イジェマッシ AN94 “アバカン” / Ижмаш АН-94 "Абакан(Abakan)" 【突撃銃】 †
全長(伸長時) | 重量 | 口径 | 装弾数 | 連射速度 | 発射方式 | 製造国 |
728(943)mm | 3850g | 5.45mmx39 | 30 | 1800発/分(2点バースト) 600発/分(フルオート) | S/2/F | ロシア |
ミハイル・カラシニコフの弟子、ゲナディー・N・ニコノフが開発した突撃銃。AN94は「Avtomat Nikonova 94(ニコノフ式突撃銃 94年型)」の略。
アメリカのACR計画に対抗するため行われた、高速バースト射撃を行う次世代小口径小銃トライアル「プロジェクト・アバカン*1」でAEK-971などの他の候補を下し、採用された。
ソ連崩壊後に民営化されたイジェマッシ社が生産を行っている。
AN94は、歩兵用主力ライフルとしてはかなり特異な機構や特徴をもつ。
ボルトの作動はAK同様ロングピストンによるガスオペレーションだが、通常の自動小銃がレシーバー内でボルトが駆動するのに対し、AN94はレシーバー内でボルトとバレルの双方が独立して駆動可能となっている。また、通常の小銃ではボルト閉鎖位置はマガジンの真上であるが、AN94では弾薬一つ分ほど前方で閉鎖が行われるようになっている。
そして最後にボルトが細い鋼線とプーリー(滑車)に接続されており、後退することで巻き上げが行われ、バレルの後退よりも早く機関部を往復する。
これにより、最初の1発が発射されるとボルトがまず先に後退してプーリーを巻き上げ、バレルが後退しながら(プーリーによって)ボルトが前進することで初弾よりも早い位置(タイミング)で次弾が装填・再閉鎖され、1800発/分という超高速の2点バースト射撃で2発目が発射されるのである。
フルオートへ切り替えを行うとバレルとボルトの動きが固定され、同時にしか後退しなくなるため、1度の後退で1発ずつのみ射撃される機構へと変化する仕組みである。
ACR計画同様、この高速2点射によって遠距離の集弾率を高めることが本銃の目的であった。バレルの後退機構は2発目の発射タイミングを早くするだけでなく、反動エネルギーを分散することで射手に伝わる反動を減らし、バースト射撃の集弾性を更に向上させる働きを持っている。
また、後退する銃身を支えるガイドが下方に伸びているため、銃剣は一般的な銃口の下側ではなく銃口の右側に刃を水平にして装着する設計となった。これにより、アドオンランチャーとの同時装着も可能となっている。
セレクターは従来のダストカバーを兼ねたものではなく、グリップ根元の左側に配置され、構えたまま操作しやすいものに変更された。
マガジン挿入口は左に傾いたデザインになっており、マガジンを左斜めに差し込む構造となっている。これにより、従来のレイアウトよりもマガジンを再装填しやすくなっているという。
リアサイトは回転式のドラムによって設定距離を容易に調節可能となっており、グリップ部には撃発装置を内蔵、保管時は別にすることで保管時の事故・盗難を防ぐなど、様々なアイデアや仕掛けが採り入れられている。
しかし従来のAK-74に比べ機構は大幅に複雑化されたため、メンテナンスの難易度は相当なものであるという。
単価もAK74シリーズと比べて数倍と高価になったため生産性も低く、連射時の熱に弱いため長時間の射撃で動作不良を起こしてしまう。高速2点バーストというコンセプトは実現されたものの、実用面で多くの問題がある点は否めないだろう。
1994年にロシア軍に制式採用されたが、配備は進まず、結局2014年には次期制式小銃としてAK-12とAEK-971が挙げられているところからすると、実質的に採用中止になったと思われる。
なおトライアルに提出される以前にいくつかプロトタイプが制作されているが、当初はマガジンを含む機関部全体が後退していたため、手を挟むことがないようハンドガード下後方にハンドストップとなる突起が追加されていた。
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