能を両立させる為の研究も進められている。
 例えば「ドラゴンスキン」と呼ばれる物は、ベスト全体に無数の円形の小型鱗状プレートを配置した中世のスケイル・メイルのような構造をしており、着弾したプレートの下にあるプレートに衝撃を次々伝播させる事で、薄く軽量な金属板に衝撃緩和能力を持たせている。また、衝撃によって硬化するダイラタンシー流体などを用いた液状防弾素材のボディアーマーも登場している。
 いずれも従来のプレートタイプと異なり防弾部が柔軟なので身動きが取りやすいだけでなく、プレートの隙間や関節部などの今まで守るのが困難だった位置もカバー可能という点で優れている。
  
 余談になるが、戦国時代の武将の鎧は南蛮胴と呼ばれる西洋のプレートアーマーを参考に火縄銃の弾を受けても貫通しないように鉄板を使って作られたものも多く、またヨーロッパの胸甲騎兵の鎧も銃弾を防ぐためのテストが行われており、これらも一種の防弾ベストともいえよう。
 因みにソフトアーマーに用いられる繊維は、着用者の発汗などで多量に水分を吸収してしまうと防弾性能が低下する。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 日本じゃ無理 -- 2016-03-28 (月) 14:59:56
  • III-Aの防弾板を購入したのですがホームセンターで売っている鋼板とそんなに厚さも見た目も変わらないんですね -- 2016-08-14 (日) 20:50:04
  • 2004年版のパニッシャーのラストで、主人公が至近距離でショットガン数発撃たれてなお無傷(アーマーはボロボロ)でしたが、アレはさすがにメディアの誇張ですよね? -- 2017-02-22 (水) 23:37:21
  • 散弾銃自体の項目でも述べていますが、散弾のペレットはかなり貫通力が低くレベルの高いボディアーマー相手ではほとんど効きません。まぁ2004年版の装備は、そのレベルのものにしては大分軽装に見えますが・・・(実際に止められるレベルのものはその後のパニッシャー:ウォー・ゾーンの方ぐらいにはなるでしょう) -- 2017-02-23 (木) 01:15:49
  • なるほど、一応ああなるにはなるんですね。ありがとうございます。 -- 2017-02-23 (木) 08:38:19
  • プレートキャリアはやはりソフトアーマーに比べると
    そこまで経年劣化を心配しなくて大丈夫なのでしょうか? -- 2017-11-09 (木) 06:04:55
  • 少々ズレた質問ですみません。武士や侍などが使用していた鎖帷子は防弾効果はあったのでしょうか? 本文中の南蛮胴にあったのなら、それと前後して登場した鎖帷子にもありそうな気がしますがどうでしょう? -- 2019-01-04 (金) 15:33:24
  • 参考になるかどうかは分かりませんが、南蛮胴は火縄銃対策として新たに作られた物なので鎖帷子などの従来の鎧はそれほど防弾効果はなかったものと思われます。 -- 2019-01-09 (水) 12:56:08
  • 中世西洋の鎧よりケブラー繊維のほうが防弾性高いのは直感的には違和感あるんですが「繊維でからめとる」イメージでいいですか? -- 2019-03-06 (水) 00:09:21
  • 単に「直感」の比較対象が普通の金属と衣服用の化学繊維だからだと思いますが。ケブラーは同じ細さの鋼より強靭なため単純に破断が鋼板より困難です。ポリマーもそうですが、実際には特殊材料なので我々の普段触れる一般的な材料とはかなり性質が異なりますから、実際に触れないと「直感的に」理解するのは無理かと思います。 -- 2019-03-06 (水) 05:16:22
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*1 アラミド繊維とも呼ばれる。元々は宇宙開発用に作られた。

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Last-modified: 2019-06-20 (木) 11:31:10 (28d)