T/C コンテンダー
Thompson/Center "Contender" †
1967年にアメリカのトンプソン/センター・アームズ(Thompson/Center Arms)が開発した、狩猟用のシングルショット・ピストル。小口径弾でのプリンキングから、大口径弾によるビッグ・ゲーム・ハンティング(鹿や猪などの大型獣を撃つハンティング)までをフォローするという変わり種である。
トンプソン/センター・アームズは、当時起業されて間もなかったK.W.トンプソン・ツールズ社が、機械工ウォーレン・センター(Warren Center)によって持ち込まれた、このコンテンダー・ピストルのアイデアを実現するために設立した、銃器製造部門である。同名のトンプソン短機関銃とは一切関係ない。
コンテンダー(競技者、競争者)・ピストルは、拳銃と言うよりは小型のライフルのようなスタイルをしているが、構造は極めてシンプルである。中折れ式のバレルとトリガー、その他発射に必要な最低限のメカニズム以外、一切ない。マガジンもなければボルトもなく、弾の装填・排莢も、一発ずつ手で行うという潔さである。そのぶん強度も高く、ライフル弾の発射にも十分耐えられるため、バレル・アッセンブリーの交換だけで、ほとんど調整も必要とせず、.22LRからライフルカートリッジまで使用可能となっている。
どちらかと言えば「色物」に近い銃で、実際、当初は売り上げがなかなか伸びなかったらしいが、アメリカで盛んなメタルシルエットハンティング競技で、思わぬ脚光を浴びることになる。動物の形(シルエット)に切り抜いた重い金属板を『弾く』この競技では、威力のある弾丸を使う方が有利となる。コンテンダーはライフル弾を発射できる上に精度も高く、シューター達の間で評判となり、一転『売れっ子』に大化けした。
1996年には、一回り大きな強化モデル「アンコール(Encore)」が発売された。これはコンテンダーでは.45-70弾や.223Remが限界だったことから、より強力な、.30-06や.308Winなどのフルサイズ・ライフルカートリッジを使用可能としたモデルである。アンコールはコンテンダーに輪をかけて多様性に富んだモデルで、ストックとロングバレルを有したライフルバージョンやショットガンバージョンといったバリエーションをも有している。2000年代に入ってからは、オリジナルのコンテンダーもアップデートが図られ、グリップフレームが見直された「G2(Generation 2)コンテンダー」が登場した。
現在のトンプソン/センターは、2007年にS&Wホールディングに買収され、製品に「S&W」のロゴこそ無いものの、S&Wハンティングの一部門となっている。
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